ファイナンスとは?意味や会計との違いについてわかりやすく解説
ファイナンスとは、主に企業が事業資金を調達する際に使われる言葉です。ただし、個人ファイナンスでは少し異なる意味で使われることもあります。
本記事では、ファイナンスとは何かを詳しく説明した上で、身につけるメリットや具体的な方法について紹介します。
ファイナンスとは何か
ファイナンス(finance)とは、財務や資金管理を意味する言葉です。ビジネスでは、事業資金を調達する際に使われることがあります。
ファイナンスは状況によって使われ方もさまざまです。ここから、ファイナンスの状況による意味の違いを説明した上で、混同しやすい「会計」との違いについても説明します。
状況による意味の違い
ファイナンスの使い分けは、主に以下の通りです。
・金融(主に金融機関が資金を融通すること)
・財政(国・地方団体が税金などを集めて管理し、必要なことに資金を投入すること)
・資金調達(事業に必要な資金を調達すること)
・資金管理(企業や家計でお金を管理すること)
また、ファイナンスを「企業ファイナンス(コーポレートファイナンス)」と「個人ファイナンス(プライベートファイナンス)」に分類することもあります。
企業ファイナンスでは、主に資金調達手段として使われるのに対し、個人・家計のファイナンスでは、資産形成など将来の資金について考える場面で使われる点が主な違いです。ただし、「将来どのように資金を確保するか」を考える点では、いずれのファイナンスも共通しています。
会計との違い
会計(アカウンティング)とは、収支や財務状況などお金の流れを記録し、結果を経営層や利害関係者に報告する作業を指します。ファイナンスが主に「未来・将来」に向いているのに対し、会計は「過去」「現在」の情報を対象とする点が主な違いです。
また、自社の企業価値を上げることを主な目的とするファイナンスと異なり、会計は結果を社内外に報告することを主な目的としています。
ファイナンスを学ぶメリット
ファイナンスを学ぶメリット・身につけるメリットは、主に以下の通りです。
・キャリアアップにつながる
・家庭で資産形成する方法がわかる
それぞれ解説します。
キャリアアップにつながる
ファイナンスを学ぶことで、自身のキャリアアップにつながる点がメリットです。
どの企業も、経営企画や財務部門などの管理部門では、ファイナンスの知識が欠かせません。経営に直接携わる業務を経験したい方は、ファイナンスを身につけておいた方がよいでしょう。
また、ファイナンスの知識を得ることで、ビジネスの流れも見えてきます。その結果、上司や取引先とのコミュニケーションをスムーズに取れるようになるでしょう。
家庭で資産形成する方法がわかる
家庭で資産形成する方法がわかる点もメリットです。企業ファイナンスで考える資金調達方法や資金管理方法は、家計にもそのまま導入できます。
また、個人ファイナンスは、それぞれの生き方にあったお金の知識や活用方法などを身につけるためのものです。企業ファイナンス・個人ファイナンスの知識を活用することにより、自分の資産を増やしたり、守ったりするために何が必要かが見えてくるでしょう。
企業が資金調達する際のファイナンスの種類
企業が資金調達する際のファイナンスの手段は、主に以下の3種類です。
・デットファイナンス
・エクイティファイナンス
・アセットファイナンス
それぞれの特徴や、メリットとデメリットを紹介します。
デットファイナンス
デットファイナンスとは、銀行からの借入や社債の発行により資金を調達する方法です。デット(debt)は借金や負債を意味します。
デットファイナンスのメリットは、資金提供者から経営に干渉されにくい点です。資金を調達してからも比較的自由に経営を続けられます。
一方、返済義務を負う点がデットファイナンスのデメリットです。必要以上に借りたり、金利が高かったりする場合、負担がかかり資金繰りは悪化する可能性があります。また、返済期日や利払い日が決まっているため、業績や財務状況によらず返済が必要となります。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスは、新株発行などにより自己資本を増やすことで資金を調達する方法です。エクイティ(equity)には、持分などの意味があります。
調達した資金について、返済義務を負わない点がエクイティファイナンスのメリットです。また、調達した資金は貸借対照表上「負債の部」ではなく「純資産の部」に計上されるため、財務内容を改善できます。
一方、議決権が備わっている株式を発行する場合、経営に関与される可能性がある点はデメリットです。
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、所有する不動産や売掛金などを活用して資金を調達する方法です。アセット(asset)は資産や財産を意味します。
アセットファイナンスは、借入せずに資金を増やせるため、財務指標の改善につながる点がメリットです。また、売掛金の回収などを待たずに、比較的早い段階で資金を得られます。
一方、所有する資産によって十分な資金を調達できないことがある点はデメリットです。アセットファイナンスで得られる金額は、資産の評価額・信用力に左右されます。
個人がファイナンスを実施する3つの方法
個人・家計でファイナンスを実施する場合、主に以下3つの方法があります。
1.収支確認表・家計のバランスシート作成
2.ローン
3.株式・投資信託などで資産形成
それぞれの方法を紹介します。
1. 収支確認表・家計のバランスシート作成
状況を把握するために、まず自分の家の収支確認表や家計のバランスシートを作成しましょう。
収支確認表は、企業の損益計算書のような役割を果たすものです。収支確認表を作成して給与・賞与などの年間の収入から、税金や家賃・ローンなどの金額を引けば、自分がどれぐらいの金額を貯蓄できるのかわかります。
また、家計のバランスシートは企業の貸借対照表のような役割を果たすものです。所有する現金・預金・株式・自動車などの資産から、支払わなければならないマイカーローン・カードローンなどの負債を引けば、自分の純資産を把握できます。
なお、純資産がマイナスの場合は負債を減らす方法はないか、検討が必要です。
2. ローン
企業ファイナンスではさまざまな資金調達手段がありましたが、個人ファイナンスの場合は資金がない場合にローンで調達することが一般的です。自動車を購入する場合(マイカーローン)、結婚して住宅を購入する場合(住宅ローン)、子どもを大学に通わせる場合(教育ローン)など、ローンを検討するタイミングはいくつもあります。
一般的に、長期間にわたって少しずつ返済できるため、ローンは目標達成のために有効な手段のひとつです。ただし、金利が高い商品を借りたり、実際の収入に見合わない金額を借りたりすると生活に支障をきたすため、借り入れを行う際は十分な検討を行いましょう。
3. 株式・投資信託などで資産形成
低金利の状況では、預金しているだけではお金が増えないため、将来に備えて金融商品で資産形成することも大切な個人ファイナンスです。個人が投資する主な金融商品として、以下が挙げられます。
・株式
・債券
・投資信託
・不動産
いずれも、一定のリスクがあるため余裕資金を中心に投資を始めることが大切です。また、各商品でリスク・リターンの大きさが異なるため、ひとつに依存せずバランスよく投資(分散投資)することも検討しましょう。
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ファイナンスに関連する資格
個人ファイナンスに関する資格のひとつが、FP(ファイナンシャルプランナー)です。FP技能検定は国家資格で、1級から3級までの等級があります(日本FP協会と金融財政事情研究会の2機関で実施)。
FP技能士の試験では、資金計画・資産運用・税金・不動産・相続など、個人ファイナンスに関する幅広い内容が出題範囲です。そのため、取得すれば家計に役立つだけでなく、仕事の営業で取引先との話題も広げられるようになるでしょう。
また、企業ファイナンスに関連する資格として、証券アナリストがあります。証券アナリストの試験では、経済・資本市場や金融商品の仕組み、ファイナンスなど幅広い知識が問われます。
なお、CMA(日本証券アナリスト協会認定アナリスト)を名乗るには、合格だけでなく3年以上の実務経験も必要です。ただし、実務経験がなくても「検定会員補」の称号は使用できます。
ファイナンスとは資金調達や資産形成に関連する用語
ファイナンスとは、もともと財務や資金管理を意味する言葉です。ファイナンスの中には、企業ファイナンス(コーポレートファイナンス)と、個人ファイナンス(パーソナルファイナンス)があります。
資金調達手段などを考える企業ファイナンスを身につければ、キャリアアップにつながる可能性がある点がメリットです。また、個人ファイナンスを身につけることで、資産形成や将来設計に役立ちます。
この機会に、ファイナンスの学習を始めてみてはいかがでしょうか。
参考:日本FP協会「FP技能検定とは」
参考:一般社団法人 金融財政事情研究会「ファイナンシャル・プランニング技能検定」
参考:公益社団法人 日本証券アナリスト協会「CMAとは」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。