日本の大転換期。日本の稼ぐ力が集結したJPXプライム150 ETFが、日本株にもたらす好循環とは?

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2024年3月18日、JPXプライム150指数への連動を目指すETF「NF・JPXプライム150ETF(銘柄コード:159A)」とJPXプライム150指数先物が同時上場を果たした。

日本の稼ぐ力が集結したJPXプライム150指数に連動するETFと指数先物の上場が日本株にもたらす影響について、当ETFを提供した野村アセットマネジメントの小池CEOと、指数を開発したJPX総研の宮原社長、指数先物を上場した大阪取引所の横山社長に話を伺った。
(取材日:3月18日)

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新ステージに入った日本株市場。JPXプライム150指数による“稼ぐ力”の見える化。

――先日3月4日には日経平均株価が1989年の大納会につけた史上最高値を超え4万円に達し、日本市場がこれまでに経験したことがない新たなステージに入っていると思いますが、どのようにとらえていますか。

小池CEO:
日本経済は「失われた30年」ともいわれる長期停滞と決別し、新たな節目を迎えたと考えています。日本経済を取り巻く環境の好転は、良好な企業業績に加え、東証からの要請に応える形で、各企業が株主を意識した経営に取り組み始めたことで、国内外の投資家がようやく日本企業が変わるという期待を持ち始めたことが最大の理由だと思います。

宮原社長:
株高の背景には様々な要因があると思いますが、小池CEOのおっしゃるように、継続的な物価上昇と賃上げの高まりから、デフレ経済からの脱却に近づいていることが大きな要因の一つであると思います。今期の業績が3期連続で最高益を更新するという予想を踏まえ、日本企業が総体として本格的な成長軌道に戻るという流れも見られることから、国内外の投資家から日本市場に高い関心が寄せられています。

また、バブル期の日経平均のPERは60倍を超えている一方で、足元のPERが約16倍です。企業の稼ぐ力が高まっている中で、業績に裏付けられた株価が形成されているものと思います。海外と比較しても、米国の20倍と比較するとやや低いものの、欧州の平均と比べてもほぼ同水準となっています。

横山社長:
デリバティブについても取引が順調に拡大しており、今年に入ってからの月間取引高は1月、2月ともに前年同月を上回る状況となっています。一般に、デリバティブは株式市場に対するリスクヘッジとして機能する側面がありますので、リスクヘッジの場としてデリバティブ市場が機能していることが、株式市場の活性化に寄与している側面もあるのではないかと考えています。

――そのような相場の中、ETFと指数先物が同時上場を果たされましたが、まずは指数を開発されたJPX総研の宮原社長に、市場改革から始まったJPXプライム150指数の狙いを伺えますか。

宮原社長:
東証では2022年4月に市場区分の見直しを実施しましたが、企業が投資家の期待に応え、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、資本コストや資本収益性を十分に意識した経営が重要といった指摘がありました。そこで、2023年3月に東証から上場企業の皆様へ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。東証ではこの要請に基づく開示を定期的に確認しておりますが、2月末時点でプライム市場の約6割の企業が「開示済」あるいは「検討中」と公表しています。

このように、日本企業の価値創造経営への意識は高まってきています。2年前はプライム上場企業の半分がPBR1倍を割っていましたが、今では4割くらいに減少してきています。企業の前向きな取組みが株価にも表れてきているとも考えられますが、JPXプライム150指数は、そうした価値創造企業すなわち“稼ぐ力”を持った企業の中で、日本を代表する成長企業を見える化するものです。

JPXプライム150指数は、東証プライム市場の時価総額上位企業のうち、ROEから株主資本コストを引いたエクイティ・スプレッドと株価を1株当たり純資産で割ったPBRを活用して、財務実績や市場評価の観点で“稼ぐ力”に優れた150社を選定しています。これらの企業には引き続き、価値創造を意識した経営の先導役となって、大きな転換期を迎えた日本の株式市場ひいては日本経済全体をリードしていただくことを大いに期待しています。

※上記は、指数の銘柄選定プロセスについて単純化したイメージ図であり、全てを説明しているものではありません。
(出所)日本取引所グループのHPより野村アセットマネジメント作成

小池CEO:
指数に採用されるか否かは、上場企業にとって大きな影響があります。指数は株価の値動きを示す役割はもちろんですが、今回私共で提供を始めたETFなどの金融商品を通じて投資家の資金流入も期待できるはずです。また、投資家の円滑な資産運用の観点からは、ETF流通市場の流動性やデリバティブ市場の存在が非常に重要になってくると思います。

宮原社長:
おっしゃるとおりです。JPXプライム150指数の構成銘柄は、価値創造経営を通じた中長期での成長が期待できる企業群であると考えています。

今後更に日本企業に価値創造経営が浸透していくには、指数に選ばれた企業に対する表彰効果だけではなく、選定された企業に実際に投資資金が入ってくることで、企業が成長投資を行いやすくなり、その果実が投資家へ分配され、更に投資資金が流入する、といった価値創造経営による好循環をすべての日本企業が実感できるようになることが重要です。その意味で、今回本指数に連動するETFを上場させ、新たな投資機会をご提供いただいた野村アセット様には大変感謝しています。

小池CEO:
『資産運用立国』に貢献できる運用会社を目指している私共としても、投資家の皆様に対して、JPXプライム150指数に連動するETFに投資頂く意義をしっかりお伝えしていきたいと思います。

ETFを通じた海外からの日本株投資にも期待

――小池CEOより投資家のお話がありましたが、野村アセットは今回なぜJPXプライム150指数に連動する商品をETFで組成されたのでしょう。

小池CEO:
ETFは、個人投資家、機関投資家、海外投資家が同じ商品を購入する非常にユニークな金融商品です。日本にETFが登場した1995年に、当社は国内初のETFを上場し、マーケットをリードしてきた自負があります。現在世界のETFの純資産残高は11兆ドル(1600兆円)を超え、世界市場にアクセスするときの主要な投資ビークルとなっています。日本のETF市場も、米国、欧州に次ぐ市場となっており、日銀による買い付けを除いても、個人投資家、機関投資家、海外投資家のいずれもETFの保有は増加していますし、これからも益々活用が膨らむと思っています。

宮原社長:
野村アセット様では、タレントのカズレーザーさんを起用してETFの普及をされていらっしゃいますね。ETFは個人投資家の方も利用しやすい商品ではないでしょうか。

小池CEO:
そのとおりです。ETFは株式同様、タイムリーに売買できたり、指値や信用取引もできたり、とても使い勝手のよい商品ですが、一方で、まだまだ個人投資家の間では認知度が低いのが現状です。どんな良い商品であっても、認知されなければ、理解も売買も広がりません。我々は、ETFの国内シェアNO.1※企業として、ETFのさらなる普及に努めることも使命だと思っています。

※国内籍ETF 運用残高シェアNo.1/売買代金シェアNo.1。運用残高は2024年2月末現在、売買代金は2024年2月の月間データ

宮原社長:
それは頼もしいです。東証としても、ETFの普及に向け、個人投資家に対して東証マネ部といったweb媒体での発信や投資家セミナーの実施を通じて取り組んでいますので、ぜひこれからも協力してまいりましょう。
一方で、JPXプライム150ETFが定着するには、投資のプロである機関投資家や海外投資家からの投資も欠かせません。

小池CEO:
まさにそれが、今回当社がJPXプライム150指数への連動商品をETFで組成した重要なポイントです。「NF・JPXプライム150ETF」に対しては、機関投資家や海外の投資家からの引き合いもあると期待しています。

世界の投資家やアセットオーナーに直接話を伺うと、市場の改革への注目は高く、資本効率の改善に期待する声は大きいです。コーポレートガバナンスの拡充や株主との対話により、経営改善が進展することで、日本企業の評価が高まると考えている海外投資家は多く、改革に前向きな企業群への投資を可能にする当ETFは海外投資家のニーズの受け皿としても十分に機能すると考えています。

国内外機関投資家アンケート

(出所)2023年1/23-2/7、2024年1/23-2/7オンラインカンファレンスにおけるアンケート結果に基づき野村アセットマネジメント作成

横山社長:
私も大阪取引所の社長に就任して以来、国内外の機関投資家と活発に意見交換をしており、つい先日もヨーロッパで開催されたデリバティブのフォーラムに参加してきたところです。現地でお会いした投資家の皆様も、足元の日本市場の状況に高い関心を示しており、その中ではJPXプライム150指数の普及に期待する意見もありました。

宮原社長:
足元では日本企業の業績や株価の底上げが進んでいるところですが、中でもJPXプライム150指数構成銘柄のPBR、ROE、成長率の分布は、S&P500など欧米の主要指数と遜色のない水準です。私共としても、日本を代表する指数に育てていきたいですし、国内はもちろん、海外にもアピールしていきたいと思っています。実際に海外からの問い合わせも増えてきており、ETFを通じた投資についても検討されているように思います。今後も引き続き、JPXプライム150指数を通じて、日本株や日本市場の魅力を伝えていきたいと思います。

小池CEO:
それはぜひご一緒させていただきたいですね。当社では2022年に、「Project BRIDGE(プロジェクトブリッジ)」を立ち上げました。これは日本株に豊富な投資機会が存在することを世界の投資家に伝える架け橋となる、と同時にエンゲージメント活動を通じて日本企業の潜在的な価値を顕在化させる取り組みです。「NF・JPXプライム150ETF」は、まさにこのプロジェクトの考え方にあったETFなので、海外投資家にもしっかりアピールしたいと思います。

指数先物上場の意義

――3月18日、ETFの上場と同じくして、JPXプライム150指数先物が上場しました。指数先物が上場する意義について、横山社長にお聞きしたいと思います。

横山社長:
今回の先物上場の狙いは、JPXプライム150指数を対象とする投資信託やETFといった金融商品の組成・運用のためのヘッジ手段を機関投資家の方に提供するということにあります。JPXプライム150指数はTOPIX等の他の国内主要株価指数とは異なり、「大型・グロース」のパフォーマンス特性を持っていることから、機関投資家の方が行う精緻な運用を実現するためには、同指数を対象とした先物が必要になると考え、先物の上場に至りました。ETFを始めとするJPXプライム150指数を活用した資産運用を円滑に行っていただくための縁の下の力持ちとして、皆様にJPXプライム150指数先物をご活用いただけることを期待しております。

小池CEO:
ファンドの運用に際しても先物を利用する場合があります。JPXプライム150指数先物が上場することで、当社としてもより精緻な運用ができるため、ETFのパフォーマンスの向上につながると思います。

横山社長:
JPXプライム150指数自体や同指数を対象としたETF等の金融商品の普及が進めば進むほど、JPXプライム150指数先物に対するニーズも高まって来るものと考えております。大阪取引所としては投資家の方々へのプロモーションを継続することで、JPXプライム150指数先物の流動性向上を図り、より安心して、より効果的にご利用いただけるよう努めていきます。

日本の大転換期。ETFを通じた稼ぐ企業への投資がもたらす好循環。

――冒頭でご説明いただいた日本株ですが、海外投資家が買い越して相場上昇を主導した一方、個人投資家は売り越し基調であったことが報じられています。この点について、小池CEOはいかがお考えでしょうか。

小池CEO:
1990年代後半以降に日本が陥っていたデフレスパイラルもあり、個人投資家の投資の中心が海外資産になっていたのはやむを得なかった面もあると思います。ただ、日本株は長期パフォーマンスでは米国株に対して出遅れていたため、その上昇基調は当面続き、日経平均株価の現在の最高値の更新は通過点であろうと考えられますし、企業改革がさらに進めば、日本株の見直し余地は依然大きいでしょう。まさに日本の大転換期に新NISAも始まり、「NF・JPXプライム150ETF」をこのタイミングで上場できて本当によかったと思います。

横山社長:
小池CEOのおっしゃるとおり、新NISAの開始もあり、今年は個人投資家の投資に対する関心がより一層高まる年になると思います。新たに市場に参加する個人投資家にとってはETFのような分かりやすい商品がエントリー商品として適していると考えており、さらに投資のすそ野が広がっていくことを期待しています。また、今後個人投資家の投資が順調に拡大していくと、それに伴い金融リテラシーの高い投資家も今以上に増えてくるでしょう。デリバティブ市場を預かる立場として、そうした層がいざヘッジ手段としてデリバティブを有効活用したいという時に、JPXプライム150指数先物にも関心を持ってもらえたらと思います。

宮原社長:
当社としても、株式やETFといったリスク商品を若い人が中心に抵抗なく受け入れられていることは非常に良いことだと思っています。足元では日本株が上昇しておりますが、日本の株式市場を広範に網羅するTOPIXはまだバブル期最高値を更新しておらず、今後も成長余地は十分にあると思っています。企業の持続的な成長とその分配の果実を投資家の皆様に享受いただくためにも、取引所としてもいろいろな取り組みの中で、日本株の魅力を高めてまいります。

小池CEO:
「NF・JPXプライム150ETF」はNISAの成長投資枠の対象でもあります。
ここで改めて、「成長投資枠」の意義を考えてみていただきたいと思います。投資ではもちろんリターンを得ることは大切なのですが、私自身は「企業の成長に投資する」という発想がとても重要だと思っています。

ですから、まずは、どのような企業がJPXプライム150指数に選ばれているのか、言い換えると、日本の稼いでいる企業はどの企業なのか、そこにぜひ皆さんに注目していただきたいと思います。それらの企業の改革がさらに進み、稼ぐ企業への投資で投資家がリターンを得て、さらに価値創造を続ける企業へ投資が行われれば、理想的な好循環が生まれます。ぜひ、「NF・JPXプライム150ETF」への投資を通じて、企業の成長に投資する醍醐味を味わっていただければと思います。

――小池CEO、宮原社長、横山社長、貴重なお話ありがとうございました。

NF・JPXプライム150ETFの商品特設ページ

〈指数の著作権等について〉
JPXプライム150指数の指数値及びJPXプライム150指数に係る標章又は商標は、株式会社JPX総研又は株式会社JPX総研の関連会社(以下「JPX」という。)の知的財産であり、指数の算出、指数値の公表、利用などJPXプライム150指数に関するすべての権利・ノウハウ及びJPXプライム150指数に係る標章又は商標に関するすべての権利はJPXが有します。JPXは、JPXプライム150指数の指数値の算出又は公表の誤謬、遅延又は中断に対し、責任を負いません。本件商品は、JPXにより提供、保証又は販売されるものではなく、本件商品の設定、販売及び販売促進活動に起因するいかなる損害に対してもJPXは責任を負いません。

お話を伺った方
小池 広靖
野村アセットマネジメント CEO兼代表取締役社長
経歴:早稲田法卒。平成2年野村證券入社。令和2年野村アセットマネジメント副社長に就任。令和3年4月から現職。東京都出身。
お話を伺った方
宮原 幸一郎
JPX総研 代表取締役社長
経歴:慶應法卒。昭和54年電源開発入社。昭和63年東京証券取引所入所。令和4年4月から現職。日本取引所グループ取締役を兼務。東京都出身。
お話を伺った方
横山 隆介
大阪取引所 代表取締役社長
経歴:早稲田政経卒。昭和61年東京証券取引所入所。令和5年4月から現職。日本取引所グループ取締役を兼務。神奈川県出身。
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