子どもと一緒に考えたいお金のこと ~商売編~
商売の基本は「フリマアプリ」から学べ…?
学校でも取り入れられている金融や投資に関する教育。これからの時代を生きる子どもたちにとって必須の知識といえそうだが、家庭でもお金について話すきっかけや手段となるものはないだろうか。
「いまや子どもにとっても馴染みのあるフリマアプリは、仕組みがシンプルで、お金をやり取りする『商売』の基本を教えるのに適したツールです」
そう話すのは、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)の著者でマネーコンサルタントの頼藤太希さん。では、フリマアプリでどのように商売の基本を教えていくといいのだろうか。フリマアプリの活用法と商売の仕組みについて、教えてもらった。
商売の基本は「売上-経費=利益」
「まずは、商売の基本を押さえましょう。『売上-経費=利益』が基本の公式です。例えば、ゲームが1000円で売れたら『売上=1000円』。そのゲームを売るための送料などの諸費用が300円かかったら『経費=300円』なので、『利益=700円』となります。フリマアプリを使うと、この商売の基本を体感しやすいのです」
フリマアプリで考えると、出品した商品が売れた価格が「売上」となる。「経費」は、フリマアプリに支払う手数料や商品を送るための送料、梱包のための箱代など。売上から経費を引き、手元に残るお金が「利益」だ。
「フリマアプリであれば手軽に始められますし、家にある不用品や手づくりのものなどを少額から販売できるので、子どもに商売を経験させることができます。小学校高学年くらいになると、ある程度子ども自身の采配で進められるでしょう。買う人のことを想像し、どのような商品が求められているか、どのような写真や商品説明の文言、価格設定がいいのか、考えさせることが大切です」
まずは価格設定などを子どもに任せ、様子を見てみるといいそう。
「子どもが出品する商品や設定した価格、撮影した写真を見て、『なんでこの商品(価格、写真)にしたの?』と理由を聞いてあげると、考えるきっかけになります。『似たような商品より安い価格にした』『売れてる商品はこういう写真を載せてるから』という答えが返ってきたら、子どもなりに研究していることがわかります。回答が『なんとなく』の場合は、『これで売れそうかな?』『買いたいと思う?』と聞いてみるといいでしょう」
子どもに任せるところと親がフォローすべきところ
フリマアプリでの商売を実践させる際、子ども自身に考えさせることに加え、失敗させることもポイントだという。
「子どもにさせたいのは、『商品が思うように売れない』という失敗です。商品がなかなか売れないときには、『なんで売れないのかな?』と考えるきっかけをつくってあげましょう。売れた際にも『なんで売れたと思う?』と聞くと、成功の理由を振り返ることができます」
親は子どもに失敗させないため、先回りして教えたり手を出してしまったりするものだが、それは避けたほうがいいようだ。
「親が『このくらいの価格がいいと思う』『写真は撮っておいたよ』と先回りして、無難にやらせようとすると、子どもは考える機会を失ってしまいます。失敗から学ぶことは多いので、まずは子どもに任せてみましょう。主体的に進めさせることで、『どうしたら売上額を増やせるか』『経費を抑えられるか』と考えるようになり、PDCAを回して成功にたどりつく力が身に付きます」
ただし、買い手となる人と実際に売買を行うため、親がフォローするべき部分もあるとのこと。(1)出品する商品の確認、(2)商品説明の文言の添削、(3)買い手とのメッセージの確認の3つだ。
「出品する商品を自由に選ばせると、必要なものを出品してしまう可能性があります。勝手に家にあるものを売られても困るので、不用品を用意して選ばせるなどの事前準備は必要といえます。商品説明の文言や買い手とのメッセージは、場合によってトラブルにつながることもあるので、一度子どもに文言をつくらせたうえで、間違ったことを記載していないか、相手に失礼がないか、親が確認し、OKを出すようなルールをつくりましょう」
フリマアプリというと不用品を売るツールというイメージが強いが、最近は手づくりのアクセサリーやアートなどを販売するケースも増えてきている。モノづくりが好きな子どもであれば、手づくりのものを販売するのもいいだろう。子ども自身の作品を出品することで、「世の中に求められているものについて、さらに突き詰めて考えられるようになる」と、頼藤さんは話す。
「食べ放題でお店はつぶれないのか?」を考えてみよう
フリマアプリで商売を経験させる以外にも、身近なお店やサービスを例に出して、利益を出す方法を考えながら、お金について学ぶという方法もある。
「『食べ放題でお店はつぶれないのか?』という疑問を例に出して、子どもと一緒に考えてみましょう。この疑問には、商売の基本の『経費』が大きく関係しています。食べ放題のメニューの原価率は一律ではなく、原価率の高いメニューと低いメニューを組み合わせることで、利益を確保していると考えられます」
一般的に、ステーキなどの肉料理は原価率40%程度と高めで、パスタやピザ、カレーなどの炭水化物中心の料理は原価率20~30%程度といわれる。うまく組み合わせることで、利益を確保できる食べ放題を実現しているのだ。メニューの原価率などを調べながら、この仕組みを子どもと一緒に考えてみると、発見があるだろう。
ちなみに、ビュッフェスタイルの食べ放題の場合は、客が自ら料理を取りに行くため、人件費を抑えられるというメリットも考えられる。
「『なぜ、コンビニの商品はスーパーより高いのか?』というテーマで、その理由を考えてみるのもいいでしょう。コンビニを利用する人は価格の安さよりも、家から近い距離にあることや24時間開いていることといった利便性を求めて、コンビニを使っているという見方ができるかもしれません。一方、スーパーは安さを求めるお客さんが多いから、価格で勝負している。そんな風に考えていくと、価格だけが商売の決め手となるわけではないことや、お店によって強みとする部分が変わることが見えてくるでしょう」
食べ放題やコンビニの例以外にも、「なぜ、コーヒーの価格はお店や場所によって違うのか?」「なぜ、高級ブランドとユニクロでは、似ている商品でも価格が違うのか?」といったこともテーマにできるだろう。
「子どもにとって身近なお店や職業は、なんでもテーマにできます。食べ放題のお店に行ったとき、コンビニのCMを見たとき、さまざまな場面で『なんでこのお店は人気なんだろう?』と、親が話題を振ってみてください。そして、子どもと一緒に考えてみましょう。大事なのは正解を知ることではなく、商売の仕組みや利益を得る方法を考えることです。この会話をきっかけに子どもが商売や仕事に興味を持つようになると、将来の選択肢も広がっていくでしょう」
お金について教えるといっても、投資や金利の話をしなければならないわけではない。身近なテーマを切り口に、働くことやお金を稼ぐことについて考えてみるといいだろう。子どもたちは、親も驚くようなひらめきを見せるかもしれない。
(取材・文/有竹亮介(verb))