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【JPX総研】JPXプライム150 算出開始から1年が経過しました!

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1. はじめに

・JPXプライム150指数は、ROE、株主資本コスト、PBRなどを活用して“稼ぐ力”に優れた150社を選定した指数で、昨年7月3日に算出を開始しました。指数を構成する150社の収益性や成長率の分布は、米国S&P500と比べてもそん色なく、わが国を代表する中核的な成長株の指数と言えます。

・2024年に入り、連動するETFや公募投信が誕生したほか、指数先物も上場しました。これらを通じた成長企業への投資が、企業の“稼ぐ力”の一層の強化と投資家への分配拡大といった好循環を生み、日本経済や日本市場が飛躍する。そんな日本の姿を思い描いて開発されたのがJPXプライム150指数です。

連動商品(銘柄名) 銘柄コード(ETFのみ) 運用会社
iFreeETF JPXプライム150 2017 大和アセットマネジメント
NEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信 159A 野村アセットマネジメント
iFree JPXプライム150 大和アセットマネジメント

・(指数開発の背景についてはこちら)

・算出開始前のバックテストにおいては、JPXプライム150指数は、投資期間が長いほどTOPIX対比のパフォーマンスが良くなる傾向がありました。


・今回の記事では、算出開始からの1年間を振り返りたいと思います。

2. JPXプライム150指数のこれまでのパフォーマンス

・昨年7月以降の日本の株式市場を振り返ると、コロナ禍から経済活動が正常化する中、日本企業の好調な企業業績と設備投資への意欲の高まりが寄与したことに加え、物価と賃金の好循環による約30年続いたデフレ経済からの本格的な脱却の兆しも見られました。年始以降も好調なアメリカ市場を背景に半導体株の高まりも寄与するなど、大きな上昇を遂げた1年となりました。

・算出を開始した2023年7月3日から2024年6月28日の1年間でJPXプライム150指数は、19.5%上昇しましたが、日本株の市場ベンチマークであるTOPIXの同期間の上昇率は25.6%であったため、上昇率でTOPIXを約6%下回る結果となりました。

・期間別に見てみると、昨年9月末まではJPXプライム150指数のパフォーマンスが、TOPIXを下回る状況が続き、9月末時点では上昇率で約5.5%下回る状況となりました。

・その後、12月末までの3か月は、反対にJPXプライム150指数のパフォーマンスが、TOPIXを上回る状況が続き、上昇率の差は2.6%まで縮まりました。

・年が明けてから4月中旬までは、またJPXプライム150指数のパフォーマンスが、TOPIXを下回る傾向となり、4月15日には、上昇率のマイナス幅は最大となる8.1%まで開きました。

・その後は、再度、JPXプライム150指数のパフォーマンスが、TOPIXを上回る傾向に転じ、結果、1年間の上昇率の差は先程の6%となっています。

※ いずれも配当込み指数の値

・このようにJPXプライム150指数がTOPIXを下回る時期と上回る時期が交互に生じておりますが、これはJPXプライム150指数の持つ特性が表れた結果と言えます。

・株式投資における代表的なスタイルの区分として「グロース投資」、「バリュー投資」があります。「グロース」とは、将来大きく株価が上昇すると期待されている株式銘柄で「成長株」と呼ばれることもあります。また、「バリュー」は、株価が企業価値や経済状況と比較して割安と市場から評価されている株式銘柄で「割安株」とも呼ばれます。

・JPXプライム150指数は、成長株で「グロース」のスタイルを持った大型企業で構成される指数で、グロース優位の相場ではTOPIXを上回り、バリュー優位の相場ではTOPIXを下回る傾向を持つ特性を持っています。

・この傾向を確認するため、2023年6月以降の月毎のJPXプライム150指数のTOPIXに対するパフォーマンスの超過リターンの状況を見てみたいと思います。

・上のグラフのG/Vレシオは、「TOPIXグロース指数÷TOPIXバリュー指数※」の値で、右肩上がりだとグロース優位、右肩下がりだとバリュー優位の相場であることを表しています。

※ TOPIXの構成銘柄を、PBRを基にグロースとバリューに区分した指数

・G/Vレシオが右肩下がり(バリュー優位)であった2023年6月~9月や2024年1月~3月の期間はJPXプライム150指数のパフォーマンスは、TOPIXを下回ります。一方で、G/Vレシオが右肩上がり(グロース優位)であった2023年10月~12月や2024年4月以降の期間のJPXプライム150指数のパフォーマンスは、TOPIXを上回っていることが確認できます。

・これまで説明してきたように、JPXプライム150指数は、成長株で構成されるグロースの特性を持った指数ですが、日本の株式市場のグロースとバリューの優位性を決める要因の一つとして、米国の長期金利が考えられます。

・日銀の大規模な金融緩和政策によって日本の長期金利が低く抑えられていた近年においては、米国の長期金利動向と日本の株式市場のバリュー・グロースの循環には相関が見られ、米国の長期金利が上がる際にはバリュー優位、下がる際にはグロース優位となる傾向となっています。

・下のグラフのとおり、この1年間においてもその傾向は確認でき、全体を通じて米国の金利が上昇傾向であったことに加え、日本国内においても日銀の金融緩和政策の転換への期待感から、銀行株を中心としたバリュー株が値上がりしたことで、2023年6月30日を1.00としたG/Vレシオは、2024年6月28日は0.88となり、バリュー優位の相場だったと考えられます。

3. 構成銘柄の指数への寄与度

・次に、指数の成長に寄与した上位銘柄について見ていきたいと思います。

・JPXプライム150指数及びTOPIXのパフォーマンスに寄与した上位銘柄は以下のとおりです。

・JPXプライム150指数では、日立製作所(6501)、リクルートホールディングス(6098)、東京エレクトロン(8035)が上位となりました。2024年3月期決算において、日立製作所はDX/GX(デジタルトランスフォーメーション/グリーントランスフォーメーション)需要の取込み等により増収・増益を達成し、株主還元も増大したこと、リクルートホールディングスは、国内における旅行サイト事業や人材派遣事業が好調だったことで過去最高益を達成しつつ、ROEと総還元性向の増大に向けた現預金の有効活用に関する方針を打ち出したこと、東京エレクトロンは、減収ながらも、人工知能(AI)向けの需要の高まりに伴う、半導体製造装置市場の成長への期待感から好調なパフォーマンスとなり、指数の上昇に寄与する形となりました。

・一方、TOPIXは、トヨタ自動車(7203)、日立製作所(6501)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が上位となりました。日立製作所はJPXプライム150指数でも大きく寄与した銘柄です。トヨタ自動車は好調なハイブリッド車の販売によって、2024年3月期に営業利益が過去最高益を達成し、三菱UFJフィナンシャル・グループも純利益が過去最高益を達成したことに加え、国内の金利環境から好調なパフォーマンスとなり、指数の上昇に寄与する形となりました。

・それぞれの寄与度の上位銘柄の顔ぶれが異なることが、指数のパフォーマンスの違いを生む要因となりました。

※2023年6月30日時点のウエイト×1年間の株価騰落率で算出

・また、業種別でパフォーマンスの寄与度を見たときに、寄与した業種は以下のとおりです。JPXプライム150指数・TOPIXともに電気機器が最も寄与する結果となりました。

・JPXプライム150指数は、TOPIXと比較して、銀行業/輸送用機器のウエイトが低いという構成となっており、過去1年間では銀行業、輸送用機器のパフォーマンスが良かったこともパフォーマンスの差異を生んだ要因と考えられます。

4. おわりに

・これまでの説明のとおり、JPXプライム150指数は、「グロース」のスタイルを持った成長企業で構成される指数であり、グロース相場やバリュー相場が循環する中で、“稼ぐ力”に着目して中長期的な投資対象となることを期待する指数と言えます。

・前述のとおり、日本の株式市場は、米国金利が上昇傾向であったことによって割安株優位の1年となりましたが、本国である米国は、成長株優位の1年でした。これは、米国においては成長株の収益性や投資家からの成長期待が、金利上昇による影響を上回ったからと考えられます。

・この1年間は、好調な企業業績もあって日本企業のROEやPBRの水準に改善が見られたほか、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示が、平均PBRの低い業種だけでなく、高い業種にも広がりを見せるなど、JPXプライム150指数が着目する“稼ぐ力”への関心の高まりを実感できる1年となりました。

・JPXプライム150指数の構成銘柄のPBRやROE、成長率といったクオリティについても、選定時に引き続きS&P500に匹敵する水準を維持しています。

・足もとではFRBの利下げが後ずれし、割安株優位な環境が続いていますが、今後利下げが行われれば成長株優位な環境になることも考えられます。

・こうした中、8月末にはJPXプライム150指数の構成銘柄の定期入替が行われます。昨年よりも一段高い水準での銘柄選定になると考えられますので、引き続きJPXプライム150指数にご注目ください。

(出所)Bloomberg、2024年5月31日時点の値

【関連ETF】

2017:iFreeETF JPXプライム150
159A:NEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信

【関連リンク】

JPXプライム150指数
https://www.jpx.co.jp/markets/indices/jpx-prime150/index.html

(東証マネ部!編集部)

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