2024年に生まれ変わるNISA

「NISA」で子どもの教育費やマイホームの頭金を備えるのはあり?

恒久化した「新しいNISA」だからできる“ライフイベントの準備

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2024年に入り、「NISA」が変化した。かつての「つみたてNISA」「一般NISA」は、非課税で運用できる期間が定められていて、年間の投資上限額も決して大きいものではなかった。しかし、2024年から始まった「新しいNISA」は恒久的に非課税で運用できる制度となり、上限額も大幅に上がった。

さらに、「つみたて投資枠」「成長投資枠」という2つの枠が用意されたことで、これまでの「つみたてNISA」「一般NISA」とを併用できるような構造になったのだ。

この変化によって活用法の幅が広がり、“人生の三大資金”といわれる「住宅資金」「教育資金」「老後資金」を準備する手立てとなる可能性も出てきている。そこで、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに、ライフイベントを想定した「新しいNISA」の活用法を教えてもらった。

活用のポイントは2つの「投資枠」

「新しいNISAには、『つみたて投資枠』と『成長投資枠』という枠があります。この2つの枠を使い分けることで、ライフイベントに備えることができるでしょう。ただし、すべての資金を『NISA』だけで備えるのはリスクが高いので、定期預金や財形貯蓄などのリスクの低い預貯金も併用することが前提となります」(川部さん・以下同)

改めて、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の特徴を確認してみよう。

※図版作成/藤田としお・ZUNNY

2つの枠の違いは、年間投資枠・非課税保有限度額と投資できる商品だ。「つみたて投資枠」は年間投資枠が小さく、投資対象も投資信託に限定されるものの、非課税保有限度額1800万円をフルに使える。一方、「成長投資枠」だけだと非課税保有限度額は1200万円までとなるが、年間投資枠は大きく、投資信託以外に株式やETF(上場投資信託)などへの投資が可能だ。

「2つの枠の特徴を踏まえると、それぞれがどのような資金を準備するのに向いているかが見えてきます。今後の生活に必要な資金を『短期』『中期』『長期』という属性に分けて、マッチしやすい枠を考えてみましょう」

●短期のお金
毎月必要になる生活費のこと。ATMですぐに引き出せる状態にしておきたいため、「NISA」で備えるのは不向き。

●中期のお金
10~20年先の目標のために貯めるお金のこと。子どもの教育費や自宅の修繕費用などが挙げられる。定期預金や財形貯蓄、個人向け国債(変動10年)などでの運用に加えて、「つみたて投資枠」での積立投資で備える選択肢もある。

●長期のお金
老後資金など、遠い将来のために貯めるお金や、使う予定がなく貯めているお金のこと。「つみたて投資枠」「成長投資枠」を活用し、年齢や資産の大きさによっては多少リスクを取った運用も可能だろう。

10~20年後に使うお金は「つみたて投資枠」+「預貯金」で準備

「中期のお金」は、いわゆるライフイベントに使うお金といえる。「つみたて投資枠」で備えることも可能とのことだが、具体的な方法について聞いていこう。

●結婚資金
「結婚資金は収入の少ない若いうちに貯めることが多く、10~20年先という想定でもないでしょうから、『NISA』で備えるのはおすすめしません。なぜなら、短期間の投資はリスクが高くなりやすいからです。割と近い将来のためのお金なので、手堅く定期預金や財形貯蓄で形成しましょう」

●子どもの教育費
「教育資金は『中期』のお金と捉えられます。子どもが0歳のうちから大学の入学金を準備し始めれば、18年は運用できるからです。積立投資を10~20年継続すると、リスクが抑えられるというデータがあります。『つみたて投資枠』で積立投資をしながら、預貯金でも備えておくと安心です。子どもが大学や専門学校に入学する際、預貯金だけで足りない部分を『NISA』で補うようなイメージで考えていけるといいでしょう」

「NISA」に入れたお金のすべてを教育資金に回すのではなく、投資信託の一部だけ解約するイメージだ。このとき、解約するタイミングを見極めることが重要だという。

「大学や専門学校に入るギリギリに解約するのではなく、前もって解約するようにしましょう。入学ギリギリまで粘った結果、投資信託が大幅に値下がりしてしまう、ということがないとはいえないからです。子どもが高校3年生になる前後から価格をチェックし、投資信託が値上がりしたタイミングで解約してもいいでしょう。引き上げどきが重要です」

●マイホーム購入の頭金
「結婚資金と同様に、マイホーム購入は10~20年後と思って備え始める人は少ないでしょう。数年後の未来のために投資で備えるのはリスクが高いので、『NISA』ではなく預貯金で備えるほうが賢明だといえます」

●自宅の修繕・リフォーム費用
「10~20年後に自宅の修繕やリフォームが予想される場合、その費用は『中期』にあたるので、『つみたて投資枠』で準備することもできるでしょう。修繕が必要なタイミングで投資信託が値下がりする可能性も考え、『NISA』だけでなく、預貯金でも備えておくと安心です」

老後資金は「つみたて投資枠」「成長投資枠」の併用で備える

●老後資金
「老後資金は、20~30代であれば30~40年も先の未来になりますし、50~60代であっても10~20年は準備期間があるといえるので、『長期』と捉えましょう。基本的には、『つみたて投資枠』での積立投資がベースとなりますが、資金に余裕があり、寝かせているお金があれば、『成長投資枠』での投資も視野に入れてみましょう」

川部さんが特に「成長投資枠」での運用を勧めるのは、50~60代。ある程度の資金力がある世代だといえる。

「健康に働いている人であれば定期的な収入がありますし、近い将来に退職金が入るかもしれません。なかには、既に子どもが独立して教育費などはかからず、住宅ローンの返済が終わっている人もいるでしょう。そうなると、手を付けずに眠っている預貯金があったりします。このお金を『成長投資枠』に回し、株式に投資して長く運用すると、値上がり益が期待でき、配当金も入る可能性があります。10~20年運用できると考えると、多少株式のウェイトが高くても問題ないでしょう」

若い世代で、投資に割けるお金が少なかったとしても、「成長投資枠」は株式投資を経験するきっかけになるという。

「『成長投資枠』の醍醐味は、株式やETFに投資できることです。最近は10万円単位から買える株式もありますし、ETFならもっと低い金額で購入できるので、応援したい企業や業界を見つけて投資してみるのもいいでしょう。買った株式やETFを持ち続けることで、経済の動きが見えますし、配当金や分配金も非課税で受け取ることができます。投資経験も積めるので、資産形成の選択肢に株式投資も入ってくるでしょう。『つみたて投資枠』でライフイベントの資金を備えつつ、『成長投資枠』で株式投資を経験する、そんな使い分けも面白いと思います」

「そもそも『NISA』を使うかどうかで迷っているのであれば、使ってほしい」と、川部さんは話す。

「子育てやマイホームの購入などを予定していないとしても、『新しいNISA』は使ってほしいと思います。預貯金と並行して、無理のない金額での運用を継続すると、預貯金に比べてお金が増える可能性が高く、将来に対して過度な不安を抱えずにすみます。年間投資枠に下限はないので、まずは月1000円からでも始めてみましょう」

2つの枠があるからこそ、ライフプランに合わせた使い方ができる「新しいNISA」。まずは、今後どのような資金が必要になるか洗い出し、10~20年後に必要な資金を「NISA」で準備すると考えてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
著者サイト:http://kawabe.jimusho.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
用語解説

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