2024年に生まれ変わるNISA

「いまを楽しむお金」と「施設入居の費用」を分けて備えよう!

50~60代の「新しいNISA」活用のカギは“2つの枠の使い分け”

TAGS.


2023年までの「NISA」は、非課税保有期間が「一般NISA」で5年、「つみたてNISA」で20年に設定され、年間投資枠も小さかったため、セカンドライフを間近に控えた50~60代にとってはメリットを感じにくい制度だったかもしれない。

しかし、2024年1月から「新しいNISA」に生まれ変わり、非課税保有期間は無期限、非課税保有限度額は1800万円に拡大されるため、50~60代でも気になっている人は多いだろう。そこで、独立系ファイナンシャルアドバイザーの五十嵐修平さんに、定年間近の世代にぴったりの「新しいNISA」活用法を教えてもらった。

50~60代は「成長投資枠で高配当株に投資」

「新しいNISA」において、五十嵐さんがもっともインパクトの大きな変化と捉えているのが、非課税保有限度額と年間投資枠の拡大。

「非課税保有限度額1800万円、年間投資枠360万円はかなり大きいので、配当株なども組み合わせやすくなると感じています。また、2018年10月から株式の売買単位が100株に統一されたり、東証が望ましい投資単位の水準(50万円未満)への移行を企業に働きかけたりしたことで、個別株に投資しやすい環境になっているので、『新しいNISA』をいろいろな手法で活用できる状況になっているといえます」(五十嵐さん・以下同)

これまでの「NISA」は長期・積立・分散投資を行う制度というイメージが強かったかもしれないが、今後は別の投資方法にもチャレンジしやすくなるという。

「20~40代の方は、長期・積立・分散で堅実に運用していく方法で問題ないと思います。一方、50~60代になると、若い人と比べて既にある程度の資金が貯まっている人が多いですし、セカンドライフが目前になり真剣に運用に取り組もうと考える人も増えてくる世代だといえるでしょう。50~60代の特徴を踏まえると、毎月少額をコツコツ積み立てる方法ではなく、別の投資法で資産を築くことができるのではないかと考えられます」

五十嵐さんが50~60代におすすめするのは、「高配当株への投資」。高配当株とは、配当利回り(1株当たりの配当金÷株価)が高く、年1~2回配当金が支払われる株式のこと。

「50~60代になると、10~15年先ではなく、早く実りを得たいと考える人も多いでしょう。『新しいNISA』で高配当株に投資することで、非課税で配当金を得られます。その配当金を、外食・旅行などの楽しみや生活費として使うことで、元金を減らさずに生活を少し豊かにすることができるでしょう」

「新しいNISA」では、「成長投資枠」で個別株への投資が可能。「成長投資枠」の年間投資枠240万円をフルに使って高配当株を組み合わせて投資し、配当利回り5%で運用できた場合、年間の配当金は12万円ほど。それなりの金額になるため、現役の間は旅行などに使い、定年を迎えた後は生活費の足しにするなど、さまざまな選択ができそうだ。

「5年以内に使う予定のないお金」で投資・運用

五十嵐さんは、「資金に余裕があったら、年間投資枠240万円を早めに使い切ったほうがいい」と話す。

「高配当株に投資する場合は、早く大きなお金で運用したほうが非課税で配当金を受け取る期間が長くなるからです。ただし、無理をして240万円使い切る必要はありません。自分のできる範囲で、使う予定のないお金で高配当株に一括投資をして、『新しいNISA』の非課税のメリットを得ましょう」

「使う予定のないお金」は、どのようなお金を指すのだろうか。具体的な判断基準を聞いた。

「まず、1年分の生活費は、預貯金で確保しておきたいところです。月々の支出を算出し、12倍した金額が生活費となります。月々40万円の支出があるとしたら、480万円ほどです。もうひとつ、押さえておきたいのが5年以内に使う予定のお金。車や給湯器の買い替え、子どもの教育資金や結婚資金、住宅購入の頭金など、大きな出費を控えている場合は事前に確保しましょう。これらのお金を除いて、使う予定のないお金があったら『新しいNISA』に回すというステップが現実的です」

いざ手元にある資金で高配当株を買うとなったら、どのような株式を選んでいくといいだろうか。

「つい配当利回りを気にしてしまうと思いますが、ポイントは3つあります。1つ目は、企業を取り巻く環境。通信や鉄道など新規参入が難しい業界やブランドが社会に浸透している企業など、倒産しにくいであろう企業を選びましょう。2つ目は、利益と配当のバランス。利益が過去3~5年ほど保てているか、利益に対して配当を出し過ぎていないかなど、安定的に配当金を支払い続けられる状態であることを確認しましょう。3つ目は、配当金の内訳。配当利回りが高い企業のなかには、記念配当(創業などを記念した配当金)などによる一時的な増配によって配当利回りが上がっているところがあるので、普通配当だけで配当利回りが高いところを探すことが大切です」

「つみたて投資枠」での積立投資で「施設入居の費用」を準備

「成長投資枠」での高配当株投資の手法を聞いてきたが、「つみたて成長枠」もうまく併用できるだろうか。

「資金に余裕があれば『つみたて成長枠』も使い、世界全体の株式に分散投資するような投資信託に積立投資していくといいでしょう。一般的に20~30代に推奨されるような使い方ですが、同様で問題ないと考えています」

投資信託とはいえ株式に投資する商品となると損をするリスクが気になるところだが、「50~60代も長期の運用で損をするリスクを抑えることができる」と、五十嵐さんは話す。

「50~60代の方に15年くらいの長期投資の話をすると『そんなに長く運用できないよ』と言う方がいらっしゃいますが、『将来的にサービス付き高齢者向け住宅に入るとしたら、何年後だと思いますか?』と聞くと、『20~25年後かな』『80代になってからだろう』とおっしゃる方が多いのです。つまり、それだけの間、施設入居のためのお金を貯めたり運用したりする可能性があるといえます。そのお金を『つみたて投資枠』に入れて、20年前後運用するという選択肢も考えられるでしょう。『成長投資枠』は生活費や日々の楽しみのためのお金、『つみたて投資枠』は施設入居のための費用という色分けもできるのです」

ちなみに、「令和4年簡易生命表」によると、60歳男性の平均余命(60歳を起点とした生きられる年数)は23.59年、60歳女性は28.84年となっている。平均で男性は83歳、女性は88歳まで生きると考えると、50~60代から始める積立投資も現実的な選択といえるだろう。

「つみたて投資枠」「成長投資枠」それぞれの活用法を聞いてきたが、どちらも一度投資したら、そのまま運用し続けることが大事だという。

「『つみたて投資枠』は施設入居の際に引き出して使うお金と考え、運用し続けましょう。『成長投資枠』も、元金を取り崩さずに配当金をもらって、いまを楽しむお金と考えるといいと思います。年金と配当金、現役の間に貯めていた預貯金だけで生活費が賄えなくなってきたら、『成長投資枠』の元金を取り崩すようなイメージです」

「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる「新しいNISA」だからこそ、より柔軟な活用ができるといえそうだ。50~60代の人は、直近の生活費と将来の施設入居の費用を分けて考え、自分に合った使い方をしてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
五十嵐 修平
独立系ファイナンシャルアドバイザー、バリューアドバイザーズ代表取締役社長。大学卒業後、東証一部上場の証券会社に入社。独立・中立の立場で提案したいという想いのもと、2013年にバリューアドバイザーズを設立。お客様と目的・目標を共有し、ゴールに向かって運用する独自のコンサルティング手法を考案し、多くの顧客から信頼と支持を集めている。日本経済新聞、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンドなどメディア出演も多数。著書に『55歳からでも失敗しない投資のルール ――世界の超富裕層は、なぜこの基本を大切にするのか?』など。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード