米国雇用統計の株価への影響とは?株価上昇のカギを解説

提供元:Money Canvas

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株価は様々な要因によって上昇と下落を繰り返します。そして株価変動要因のひとつに米国雇用統計があります。米国雇用統計はFOMC(米国連邦公開市場委員会)の金融政策決定に大きな影響を与えるため、投資家からの注目度も高い指標です。

今回は米国雇用統計の概要と、株価や金利にどのような影響を与えるのかについて解説します。

米国雇用統計とは*1

米雇用統計とは、米国労働省が発表している米国の雇用情勢を調査した経済指標です。

米国の個人消費は米国GDP(国内総生産)の約7割を占めているので、個人の消費活動に関わる雇用情勢は経済を左右する要因となります*2

米国のGDPは世界のGDPの2割以上を占めていることから、米国雇用統計は世界中から注目されています*3

米国雇用統計は毎月第1金曜日に発表されますが、その前に為替や株価が大きく変動することは多く、特に米国雇用統計の中でも、非農業分野の就業者数や失業率はFOMC(連邦公開市場委員会)の金融政策の決定にも大きな影響を与えることから注目されています*4

FOMCとは、米国の中央銀行であるFRBが金融政策を決定する会合です。*5
FRBは政策金利の利上げ・利下げの方針や現在の景況判断をこの会合で決定します。

FRBは「国民の雇用を最大化」と「物価の安定」を目的としており、米国雇用統計はFRBの決定に大きな影響を与えます*4
FOMC会合終了後に発表される声明文や議事録は、金融政策の方向性を判断する材料になることから、投資家にとって重要な会合と言えるでしょう。

米国雇用統計で注目の項目

米雇用統計には、10以上の雇用に関するデータが含まれており、そのなかでも「非農業部門の雇用者数」「失業率」「平均時給」は、注目度の高い指標です*5,*6

以下、それぞれの指標が示している内容や、注目度が高い理由などを解説していきます。

非農業分野の雇用者数*4

非農業部門の雇用者数とは、農業部門以外の産業分野において、政府や民間企業に雇用されている人数です。
発表された雇用者数が市場予想を上回るときは、実際の景気が市場予想よりも良いことを意味します。景気が良ければ個人消費の増加が期待できるため、企業の収益が向上し株価上昇が期待できるでしょう。
反対に非農業分野の雇用者数が減少すると消費の減少が懸念されるため、株価が下がりやすいと考えられるでしょう。

失業率*6

失業率とは、米国内の失業者数を労働人口で割って算出した数値です。失業者数は「16歳以上の働く意志を持つ人たち」、労働人口は「失業者数と就業者数をあわせた数」で算出します。
失業率が高ければ「労働人口の内、失業している人数が多い」ことを意味し、個人消費が減少する懸念から株価が下がる可能性が考えられます。

平均時給*6

平均時給とは、農業部門以外の主要産業における平均時給の増減などをまとめたデータです。
平均時給をチェックすることで、個人消費の増減や企業における人件費の推移、インフレ圧力などを俯瞰できます。
一般的に平均時給が上昇すれば消費の拡大が期待できることから、株価が上がりやすくなるでしょう。

米国雇用統計が与える影響

米国雇用統計の発表内容は、FRBの政策に大きな影響を与えます。株式や金利、外国為替市場などにも大きな影響を与えることから、投資家と非常に関係が深い統計資料と言えます。
なお、米国雇用統計と市場の動きは必ずしも整合性があるとは限りません*6。米国雇用統計の内容が改善したからといって「株価が上昇する」と、安易に断定しないようにしましょう*6

株式市場*4

米国雇用統計から米国景気の底堅さが確認できると、投資家がリスクを取る姿勢が強まり、株価が上昇する傾向にあります。反対に、雇用統計の結果が市場予想を下回ると株価が下落する可能性があります。

政策金利*6

政策金利とは、景気や物価などを安定させるために各国が設定する短期金利です。米国の政策金利はFRBが設定しており、米国雇用統計はFOMCに大きな影響を与えていることから、米国雇用統計は政策金利にも影響する可能性があります。

通常の場合、雇用統計が上向き、景気が過熱していると判断されると、景気の過熱を抑えるために政策金利の引き上げが行われます。反対に雇用統計が悪化して景気が悪いと、景気を刺激するために政策金利の引き下げが行われる傾向にあります。

外国為替*6

外国為替とは、円やドルなど異なる国の通貨を交換することです。米国雇用統計は米ドルの価値の変動に影響を与えることから、外国株式への投資や為替取引をしている投資家にも大きな影響を与えると言えるでしょう。

一般的に、米国雇用統計の結果が良いと下記の流れからドルが買われやすくなり、ドル高にシフトします*6

1. 雇用統計が改善すると資金需要が増える(景気が過熱していると判断される)
2. 政策金利が引き上げられ市場金利も上がる
3. 高い金利のドルが買われやすくなる

反対に米国雇用統計の結果が悪いとドルが売られやすくなり、ドル安にシフトする傾向にあります。

実際に米国雇用統計の発表が与えた影響

2023年11月分の米国雇用統計は想定を上回り、FRBによる利下げ開始が2024年前半になると期待。
景気減速懸念が緩和されたことが追い風となり、米国の主要株価指数であるNYダウは年初来高値を更新。*7
米国雇用統計は米国市場に大きな影響を与えていることが分かります。

日本だけでなく米国の重要指標もチェックしよう

株式投資の際には、日経平均株価やTOPIXなど国内の株式指標だけでなく、米国雇用統計にも注目しましょう。
また、米国雇用統計が発表される前後は株式市場や金利が大きく変動しやすく、大きな利益を狙える一方で大きな損失を抱えるリスクもあります。

米国雇用統計は非常に重要な情報であることを念頭に置きつつ、発表前後は取引を控えるなど適切なリスク管理を図ることが大切です。

本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 三菱UFJモルガン・スタンレー証券  用語解説「米雇用統計」
*2 内閣府「世界経済の潮流2022年II」p.57
*3 内閣府「GDPの国際比較」 p.16
*4 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「世界の投資家が注目。なぜ「米国雇用統計」は重要指標なのか?」
*5 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「 解説!知っておきたい経済指標」
*6 東証マネ部「米雇用統計とはどのような指標?注目を集める理由を解説」
*7 日本経済新聞「米国株、ダウ3日続伸し157ドル高 主要3指数が年初来高値 重要日程控え様子見も」

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