FRBとは?仕組みや日本に関係する理由もわかりやすく解説
FRBとは、米国で金融政策の策定に当たる理事会のことです。金利の引き上げ・引き下げや量的緩和などの決定が相場に影響を与えることがあります。
FRBの政策は、日本の株価や為替相場との関係も深いです。本記事では、FRBの仕組みや日本に与える影響について解説します。
FRBとは
FRB(連邦準備制度理事会)とは、The Federal Reserve Boardを略した言葉で、米国で金融政策の策定にあたる理事会のことです。米国の中央銀行(連邦準備銀行、Federal Reserve Bank)も、略してFRBと表現することがあるため、混同しないようにしましょう(※)。
ここではFRBとFED(連邦準備制度)の違いや、FRBの仕組みについて詳しく解説します。
※本記事では、基本的に連邦準備制度理事会を「FRB」、連邦準備銀行はそのまま「連邦準備銀行」と表記することで区別
FRBとFED(連邦準備制度)の違いとは
FED(連邦準備制度)とは、米国の中央銀行制度を指します。FEDが中央銀行の「制度」そのものを指すのに対し、FRBはFEDにおいて意思決定をする組織のことです。FEDは、FRB(連邦準備制度理事会)のほか、FOMC(連邦公開市場委員会)や連邦準備銀行で構成されています。
なお、FEDはFederal Reserve Systemの“Federal”の部分を略した言葉です。一方、頭文字をとって連邦準備制度をFRSと表現することもあります。
FRBの仕組み
FRB(連邦準備制度理事会)を構成するのは、理事7人(うち、議長1人・副議長1人)です。雇用の最大化や物価の安定が、FRBの主な使命とされています。
FRB(連邦準備制度理事会)自体は中央銀行ではありません。そのため、FRBが策定した金融政策を、中央準備銀行業務を担う各地の連邦準備銀行が実施しています。
連邦準備銀行があるのは、米国の以下12地区です。
1. ボストン
2. ニューヨーク
3. フィラデルフィア
4. クリーブランド
5. リッチモンド
6. アトランタ
7. シカゴ
8. セントルイス
9. ミネアポリス
10. カンザスシティ
11. ダラス
12. サンフランシスコ
なお、米ドル紙幣の発行も、各地の連邦準備銀行の業務とされています。
FOMCとはFRBが開く会合のこと
FOMCとは、Federal Open Market Committeeを略した言葉で、連邦公開市場委員会のことです。具体的には、FRB(連邦準備制度理事会)が米国の金融政策を決めるために開く会合を指します。
ここではFRBについて理解するため、FOMCを構成するメンバーや、FOMCの年間予定についても確認していきましょう。
FOMCを構成するメンバー
FOMCは、FRB(連邦準備制度理事会)の理事7名と、各地区の連邦準備銀行総裁(12名中5名)で構成される会合のことです。メンバー12名には、FOMCにおける投票権が与えられています。
各地区の連邦準備銀行総裁のうち、第2地区のニューヨーク連邦準備銀行の総裁は、FOMCの常任です。残り4名は、それ以外の地区の連邦準備銀行総裁から輪番制で選出されます。
なお、構成メンバーとして選出されていない地区の連邦準備銀行総裁も、投票権のないオブザーバーとして、FOMCには出席します。
FOMCの年間予定
FOMCは、年に8回開催されます(開催月は年によって変わることあり)。2024年の場合、開催日程は以下のとおりです。
・1月30〜31日
・3月19〜20日
・4月30〜5月1日
・6月11〜12日
・7月30〜31日
・9月17〜18日
・11月6〜7日
・12月17〜18日
毎回2日間に分けて開催され、終了後に声明文が発表されます。開催回によって、あわせて経済見通しが発表されることもあります。
日本銀行とFRBやFED(連邦準備制度)の違い
日本では、日本銀行がFEDやFRBの役割を果たします。日本銀行もFRBも金融政策に携わる点は共通していますが、FRBの方が地方分権は強い仕組みになっている点が主な違いです。
基本的に、米国ではFRBの理事7名と、各地区の連邦準備銀行総裁のうち5名で構成されるFOMCで政策が決められるのに対し、日本では日本銀行の政策委員会による金融政策決定会合で政策が決められます。
日本銀行の政策委員会のメンバーは、総裁1名、副総裁2名、審議委員6名の計9名です。いずれも、国会の衆議院・参議院の同意を得て内閣が任命します。
FRBが相場に影響を与えるケース
FRBが相場に影響を与える主なケースは、以下のとおりです。
・金利の引き上げや引き下げ
・量的緩和
各ケースについて、詳しく解説します。
金利の引き上げや引き下げ
FRBは、経済・物価・雇用などを調整するために、金利を引き上げたり、引き下げたりすることがあります。
例えば、FRBが金利引き上げを実施すると各銀行の貸出金利も上昇し、企業は借入による設備投資、個人は住宅購入などを抑えるため、経済活動が冷え込み、物価に押し下げ圧力が働くことが一般的です。一方、金利引き下げを実施すると貸出金利も下落し、一般的に企業や個人が資金を調達して経済が過熱化するため、物価に押し上げ圧力が働きます。
量的緩和
FRBが量的緩和(QE、Quantitative Easing)を決めることもあります。
量的緩和とは、国債などを購入することで、中央銀行が市場に供給する資金量を増やすことです。一般的に、量的緩和は金融市場の安定化や景気回復を目的に実施されます。
なお、量的緩和の対義語は、量的引き締め(QT、Quantitative Tightening)です。景気の過熱やインフレを抑制するために、FRBがQTを決断することもあります。
金融緩和の一つである量的緩和については、こちらの記事で説明していますので、併せてご参照ください。
FRBの政策が与える日本への影響は?
FRBは米国で実施される政策ですが、日本の株価や為替相場にも影響を及ぼすこともあります。それぞれに与える影響について、確認していきましょう。
株価に与える影響
FRBの金融政策で金利が上下したことにより、日本の株価に影響を及ぼすこともあります。
例えば、金利が上がり米国の経済活動が冷え込み、株価が下落すると、一般的に日本の株価も下落する傾向にあります。一方、金利が下がり米国の経済活動が過熱化し、株価が上昇すると、日本の株価も上昇する可能性があるでしょう。
為替相場へ与える影響
FRBの金融政策で金利が上下したことで、為替相場に影響を与えることもあります。
例えば、米国の金利引き上げで米ドルの魅力が高まり買われ始めると、相対的に円の価値が下がり、円安ドル高になることが一般的です。また、米国の金利引き下げで米ドルの人気が低迷し、相対的に円の価値が高まると、円高ドル安になる傾向にあります。
FRBによる金融政策例
FRBは、過去にさまざまな局面において金融政策を実施してきました。主なケースは、以下のとおりです。
・リーマンショック時
・バーナンキショック時
・コロナショック時
各局面においてFRBがどのような金融政策を実施してきたのか、詳しく解説します。
リーマンショック時
リーマンショックとは、2008年9月に米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界的な金融危機や不況につながった現象のことです。FRBは、ゼロ金利政策や3度にわたる量的緩和を実施することで、景気や物価を下支えしようとしました。
なお、FRBによる第1弾の量的緩和をQE1、第2弾をQE2、第3弾をQE3と呼びます。
バーナンキショック時
バーナンキショックとは、2013年5月にFRBのベン・バーナンキ議長が、実施中のQEを縮小する可能性を示唆したことを機に、株式市場が急落した現象のことです。混乱が生じたことなどの理由で当初見込みよりも遅れましたが、2014年10月には量的緩和政策が終了しています。
また、2015年12月にはゼロ金利政策も終了し、政策金利を引き上げています。当初、より早い時期にゼロ金利政策を終了する見込みでしたが、中国の株価急落に端を発する世界同時株安(チャイナショック)の影響で延期されていました。
コロナショック時
コロナショックとは、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済が打撃を受けた現象のことです。FRBは、コロナショックによる経済危機への対応策として、2020年3月に再びゼロ金利政策と量的緩和(QE4)を実施しました。
なお、コロナ禍で受けた経済への打撃が改善しつつあるとして、FRBは2021年11月に量的緩和の縮小、2022年3月にゼロ金利政策の終了を発表しています。
FRBとはFED(FRS)の構成機関のひとつ
FRB(連邦準備制度理事会)とは、FED(連邦準備制度)の構成機関のひとつです。また、FRBが開く会合のFOMC(連邦公開市場委員会)で、米国の金融政策が決められています。
FRBの政策が、日本の株価や為替相場に与える影響も少なくありません。今後は、FRBの発表にも注目しつつ、株価や為替相場に注目してみてはいかがでしょうか。
参考:BOARD OF GOVERNORS of the FEDERAL RESERVE SYSTEM「Structure of the Federal Reserve System」(英語)
参考:BOARD OF GOVERNORS of the FEDERAL RESERVE SYSTEM「Federal Open Market Committee」(英語)
参考:日本銀行「政策委員会とは何ですか?」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。