「お金を増やすもの」というよりも「着実に教育資金を貯めるもの」
「学資保険」って入っておいたほうがいい? FPが活用法を解説!
子どもの教育費を貯めるという目的のために保険料を積み立て、満期を迎えた際に保険金を一括で受け取ることができる「学資保険」。万が一、親(保険の契約者)が亡くなった場合、保険料の支払いが免除されるが、保険金は受け取れるといった保障があるところが、預貯金とは異なる点だ。
ただ、近年は学資保険の予定利率や返戻率が下がっていることもあり、「別の方法で貯めたほうがいいのでは?」と感じている人は多いだろう。そこで、ファイナンシャルプランナー・氏家祥美さんに、学資保険のメリットと活用法を教えてもらった。
意外と知られていない学資保険のメリット
「学資保険のメリットは、万が一のときの保険料払込免除の保障だけではありません。子ども名義のお金として、ほかの資産と区別して確保しやすいというメリットがあります」(氏家さん・以下同)
学資保険の契約者は親だが、名義は子どもとなり、親の預貯金とは別に置いておくことができる。学資保険は保険料の支払い途中で解約すると戻ってくるお金が元本割れとなることが多いため、満期まで払い込みを継続することが前提となる。
「預貯金のなかから子どもの教育費をやりくりしようとしても、ついマイホーム購入の頭金や家族旅行の費用などで使ってしまい、思うように貯まらないケースはよくあります。学資保険という教育費専用の箱で貯めていけば、確保しやすくなるでしょう」
教育費を貯めやすいこと以外にも、学資保険のメリットがあるという。
「学資保険の保険料は生命保険料控除の対象になるので、節税につながります。学資保険は一般生命保険料控除の枠に入り、年間の払込保険料が8万円以上だと、年間控除額の上限となる4万円が控除されます。控除とは課税対象額から差し引かれることで、4万円がまるっと税金から差し引かれるわけではありません」
一般生命保険料控除の対象となる保険は、いわゆる死亡保険。近年は予定利率が低いこともあり、掛け捨ての死亡保険に入る人が増え、貯蓄型の死亡保険に入る人が少ないため、生命保険料控除の枠が空いている人が増えているとのこと。
「一般生命保険料控除の枠を使い切っていない場合は、学資保険を使って控除を受けると、運用効果が高くなるといえます。一般生命保険料控除をまったく使っていない場合は、学資保険で月々6700円積み立てていくだけで年間の払込保険料が8万円に達し、上限の4万円の控除を受けられるようになります」
学資保険活用のコツは「小さく長く無理なく」
氏家さんが教えてくれた学資保険をうまく活用するコツは、「小さく長く無理なく」。
「まず大切なのが“小さく”。最近の学資保険は予定利率が低いので、保険料を大きくしたとしてもほとんど増えません。増やすために使うのではなく、着実に貯めるために使うものと考え、一般生命保険料控除の枠を使い切る金額を目安にしましょう。月々1万円でも月々2万円でも、控除額の上限は年間4万円と変わらないので、控除の枠を使い切る金額で淡々と続けることをおすすめします」
“長く”は、どのような理由から来るものだろうか。
「多くの学資保険では、加入可能年齢を小学校に入学するまでとしています。高校3年生になる年を満期とすることで、少なくとも十数年間という長期にわたってコツコツと積立できることが、メリットのひとつといえるのです」
そして、“無理なく”続けることが、もっとも重要なコツといえるかもしれない。前述したように、学資保険を途中解約すると、多くのケースで元本割れとなってしまうからだ。
「基本的に、学資保険は最初に決めた保険料を減らすことができません。教育費のかかりにくい乳幼児期や小学生の間は、月々数万円でも支払えるかもしれませんが、子どもが進学塾に通い始めたり、私立学校に進学したりすると、数万円の支出が難しくなるかもしれません。そこで途中解約するのはもったいないので、保険料は無理のない範囲で設定しましょう」
一般生命保険料控除の枠を使い切ることを目指し、保険料を月々6700円に設定すれば、無理なく支払えるだろう。
「控除を受けて節税した分を翌年の保険料の一部にすれば、支出を抑えることにつながります。たとえ年間の払込保険料が8万円だとしても、0歳から17歳まで積み立て続ければ、元本だけで144万円です。この金額が大学進学時に受け取れると思ったら、うれしいですよね」
文部科学省が公表している「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査について」によると、私立大学の1年間の授業料・入学料・施設設備費の合計が135万7080円と出ている。144万円あれば、初年度の学費はまかなえそうだ。しかし、それ以降の教育費はどのように備えたらいいだろうか。
「NISAなどの制度で積み立てて、備えていけるといいでしょう。それこそ教育費のかかりにくい乳幼児期や小学生の間は、教育費の原資となる費用を捻出しやすいので、その期間の積立額を増やし、時間をかけて少しずつでも増やしていけるといいでしょう。子どもが進学塾に通い始めたりしてお金がかかるようになると、積立額を減らす必要が出てくるので、あらかじめ達成したい教育費の額を設定し、運用の計画を立てられるといいでしょう」
改めて考えるべきは「保障や特約の必要性」
活用する学資保険を選ぶとなると、「貯蓄重視型」や「保障重視型」など、さまざまなタイプが出てくる。できるだけ保障が充実したもののほうがいい気もするが、実際はどうなのだろうか。
「『保障重視型』と呼ばれる学資保険には、子どもがケガや病気をした際に保険金が支払われるものや、親に万が一のことがあった際に子どもの養育費が支払われるものがあります。ただし、最近は乳幼児の医療費無償化が進んでいますし、中学生まで医療費が無償だったり高校生でも入院すると無償になったりする自治体も増えているので、子どものケガや病気に対する保障はなくてもいいでしょう。また、親の保障も、親が生命保険や医療保険に入っていれば必要ありません。学資保険に保障を付けると保険金が高くなるので、運用効果も下がってしまいます」
一方の「貯蓄重視型」では、入学や卒業などのタイミングでお祝い金を受け取れるものがある。これは親の考え方によって、捉え方が変わってくるそう。
「お祝い金が出る学資保険の場合、最終的に受け取れる保険金の総額は、お祝い金も含めたものと考えましょう。例えば、総額200万円の保険金が受け取れる学資保険で、お祝い金の合計が50万円だとすると、大学入学時(満期)に受け取れるのは150万円ということになります。お祝い金で小中高の進学の準備をしたいと考えるのであれば、お祝い金ありもいいですが、学資保険は大学の費用を貯めるものと考えるのであれば、お祝い金はないほうがいいでしょう」
学資保険を選ぶポイントも聞いてきたが、何よりも大切なのは「複数の保険を比較すること」。
「複数の保険会社の学資保険を比較することで、より条件のいいもの、返戻率が高いものを見つけられるはずです。基本的には余計な保障や特約を付けず、一般生命保険料控除の範囲で着実に教育費を貯めるためのものと考えるといいでしょう」
着実に教育費を貯めることができ、節税にもつながる学資保険。教育費を準備する選択肢のひとつとして、検討してみてはいかがだろうか。
(取材・文/有竹亮介(verb))