福永博之先生に聞く信用取引入門

第9回:信用取引の活用3(下落相場に対応して利益をあげる)

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【福永博之先生に聞く信用取引入門】
前回記事はこちら 第8回:信用取引の活用2(資金不足をレバレッジでカバーする)

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今回は下落相場に対応して利益をあげる、信用売りの活用例について解説したいと思います。株価は常に上昇するばかりではありません。業績が悪くなれば投資家が株を売って換金することが考えられます。

長期、短期など投資スタンスに関わらず、業績が悪化すれば売られて株価が下落することになります。また、業績悪化の背景が、その企業の個別要因の場合もあれば、景気そのものが悪くなってしまい、業績の悪化につながることなどもあるでしょう。

こうした株価が売られる下落相場になったとき、信用取引の売りを活用すればそこで利益をあげることができるようになります。例えば、2013年以降、アベノミクス相場が始まったあと2024年3月22日まで上昇を続け、過去最高値を更新して取引時間中に41,087円をつけた日経平均ですが、上昇するばかりではなく過去に大幅な急落が発生して多くの投資家が損失を被る場面がありました。

それがまだ記憶に新しいリーマンショックです。当時の日経平均株価は今よりも大幅に安い18,000円台でしたが、2007年2月の取引時間中に18,300円の高値をつけたあと、翌年にアメリカのサブプライムショックが発生し、その後に当時の大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破綻して、リーマンショックと呼ばれる金融危機が発生しました。この金融危機は全世界に広がり、東京市場でも日経平均株価が取引時間中に7,000円を割る水準まで下落してしまいました。

もちろん景気も悪くなり、企業業績も大幅な赤字になったわけですが、このとき信用取引を活用して売ることができていたらどのような結果になったのでしょうか。

当時の値動きをもとに具体的に解説したいと思います。

実際にリーマン・ブラザーズが破綻したのは、2008年9月15日でした。このとき日本は3連休中で、リーマン・ブラザーズの破綻を受けて取引が始まったのは9月16日でした。この日の東京市場は、このニュースを受け605円安の11,609円で終える結果となりました。

このときの取引時間中に、日経平均のETF(コード1321、NEXT FUNDS日経225連動型上場投信)を信用取引で売ったとします。当時のETFの価格が約11,800円でしたので、保有資金を100万円と仮定して信用取引の売りをシミュレーションしてみます。

※以下、手数料、税金などの諸経費を除く

保有資金=100万円
ETF(1321)の価格=11,800円
売り建て可能口数=100万円÷11,800円÷30%(最低委託保証金率)≒282口

そこで、少し委託保証金に余裕を持たせて・・・。
11,800円で200口を売り建てしたと仮定します。

この時の売り建ての金額が11,800円×200口=2,360,000円になります。
また、委託保証金率は100万円÷236万円×100≒42.3%になりました。

その後日経平均株価が大きく下落したことから、売り建てたETF(1321)も大きく値下がりし、翌10月の取引時間中に7,120円をつけます。

ただ安値をつけたあとの反発が鈍く、相場の先行きが不透明な状態が続いていたこともあって、制度信用取引の期限となる6ヵ月ぎりぎりまで保有することにし、買い戻すタイミングを見ることにしました。

そこで、売り建ててから6カ月目に入る2009年3月2日の始値7,470円ですべて買い戻しました。
この時の買い戻しで発生した代金が7,470円×200口=1,494,000円になりますが、売り建ての代金から差し引くと‥‥。

損益=2,360,000円-1,494,000円=866,000円

が、利益として信用取引口座に入ることになります。
非常に大きな利益に見えますが、売り建てを行っているときの注意点もあります。それは、逆日歩などのコストの発生です。売り建ての場合、株券を借りて売ることから、株券のレンタル料に当たる貸株料が発生します。これは、365日発生しますので、長い期間売り建てるときは注意が必要です。

また、逆日歩とは、貸株が少なくなってきたときに、制度信用取引で売り建てしているすべての投資家に支払う必要が生じるものです。制度信用取引で売り建て玉を保有している投資家は、逆日歩の発生に注意を払う必要があるのです。

なお、制度信用取引で買い建てしている投資家は逆日歩が受け取れるため、株が信用買いされて思わぬ株価上昇になったりすることがあります。

ただ、こうした注意点を踏まえた上での信用取引の知識があれば、リーマンショックのような大きな金融危機が発生したときでも、信用取引の売りを活用することで利益をあげることができますし、資産運用の幅や選択肢が広がると言えるのではないでしょうか。

株価は上昇局面ばかりではありません。下落局面入りした場合への備えのためにも、是非、信用取引の売りを覚えておきたいところです。

【第10回】はこちら

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著者/ライター
福永 博之
国際テクニカルアナリスト連盟 国際検定テクニカルアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会・前副理事長

勧角証券(現みずほ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。同社経済研究所チーフストラテジストを経て、現在、投資教育サイト「itrust(アイトラスト) by インベストラスト」を運営し、セミナー講師を務めるほか、ホームページで毎日マーケットコメントを発信。テレビ、ラジオでは、テレビ東京「モーニングサテライト」(不定期)、日経CNBC「昼エクスプレス」(月:隔週担当)、Tokyo MX「東京マーケットワイド」(火:午後担当)、ラジオ日経「ウイークエンド株」(有料番組)、「マーケットプレス」(金:午後隔週担当)、「スマートトレーダーPLUS」(木:16時~16時30分放送)などにレギュラー出演中。また、四季報オンラインやダイヤモンドZAIなどのマネー雑誌にも連載を持つ。著書には「テクニカル分析 最強の組み合わせ術」2018年6月発売(日本経済新聞出版社)、「ど素人が読める株価チャートの本」(翔泳社)などがあり、それぞれ台湾で翻訳出版され大好評。テクニカル指標の特許「注意喚起シグナル」を取得、オリジナルで開発した投資&ビジネスメモツールi-tool(アイツール)を提供中。
著者サイト:https://www.itrust.co.jp/
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