福永博之先生に聞く信用取引入門

【信用取引入門】第4回:信用取引のリスク管理について

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【福永博之先生に聞く信用取引入門】
前回記事はこちら 第3回:信用取引のルールについて(仕組み、コスト)

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株式投資は成功すれば大きなリターンが期待できる反面、様々なリスクもあります。そこで今回は信用取引のリスク管理について解説します。

主なリスクは以下の4つに大別することができます。1つ目は、投資した銘柄の株価が下がってしまう値下がりリスクです。これは信用で売った時に株価が上昇する場合も含めて、「価格変動リスク」と言い換えることができます。2つ目は投資した銘柄が倒産してしまう「倒産リスク」です。そして3つ目が、日ごろの取引量が少ない銘柄の場合に希望価格で売ったり買ったりできないことが起こる「換金リスク」。4つ目は、売買高が少なくて保有株をすべて売り切ることや買い戻すことができない「流動性リスク」です。

これらのリスクは現物の取引でも注意しなければいけませんが、信用取引を行う場合には特に注意が必要です。なぜなら、信用取引には返済までの期限があることと、レバレッジを効かせて手元資金以上の取引を行うことが多いため、思わぬ大きな損失につながることが考えられるからです。こうしたリスクをいかにコントロールできるかが、信用取引で大きな損失を出さないようにするためのポイントになります。

では、これらのリスクをどのようにコントロールするかについて解説します。最初の「価格変動リスク」ですが、これは何と言っても値上がりが期待できる銘柄を選ぶに限ります。また、値上がりが期待できると言っても、制度信用取引を使う場合、6カ月以内に返済する必要がありますので、6カ月以内に上昇する銘柄を選ぶ必要があるということになります。

そのため、信用取引ではじっくり中長期で保有するという考え方よりは、むしろ買い材料が発表されていて上昇基調が続いている銘柄や、市場全体が上昇しているときに連動して上昇している銘柄など、上昇基調にある銘柄を選んで買うというのが「価格変動リスク」を減らすポイントになります。

一方で、悪材料が発表されていて下落基調を続けている銘柄や、市場全体が何らかの理由で下落しているときに連動して下落している銘柄などを信用取引で売るというのが、信用売りで「価格変動リスク」を減らすためのポイントになります。続いて、「倒産リスク」についてです。倒産が懸念されて株価が下落しているような銘柄を、株価が安いからという理由だけで買うのは大きな損失が発生するリスクが高まるためやってはいけないことです。また、こうした銘柄を短期間のつもりでレバレッジを効かせて売買することも、予想外の損失拡大につながることが考えられるためやってはいけません。

一方で、業績好調で配当などをしっかり行っているにもかかわらず倒産する、いわゆる「黒字倒産」などもありますが、これはフリーキャッシュフローをチェックすることで回避できる可能性が高まります。フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したものになりますが、フリーキャッシュフローが長期にマイナスになっている企業は黒字倒産の懸念があるかもしれないので要注意です。

最後は「換金リスク」と「流動性リスク」についてです。株式を売買する際、売り注文や買い注文の価格や数量を表示する「板(いた)」というものがありますが、この板に表示されている売り注文と買い注文の価格差が大きかったり、数量が少なかったりすることに起因して、希望どおりの売買を行うことができないリスクのことを指します。

「換金リスク」の具体例を見てみましょう。とある銘柄を500円で今すぐ売りたいと考えたとしても、板に表示されている買い注文が480円しかなかった場合、480円でしか売ることができません。そのため、実際は500円で買う人が現れるまで待つか、20円引き下げて480円で売り注文を出すことになってしまいます。

「流動性リスク」の具体例も見てみましょう。とある銘柄を500円で200株売りたいと考えたとしても、板に表示されている買い注文が500円に100株しかなかった場合、100株しか売ることができません。

これらのリスクは、毎日の売買高などを過去にさかのぼってチェックすることで軽減することができます。すなわち、日ごろの売買高が少ない銘柄は、そもそも信用取引での売買に向かないことになりますので、必ずチェックするようにしましょう。

また、とりわけ新興市場の銘柄では、人気が衰えてくると一気に売買高が減少することがありますので、人気が低下する前に返済を行うようにし、ほったらかしにしないようにしましょう。

ただ、これらのことに気をつけて銘柄を選んだり、取引を行ったりしても損失が発生することがあります。そうしたときはどのように対処すればよいのでしょうか?

それはロスカット(損切=そんぎり)を行うことです。ロスカットは、損失が発生したところでほったらかしにせず、損失が大きくなる前に損失を確定させることを言います。

ともすれば、株価に含み損が発生していても戻ってくるだろうといった希望的観測から、信用取引の期日まで損失を抱えたまま保有してしまうことがありますが、日々のコストが膨らむだけでなく、コストが膨らんだ分だけ損益分岐点が上昇し、利益につながらないことが多いためやってはいけません。

そのため、予想に反して信用取引で損失が発生した場合はロスカットを行い、損失が大きくならないようにすることが大切です。ロスカットがしっかりできるようになれば、損失を小さく抑えることができるようになりますし、損失が大きくなってしまって取引できなくなるということも回避できます。

信用取引でのリスク管理は、ここで紹介した4つのリスクに注意するとともに、ロスカットが重要ですので是非覚えておきましょう。

【第5回】はこちら

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著者/ライター
福永 博之
国際テクニカルアナリスト連盟 国際検定テクニカルアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会・前副理事長

勧角証券(現みずほ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。同社経済研究所チーフストラテジストを経て、現在、投資教育サイト「itrust(アイトラスト) by インベストラスト」を運営し、セミナー講師を務めるほか、ホームページで毎日マーケットコメントを発信。テレビ、ラジオでは、テレビ東京「モーニングサテライト」(不定期)、日経CNBC「昼エクスプレス」(月:隔週担当)、Tokyo MX「東京マーケットワイド」(火:午後担当)、ラジオ日経「ウイークエンド株」(有料番組)、「マーケットプレス」(金:午後隔週担当)、「スマートトレーダーPLUS」(木:16時~16時30分放送)などにレギュラー出演中。また、四季報オンラインやダイヤモンドZAIなどのマネー雑誌にも連載を持つ。著書には「テクニカル分析 最強の組み合わせ術」2018年6月発売(日本経済新聞出版社)、「ど素人が読める株価チャートの本」(翔泳社)などがあり、それぞれ台湾で翻訳出版され大好評。テクニカル指標の特許「注意喚起シグナル」を取得、オリジナルで開発した投資&ビジネスメモツールi-tool(アイツール)を提供中。
著者サイト:https://www.itrust.co.jp/

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