アクティブETFの開拓者に聞く

王道を行く「グロース投資」「バリュー投資」を実現する野村AMの2本のアクティブETF

【前編】ETFのパイオニア・野村アセットマネジメントに聞く「アクティブETF」での投資術

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2023年9月7日に、日本初となるアクティブETF(上場投資信託)が東京証券取引所に上場した。

上場開始となったアクティブETFは、従来のETFのようにインデックス(指数)に連動して値動きするものではなく、運用会社やファンドマネージャーが運用方針に沿うように組み入れ銘柄や資産配分を決め、リターンを追求していくもの。

2023年9月に上場された2本のアクティブETF「NF・日本成長株アクティブETF(2083)」「NF・日本高配当株アクティブETF(2084)」を運用しているのが、日本で初めてETFを上場させた運用会社・野村アセットマネジメント。新たな挑戦ともいえるアクティブETFの上場について、野村アセットマネジメントETF事業戦略部シニア・マネージャーの水﨑優駿さんに聞いた。

アクティブETF解禁で「多様な金融商品の組成」が可能に

――まずは、野村アセットマネジメントのETFの特徴から教えていただけますか?

「『NEXT FUNDS』というブランドで展開している当社のETFは、1995年にスタートしました。日本初のETF『NEXT FUNDS 日経300株価指数連動型上場投資信託(1319)』を上場し、それ以来30年近くにわたってETFのパイオニアとして商品を展開してきました。現在は、アクティブETFを含め70本のETFを展開しています(2024年1月現在)」

――「NEXT FUNDS」では日本株や外国株のETFだけでなく、債券や原油、金などのETFも展開しているところが特徴的ですよね。そのなかで、アクティブETFの登場はどのように受け止めていますか?

「これまでも株式、債券、コモディティなど、多様なアセットクラスに投資できるETFを投入してきましたが、アクティブETFでないとできないこともありました。例えば、一定の条件を満たした株式を組み入れたETFをつくりたいけれど、その条件に合う指数が存在しないからつくれない、ということがあったのですが、アクティブETFを上場できるようになることで、独自のテーマに沿ったETFもつくり出していけます。投資家の皆様に新たな選択肢を提供できるという意味で、将来性を感じています。

また、ファンドマネージャーが株式や債券をうまく組み入れることで、リターンを追求できるところがアクティブETFの大きなメリットです。従来のETFと同様にリアルタイムで売買できる利便性や、一般的な投資信託と比較して低コストという魅力も兼ね備えているので、日本でも存在感の大きな金融商品になるだろうと考えています」

――低コストでありながら、高いリターンを期待できるところはアクティブETFの大きな魅力ですよね。ところで、野村アセットマネジメントでアクティブETF上場の企画が始まったのはいつ頃だったのでしょう?

「実は数年前から、日本でアクティブETFをどのように導入していくべきか、東証と議論を重ねてきました。なので、制度化が公表された2023年6月には、アクティブETF第一号としてどのような銘柄を出していくか、社内でもスムーズに検討を進めることができました。結果的に、日本株に投資するもので、王道といえる戦略を打ち出したETFにしようというところに落ち着きました」

――“王道の戦略”というと、どのようなものでしょうか?

「『グロース投資』と『バリュー投資』の2つです。一般的に『グロース投資』は将来的な株価の成長が期待できる銘柄に投資するもので、『バリュー投資』はPERやPBRといった指標を参考に株価が割安な銘柄に投資することで、配当利回りが高くなる傾向があります。この2つの戦略にマッチするアクティブETFを提供し、投資家の方々に使い分けていただくようなイメージで考えていきました」

異なるリターンの源泉を持つ2つのアクティブETF

――「NF・日本成長株アクティブETF」と「NF・日本高配当株アクティブETF」は、「グロース投資」「バリュー投資」とどのように関係するでしょうか?

「『NF・日本成長株アクティブETF』は、これからの成長が期待できる銘柄を組み入れ、キャピタルゲイン(株価の値上がりによって得られる利益)を軸とした資産成長を目指しているので、まさに『グロース投資』といえます。将来に向けた資産形成を考える世代にとっては、メインの戦略となると思います。

一方、『NF・日本高配当株アクティブETF』は、中長期的に安定した配当を出せるであろう銘柄を組み入れ、インカムゲイン(株式の保有によって得られる配当収益)を軸としたトータル・リターンの獲得を目指しているので、『バリュー投資』のひとつといえます。既にある程度の資産があり、それをもとに定期的に配当金を受け取りたいと考える方々にとって、利用しやすいのではないかと考えています」

――2つの戦略を代表するようなアクティブETFというわけですね。ちなみに、それぞれに組み入れられている株式は、どのように選定されているのですか?

「『NF・日本成長株アクティブETF』は、ボトムアップ・アプローチといわれる手法を取り入れています。ファンドマネージャーや各企業を担当するアナリストが成長株銘柄委員会などの社内会議体で投資候補銘柄を審議し、承認・推奨された銘柄を中心に投資するというプロセスです。ROEという指標に着目して銘柄を選定するのですが、単に今ROEが高いかどうかは重要ではなく、将来的に高いROEを維持できるかどうかがポイントです。

『NF・日本高配当株アクティブETF』は、個別銘柄の配当利回りに加えて、アナリストによる分析やテキストマイニング技術を活用した当社独自の配当予測を考慮して、投資対象銘柄を選定しています。重視しているのは、将来にわたって安定的に事業を継続し、配当を出し続けられる企業であるかという点であり、将来の増配の可能性も加味しながら銘柄選定を行っています」

――2本とも、さまざまな視点から分析することで、より安定的な運用につなげているのですね。ただ、アクティブETFそのものが日本初の商品なので、組成にも苦労したのでは?

「ETFは上場商品であり、リアルタイム売買に耐えうるだけの流動性、日々のポートフォリオ開示を通じた透明性を確保しなければいけません。そうした制約があるなかで、いかに戦略を組み立てるかに苦労しました。特に日々のポートフォリオ開示については、手札を見せながらポーカーをするようなものなので、ファンドマネージャーにとっては難しい側面もあります」

――どのように折り合いを付けていったのでしょう?

「投資家の方々に長期で保有してもらえるよう、ETFのコンセプトは“シンプルでわかりやすく”を意識して組み立てました。そうしたコンセプトの中で、組み入れ銘柄の売買のタイミングや望ましい回転率の水準など、アクティブETFの流動性を提供するマーケットメイカーの意見も参考にしながら、運用するうえでのルールを決めていきました」

アクティブETF活用のキーワードは「長期保有」

――2本のアクティブETF、それぞれどのように活用してほしいと考えていますか?

「2つに共通するのは、長期で保有してほしいということです。『TOPIXをベンチマークにして、成長株は年率4%、高配当株は3~4%の超過リターンを獲得すること』を運用目標に設定しているのですが、『中長期的な目安として』という前提が入ります。成長株銘柄委員会などで承認・推奨される銘柄のコンセプトは『5年持てる銘柄』であり、短期で結果を出すことを目標にはしていません。

プロ野球を見ても、140勝0敗で優勝するチームはなくて、年間何十回と負けながらも、より多く勝ちを重ねたチームが優勝しますよね。投資も同じで、毎日相場が動くなかで常に勝ち続けるというよりも、短期の相場で一喜一憂せず、中長期的な目線でパフォーマンスを見てほしいと思います」

――「NF・日本成長株アクティブETF」には、高ROEの維持が期待される「優良企業」だけでなく、ROE改善が期待される「変身企業」も組み入れられているところに、将来を見据えた投資であることがうかがえますね。

「おっしゃる通りで、大事なのは将来を見据えることです。従来の指数連動型ETFだと、ROEや配当利回りが一時的に高い銘柄を拾ってしまうケースがあるのですが、アクティブETFであれば将来的にROEが高くなるであろう銘柄や増配が期待できる銘柄を運用会社独自の分析に基づいて組み入れることができます。『変身企業』はまさに、いまは注目されていないけれど将来化ける可能性がある企業なので、アクティブETFだからこそ組み入れられる銘柄だといえます」

――先ほど世代によって「グロース投資」「バリュー投資」は分かれるという話がありましたが、長期で持つことを考えると、あまり縛られなくてもよさそうですね。

「そうですね。どちらの銘柄も最低投資金額は約2000円と低額なので、2本をあわせて持つ選択肢もあると思います。『グロース投資』と『バリュー投資』は逆向きの戦略で、例えば金利が下がる局面では『グロース投資』が優位、金利が上がる局面では『バリュー投資』が優位になるといわれます。長期で保有する場合は金利上昇・金利下落のどちらの局面にも備える観点から、2つとも持つ選択肢も検討してみてほしいですね」

王道の投資手法を用い、長期で保有できる設計になっている野村アセットマネジメントのアクティブETF。投資初心者も活用しやすい商品といえそうだ。後編では、日本のETF市場の現状とこれからについて伺う。
(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/森カズシゲ)

著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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