子育てにまつわるお金の話

子どもと一緒に考えたいお金のこと ~投資手法編~

投資のキホン「長期・積立・分散」を子どもと一緒に学ぶには?

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学校教育にも「資産形成」の内容が取り入れられ、子どもたちにとっては当たり前のものになりつつある投資。注意したいのは、ほとんど知識がない状態で投資を行うと、元本割れして損をする可能性を秘めていることだ。

子どもが知識のないままリスクの高い投資を行わないようにするためには、どのように投資手法を教えるといいだろうか。『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)の著者でマネーコンサルタントの頼藤太希さんに、親も知っておきたい投資のテクニックとその伝え方を聞いた。

損しにくい投資手法「長期・積立・分散」

「投資の基本は『長期・積立・分散』です。難しい方法のように感じるかもしれませんが、データやグラフを活用しながらシンプルに説明することを心がけると、子どもも理解しやすくなるでしょう」(頼藤さん・以下同)

「長期・積立・分散」とは、値動きの異なるさまざまな資産・地域に分散する投資を、積立で、長期的に継続する投資手法のこと。この方法を実践すると、大きな儲けになることは少ないものの、損しにくい投資を実現できる。

「子どもは『一気にいっぱい儲けたい』と言うかもしれません。その場合は、『投資で儲けるには、同じ分だけ損する可能性もあるんだよ』と伝えたうえで、『誰でも損をするのはイヤだから、損しにくい方法が理想的じゃないかな』と提案してみましょう。きっと『損はしたくない』と考えるはずです」

「長期・積立・分散」が理解しやすくなる伝え方

「長期・積立・分散」3つの投資手法が理解しやすくなる伝え方について、教えてもらった。

●積立投資
「毎月1万円」など、定期的に同じ金額を投資し続けること。

「理想的な投資は『価格が一番安いときに買って、一番高いときに売る』ですが、価格変動を読むことは難しく、理想を実現するのはとても困難です。なぜなら、株価は先の見えないジェットコースターのようなものだから。上下するタイミングは誰にも予想できません。そこで、一番安いときに買って、一番高いときに売ることを諦める代わりに、毎月一定額を投資し続ける積立投資が出てくるのです。積立投資を実践すると、次のようなイメージになります」

『11歳から親子で考えるお金の教科書』をもとに作成

上記の例では、4日目までは株価が下がっているため、投資するほど元本割れになってしまっている。一見すると損をしているようだが、このまま積立投資を続けることで、6日目から急激に価値が上がっている。

「株価が下がっているときは、低い金額で株式を多く購入できるタイミングといえます。グラフにもあるように、毎月1万円投資するとして、株価1000円だと10株しか買えませんが、株価100円だと100株買えるのです。そのまま積立投資を継続し、保有している株式を増やしていくと、株価が上がったときに大きなリターンを得やすくなります。さまざまなグラフを用意し、子どもと一緒に購入できる株数や保有している株式の価値などを計算してみると面白いでしょう」

●分散投資
値動きの異なる資産・地域に分けて投資すること。株式や債券といった金融商品の種類だけでなく、業界や国などで分ける方法もある。

「分散投資を伝えるときは、商店を経営するシミュレーションをしてみましょう。商品は2つしか置けないものとして、『冷やし中華』『ソフトクリーム』『おでん』の3つから選ばせてみましょう」

『11歳から親子で考えるお金の教科書』をもとに作成

「冷やし中華」と「ソフトクリーム」を置く店舗は、夏場の売上が期待できるが、それ以外の時期は売れにくいだろう。夏に大きく稼いで、ほかの時期は休むという計画も立てられるが、冷夏だった場合は想定していた売上を立てられないかもしれない。

一方、「ソフトクリーム」と「おでん」を置く店舗であれば、夏場も冬場も安定的に売上を上げられ、冷夏にも対応できるだろう。大儲けや長期休暇は期待できないかもしれないが、損をしにくいのだ。

「商店を例に出し、どちらが損しにくいか考えることで、『投資でもタイプの違う商品を扱う会社を組み合わせたほうがいいんだ』と、分散投資の必要性を理解しやすくなるでしょう」

●長期投資
投資した資産(株式など)をすぐに売らず、長く保有すること。


「長期投資とは、先述した『積立投資』『分散投資』を長く続け、資産を長く保有することです。なぜ、長く続けるかというと、『株価は概ね上がっていく傾向にある』というデータが出ているからです」

短期的に見ると株価が下がっている時期もあるが、10年、20年という長期単位で見ると、株価が上がっていることがわかる。つまり、いま投資を始めて保有し続けたら、10~20年後にリターンを得られる可能性が高いといえるのだ。

投資=未来の社会や自分自身をよくしていくこと

最後に、投資を通じて親から子どもに伝えられることを聞いた。

「投資とは、“未来に託すこと”です。勉強や習いごとなどで自己投資することで、将来の自分の成長につながり、収入が上がったり誰かの支えになれたりと、自分自身や周りの人を助ける力を身に付けることができますよね。いま使った時間やお金を、未来の自分に託しているというわけです。自己投資の話は、子どもも理解しやすいでしょう」

自己投資と同じように、株式などへの投資も“未来に託すこと”である。

「投資という形で会社にお金を託すことで、その会社は未来の生活を便利にするための商品やサービスを開発し、より多くの人の生活を豊かにしていきます。商品やサービスの人気が高まり、売上が上がって企業が成長すると、株主である自分にもリターンが返ってくる。投資をすることで、未来の社会や自分自身のプラスにつながるといえるのです。“投資=多くの人を幸せにできる行為”と捉えると、前向きにチャレンジできるようになるでしょう」

「長期・積立・分散」というと難しく感じるが、具体的なデータやイメージを用いると、理解度が深まるだろう。頼藤さんのアドバイスを参考にして、子どもと投資手法について話し、子ども自身や家族の夢を叶えるための投資を考えてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
頼藤 太希
Money&You代表取締役。マネーコンサルタント。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計130万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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