2024年に生まれ変わるNISA プロが語る!資産形成のすゝめ

『NISAで日本株投資。狙いは“高”配当よりも“好”配当!?』

提供元:SBI証券

TAGS.

来年から始まる新NISA(少額投資非課税制度)は、従来のものから枠組みを変えながら恒久的な制度となります。投資を考える上では、より長期的な投資に向いた制度になると言えるでしょう。

本稿ではNISAによる株式投資として配当金に着目した投資について考えてみます。

東証上場銘柄で過去10年以上、増配または安定配当を維持している銘柄を対象にした株価指数であるS&P/JPX配当貴族指数と、東証株価指数(TOPIX)のトータルリターン(株価の上昇・下落だけではなく配当金も加味したパフォーマンスを示した指標)を比較すると、中長期投資においてS&P/JPX配当貴族指数が東証株価指数を大きくアウトパフォームしています。

長期投資の観点から見て、配当金に着目した投資はNISAと相性が良いと言えるでしょう。また、NISA口座では株式の値上がり益と配当金の両方が非課税になる点でも優位にあると考えられます(※)。

※NISAで株式配当金を非課税にするためには、NISA口座において配当金の受け取り方式を「株式数比例配分方式」にすることが必要となります。

<図表1 TOPIXとS&P/JPX配当貴族指数(トータルリターン)>

(出所)BloombergよりSBI証券作成

今年4月に来日した著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、自身がかつて投資を行った商社株を中心に日本株の買い増しを検討していると報じられたことは記憶に新しいところでしょう。

実は、同氏に限らず、近年、日本株投資に前向きな姿勢を示す海外投資家が増えてきているのですが、その大きな動機となっているのは日本株が割安なことだと言われています。もっとも、割安と言えば聞こえが良いのですが、裏を返せば、企業が投資家から集めた資本(純資産)を有効に活用できていないということになります。

実際、東証上場企業のうち、PBR(株価純資産倍率=株価÷1株当たり純資産)が1倍を下回る企業は、未だに全体の半数超を占めています(図表2)。

東京証券取引所は今年3月、PBRが1倍を下回る企業に対し、資本効率の改善につながる政策に取り組むように求めています。企業側としたら収益の大幅改善等で株価を上昇させ、PBRを高められればベストでしょうが、短期的にそれが難しいとなると、増配や自社株買いなどの株主還元策を強化することで純資産のスリム化、あるいは増加を防ぐことが、PBRの改善に向けた有効な手段となります。

<図表2 東証上場企業のPBR(株価純資産倍率)分布>

(出所)Quick Workstation Astra ManagerよりSBI証券作成

図表3は上場企業の配当金総額とDOE(純資産配当率=配当総額÷純資産)の推移を見たグラフです。配当総額については、2010年度以降、コロナ・ショックの影響を大きく受けた20年度以外が前期比で増加し、DOEについても同様の傾向が見られるなど、企業全体として株主還元を強化する姿勢が見て取れます。とは言え、株主還元強化の動きは道半ばであり、前述した東証の要請などを考慮すると、中長期で株主還元が強化されていくと予想されます。

<図表3 東証上場企業の配当金の純資産配当率(DOE)>

(出所)日本取引所グループ(JPX)よりSBI証券作成

こうした背景のもと、中長期の株式投資として配当金に着目した投資は有効と考えられるのですが、単に配当利回りが高い“高”配当銘柄に投資すれば良いのかと言えば、必ずしもそうとは限りません。ここでは配当に注目した投資を進める上で、いくつかの注意点をご紹介いたします。

まず、配当利回りは、今期に支払われると予想される配当金(予想1株当たり配当金)を(株価)で割ることで算出されます。ここで確認すべきは、予想される配当金がどういった名目のものかということです。

配当には一般的な「普通配当」とは別に、「特別配当」や「記念配当」があります。特別配当は企業活動において一過性の利益が発生した際などにおいて、投資家に配当として還元する際に行われます。記念配当は、例えば「上場〇周年記念」などに支払われる配当であり、どちらも一時的なものとなります。

つまり、特別配当や記念配当で一時的に配当利回りが上昇しても、それが支払われてしまうと、配当利回りが急落するかもしれません。もちろん、こうした配当を狙って投資してもよいのですが、中長期での投資を考える上では、普通配当を基準にした配当利回りを見る必要があります。

また、配当投資を行う上では配当だけではなく、業績面を考慮して銘柄を選定する必要があるでしょう。企業などが公表している予想配当金は、あくまでその時点での予想であり、実際は期中に不測の事態が発生して、業績が企業の計画に対して上振れたり下振れたりします。業績が好調で増配されるのは良いですが、業績不振による減配は避けたいところです。会社側から発表される業績予想だけではなく、アナリストの業績予想を参考にし、堅調な業績が期待される銘柄から選択していくことが重要となります。

更に言えば、業績面で業績が企業の計画を少しばかり下回ったからといって、簡単に減配に踏み切るような企業への投資も行い難いでしょう。過去の配当実績をよく確認し、業績が好調な時にしっかりと増配し、逆に業績が少々落ち込んでも、減配せずに配当を維持しているような企業は、株主還元に前向きな企業として評価できると考えられます。このように、配当に着目した投資では、配当以外の要素を考慮することが“高”配当ではなく“好”配当銘柄を見つけるコツと言えるでしょう。

(提供元:SBI証券)

著者/ライター
淺井 一郎
投資情報部  シニア・ストラテジスト

北海道大学工学部卒。大和証券に約20年間在籍した後、2022年にSBI証券に入社。大和証券では主に個人投資家や機関投資家向けに投資情報を提供。日本株や米国株、欧州株など国内外の株式市場や為替市場などの分析を歴任し、幅広いマーケットに精通していることが強み。
用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード