福永博之先生に聞く信用取引入門

【信用取引入門】第3回:信用取引のルールについて(仕組み、コスト)

TAGS.

【福永博之先生に聞く信用取引入門】
前回記事はこちら 第2回:信用取引とは?

*****

信用取引には現物の取引とは異なるいくつかのルールがあります。難しいものではありませんが、売買を行うにあたって覚えておく必要がありますので、詳しく解説したいと思います。

信用取引は株式の購入代金や株式を借りて売買を行いますが、信用取引には大きく2つの種類があります。1つは制度信用取引です。聞きなれない言葉ですが、制度信用取引は、上場銘柄のうち一定の基準を満たした銘柄で、取引所によって制度信用銘柄や貸借銘柄に指定された銘柄で行う取引になります。もう1つは一般信用取引です。これは原則全上場銘柄が対象となり、投資家と証券会社のあいだで条件を設定するものです。両者の違いを見ていきましょう。

まずは「返済期限」についてです。制度信用取引では、返済までの期間が最長6ヵ月となり、6ヵ月後には必ず返済をしなければなりません。一方の一般信用取引では、投資家と証券会社のあいだで返済期限を決めますが、数年から無期限とすることができるほか、IPOで新規上場した銘柄が取引所によって制度信用銘柄に指定されていなくても、取引初日から一般信用取引を使って買うことができるため、投資のチャンスを逃さずに済みます。

ただし、取引所によって貸借銘柄に指定されないと、以下のような仕組みで、信用取引で売りたいときに制限が発生します。貸借銘柄に指定されると、証券金融会社を通して証券会社が株式を借り、その借りた株式を投資家に貸し出すことができるため、ほとんどの場合で売りたいときに制度信用取引を使って売ることができます。

一方、一般信用取引の場合、証券金融会社から株式を借りることができないため、証券会社が保有している株式に限られてしまいます。証券会社が貸し出せる株式が無くなってしまうと、一般信用取引で売ることができません。そのため、売買を行う前に売りたい株が貸借銘柄に指定されているのか、そうでないのかを調べておく必要がありますので是非覚えておきましょう。

続いては「信用取引のコスト」についてです。制度信用取引と一般信用取引ともに、買建て、売建てのいずれかを行った時に金利等のコストが発生します。買建ての場合、証券会社からお金を借りて株式を購入するわけですから、借りた金額に応じて金利を支払うことになります。この買建ての金利は「買方(かいかた)金利」などと呼ばれます。

一方の売建てを行っている投資家には、「売方(うりかた)金利」などと呼ばれ、今は低金利のため0%ですが、今後金利が上昇するようですと、これを受け取ることができるようになります。また、売建ての場合、株式を借りていることから貸株料(=株式のレンタル料)を証券会社に支払います。これらのコストは毎日発生するため、期限なしで一般信用取引ができるからと安心してはいけません。

なお、制度信用取引と一般信用取引では、一般信用取引の金利の方が高くなることが多いため、この点も押さえておく必要があります。

また、金利・貸株料以外のコストについても知っておく必要があります。それは、逆日歩(ぎゃくひぶ)と呼ばれるものです。逆日歩とは、信用取引で売った時に発生するコストのことですが、通常は発生しません。どのようなときに発生するかと言うと、投資家からの信用取引を使った売りが多くなったときに発生します。

具体的には、制度信用取引で売建てを行う場合、証券金融会社が株式を貸し出しますが、その貸し出す株式が少なくなると、証券金融会社は機関投資家など株式を大量に保有している投資家に貸出しをお願いすることになります。貸出しをお願いされた機関投資家は無料で株式を貸し出すのではなく、入札によって決定された料率で貸し出します。この際に決まった料率が逆日歩として発生します。

逆日歩は、制度信用取引を使って売建てを行っている銘柄に発生するため、該当する銘柄を売り建てている投資家すべてに支払いが発生することになり、注意が必要です。売建てを行っている投資家にとっては思わぬコスト高につながることもある反面、制度信用取引を使って買建てを行っている投資家は逆日歩を受け取ることができる点や、一般信用取引では逆日歩は発生しない点も覚えておきましょう。

※図はJPXホームページより

【第4回】はこちら

【福永博之先生に聞く信用取引入門】一覧

著者/ライター
福永 博之
国際テクニカルアナリスト連盟 国際検定テクニカルアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会・前副理事長

勧角証券(現みずほ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。同社経済研究所チーフストラテジストを経て、現在、投資教育サイト「itrust(アイトラスト) by インベストラスト」を運営し、セミナー講師を務めるほか、ホームページで毎日マーケットコメントを発信。テレビ、ラジオでは、テレビ東京「モーニングサテライト」(不定期)、日経CNBC「昼エクスプレス」(月:隔週担当)、Tokyo MX「東京マーケットワイド」(火:午後担当)、ラジオ日経「ウイークエンド株」(有料番組)、「マーケットプレス」(金:午後隔週担当)、「スマートトレーダーPLUS」(木:16時~16時30分放送)などにレギュラー出演中。また、四季報オンラインやダイヤモンドZAIなどのマネー雑誌にも連載を持つ。著書には「テクニカル分析 最強の組み合わせ術」2018年6月発売(日本経済新聞出版社)、「ど素人が読める株価チャートの本」(翔泳社)などがあり、それぞれ台湾で翻訳出版され大好評。テクニカル指標の特許「注意喚起シグナル」を取得、オリジナルで開発した投資&ビジネスメモツールi-tool(アイツール)を提供中。
著者サイト:https://www.itrust.co.jp/
用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード