子どもと一緒に考えたいお金のこと ~生活費編~
子どもには「わが家の生活費」を素直に伝えるのがポイント!
子どもが親の年収に興味を示すことはあっても、生活費を気にすることはあまりないだろう。しかし、親にとってみると、生活費は年収のなかでやりくりするものであり、生活水準を左右する重要な指標だ。
子どもにも生活費について知ってもらうことで、おこづかいなどの限られたお金をどのように使っていくか、考えるきっかけになるかもしれない。
そこで、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)の著者でマネーコンサルタントの頼藤太希さんに、子どもと一緒に生活費について考える方法を聞いた。
正直に「生活費」を伝えることで生活の見直しにつながる
「子どもが『パパ(ママ)はどのくらい稼いでるの?』と聞いてくるなど、お金に興味を持ったタイミングがあったら、その質問に答えると同時に、収入だけでなく支出も毎月発生していることを伝えられるといいでしょう。このときに親が意識したいのは、毎月の生活費はある程度具体的に伝えたほうが学びになる、ということです」(頼藤さん・以下同)
以前の記事では、「年収は『会社員の平均並み』と伝えるだけでもいい」と教えてもらったが、なぜ生活費は具体的なほうがいいのだろうか。
「生活費は、子どもにとっても身近なものだからです。商品の価格はスーパーやコンビニに行けばわかりますし、水道光熱費も郵便受けに入っている通知書を見れば書いてありますよね。適当に教えても、すぐにバレる可能性があるので、何にいくらかかっているのか、ちゃんと教えたほうがいいでしょう。月々の生活費を教えると、子どもも『生活費を12倍したくらいの年収があると、いまの暮らしができるのか』とイメージできます」
生活費を伝えるときには、あわせて平均の生活費も伝えることで、生活を見直しやすくなるという。
「総務省が公表している『家計調査(2022年)』によると、3人世帯(勤労者世帯・世帯主が60歳未満)の1カ月の消費支出の平均額は32万3511円、4人世帯(同条件)で33万4572円です。この金額を自分の家の生活費と比べると、『うちは外食が多い』『おもちゃを買いすぎてる』といったことが見えてきます。子どもと一緒に生活費の配分を考えることで、『中学受験の費用を貯めるために、外食を減らそうか』といった話ができて、子どもも納得しやすくなるでしょう」
●3人世帯(勤労者世帯・世帯主が60歳未満)の1カ月の平均支出額
出典:総務省「家計調査(2022年)」
無駄使いが多かったり、貯金ができていなかったりすると、生活費を正直に伝えることに抵抗を感じてしまうが、「そういう家庭こそ、子どもと一緒に考えるチャンス」と、頼藤さんは話す。
「できていないところからできるようになった経験は、大きな学びになります。まずは、どうしても減らせないお金(家賃、交通費、教育費など)と節約できそうなお金(食費、被服費、通信費など)に分け、優先順位を考えてみましょう。親子で話し合うと、『パパは飲みに行きすぎ』『ママは化粧品を買いすぎ』と言われてしまうかもしれませんが、親も反省して節約するチャンスです。親子で一緒に考えて工夫していくと、生活費の見直しにつながるとともに、子どもにお金の配分や貯金の大切さを伝えるきっかけになります」
「生活費」を見直す経験が「おこづかい」の見直しにつながる
生活費を見直し、配分を考えるという経験を通して、お金の使い方が身に付いていくという。
「毎月の収入と支出を把握し、そのバランスを取っていくことで、限られたお金をどのように配分していくといいか、判断できるようになります。必要なものと節約できるものに分けると、自分にとって本当に必要なものを見極める力が養われますし、貯金をするためには支出を減らすのがもっとも手っ取り早いということもわかります。子どもであれば、毎月のおこづかいで同じように考えられるようになるのです」
生活費を確認するという習慣が付くと、限りあるお金を有意義に使えるようになるようだ。
「過去1カ月間のお金の使い道はどうだったかと費用対効果を考えると、『今月はお菓子を買いすぎたから、来月は減らして貯金に回そう』『欲しいゲームが再来月発売するから、来月は無駄遣いしないようにしよう』など、子どもなりに振り返って、次に活かせるようになるはずです。限りあるお金の使い道の優先順位を、自然と付けられるようになるでしょう」
「教育費」について話すことで子どもの学習意欲が上がる!?
大きな支出のひとつである教育費に関しても、子どもには正直に話していいとのこと。
「子どもにかかる教育費は、親としてしっかり押さえておきたいところですし、子どもに伝えてもいい部分です。ネットで調べれば受験にかかる費用の目安は出てきますし、塾の夏期講習の費用なども子どもたちは目にしているはずなので、隠しても仕方のない部分ともいえます」
●1年間の学習費総額
出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
出典:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
「子供の学習費調査」のデータをもとにすると、幼稚園から高校まですべて公立だったとしても、15年間の学費だけで約580万円になる。私立大学を留年せずに卒業したら、4年間で約470万円。塾や習いごとに通わせることを考えると、教育費はさらに増える。
「教育にはかなりのお金がかかるということは、オープンに話してもいいと思います。ただし、『高いお金を払っているから勉強しなさい』と言うのは、あまりおすすめできません。子どもからするとプレッシャーですし、『そんなこと知らない』と反発してしまうこともあるからです」
ここで重要になってくるのが、生活費の話だ。親の収入や支出の話をしていると、「その限られたなかで自分の教育にお金を出してくれているんだ」と子どもが実感し、勉強に意識を向けてくれる可能性がある。
「お金は限りがあるもので、親がやりくりをしたなかから教育費を払ってくれているとわかると、子どもは周囲の人に感謝したり、勉強や習いごとへのモチベーションを高めたりと、変化していくでしょう」
子どもと具体的な教育費の話をすることで、親も将来的に必要になるであろう金額が見えて、準備しやすくなるというメリットもある。
「子どもの希望を聞きながら進学プランを考え、受験や大学進学に向けて目標額を設定し、お金を貯めていくシミュレーションをしてみましょう。教育費をはじめとした毎月の生活費を払いながら貯められるか、検討することが重要です」
子どもにもあえて日々の支出について話すことで、親自身も反省する部分が見えてくるかもしれない。家族みんなで生活を見直し、より良い暮らしを目指してみてはいかがだろうか。
(取材・文/有竹亮介(verb))