【後編】三井住友トラスト・アセットマネジメントが世に送り出すのは“面白い”アクティブETF
【三井住友TAM】投資の可能性を広げる「面白いETF」を届ける運用会社
2024年3月に三井住友トラスト・アセットマネジメントが上場した「SMT ETF日本好配当株アクティブ(170A)」。予想配当利回りが相対的に高い銘柄に加え、株主還元の強化が予想される銘柄も組み込むことで、どのような相場環境にあっても利益を狙うことを目指すアクティブETFだ。
前編では、三井住友トラスト・アセットマネジメント経営企画部 主管の上坪淳一さんに「SMT ETF日本好配当株アクティブ」が組成された経緯や商品の特徴について聞いた。後編では、日本のETF市場に対して感じていることや上場を予定しているETFについて伺う。
ETF市場活性化のカギは「話題になるような面白い商品」
――上坪さんは前職も含めて15年近くETFに携わってきたと前編で伺いましたが、日本のETF市場の変化は感じますか?
「機関投資家に関しても個人投資家に関しても、ETFを活用する投資家は明らかに増えてきていると感じます。十数年前だと、個人投資家といえばデイトレーダーと呼ばれる人たちで、指数の変動率に一定の倍率をかけるレバレッジ型やインバース型を使う方がほとんどでした。機関投資家もETFを扱うところはごく一部で、使うにしても株式型のETFがほとんどだったんです。
そこから債券ETFが上場されたり、アメリカでアクティブETFが出てきたりといった変化があり、個人投資家の間でも『投機から投資へ』という考えが浸透してきたことで、ETFを活用する投資家が着実に増えているのだと思います。ただ、欧米と比べると、日本のETF市場は大きくなりきれていないと感じます」
――欧米では、ETFの残高がかなりの勢いで増えているといいますよね。
「欧米では伸びていますね。ただ、アメリカに関しては、ファイナンシャルアドバイザーという専門家が個人のお金を運用する際にETFを活用したことで伸びてきたというストーリーがあるので、日本でもまったく同じようになるとは考えていません。
一方で、アメリカの後を追うようにヨーロッパでもETFの残高が伸びているので、日本だけが伸びないということもないだろうと思います」
――今後、日本ではさらにETFが盛り上がると?
「ポイントとなるのは、日本では低コストかつインデックス型の公募投資信託が発展していることです。ETFで同じような商品を出しても、注目は集まらないだろうと思います。
ETFを盛り上げるには何が必要かというと、話題になるような面白い商品を出すことだと考えています。投資家の皆さんの関心を呼び、大きく成長していくようなETFができると、日本のETF市場もステージが一段上がると思います。面白い商品を出すという意味では、アクティブETFは起爆剤になり得るので、運用会社がそこをいかに活かしていくかが大事になるだろうと感じています」
いままでにない「テーマ型ETF」「J-REIT ETF」を上場予定
――三井住友トラスト・アセットマネジメントでも、「面白い商品」の上場の予定があったりするのでしょうか?
「実は、『SMT ETF日本株厳選投資アクティブ(257A)』『SMT ETF国内リート厳選投資アクティブ(258A)』という2本のアクティブETFの上場を9月24日に予定しています。『SMT ETF日本株厳選投資アクティブ』は『SMT ETF日本好配当株アクティブ』と同時進行で検討していたもので、いわゆる『テーマ型』です。
一般的に『テーマ型』は特定のテーマに沿った投資を行うもので、そのときどきで組み入れ銘柄は変わりますが、テーマ自体は変わりません。しかし、我々が予定しているものは、ファンドマネージャーやアナリストが議論しながら、時代に合わせてテーマ自体を変えていくというETFです。選定される投資テーマは中長期的に継続すると思われる構造変化に着目しており、2024年6月末現在では、「ヘルスケア」、「IT」、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」、「新興国消費」、「インフラ高度化」、「ジャパンオリジナル」、「半導体」の8つの投資テーマを基に運用しています。今後さらにホットな業界やキーワードが出てくるごとにテーマを変えていくことになりますし、テーマの変更に合わせて組み入れ銘柄も変わります」
――投資家自身がアンテナを張って社会情勢などをリサーチしなくても、ETFがトレンドを追ってくれるということですね。時代に合わせてテーマが変わるのは投資家にとってありがたいですが、あまり聞いたことがない仕組みです。
「類似のファンドはないかと思います。ただ、まったく新しいものというわけではなく、『SMT ETF日本好配当株アクティブ』と同様にファミリーファンド方式を採用していて、マザーファンドは20年ほどの運用実績があります。その数字を見たうえで、活用を検討していただけたらうれしいですね」
――テーマが変わる「テーマ型」は注目を集めそうですね。もう1本、『SMT ETF国内リート厳選投資アクティブ』はどのようなETFですか?
「J-REIT(不動産投資信託)のETFです。J-REITに投資するETFや公募投資信託のほとんどがインデックス型のなかで、アクティブETFを出そうと考えています。
ファンドマネージャーやアナリストが手をかけて銘柄を選定していくとなると、インデックス型よりも銘柄を増やすようなイメージを抱くかもしれませんが、我々は好調に推移している銘柄に絞って数を減らすことによって、高いパフォーマンスを狙おうと考えています。このような形のJ-REIT ETFは世のなかにまだないと思うので、興味を持っていただけるのではないかと思っています」
――いままでに聞いたことがないETFが2本も上場されるのが楽しみです。
改めて日本株に興味を抱くきっかけになる「アクティブETF」
――改めて、上坪さんが思うETFの魅力を教えてください。
「ETFには、相対的に低コストであることや組み入れ銘柄が開示されていることに加え、市場が開いている時間にいつでも売買できるという魅力があります。以前の低調な時代と比べると最近は株価の値動きが出てきているので、そこも加味したうえで取り引きできるという点は、公募投資信託にはないETF固有のメリットです。
かつて、アメリカでトランプ元大統領の当選が確定したときやイギリスのEU離脱(ブレグジット)の結果が出たときは、ちょうど東京証券取引所が開いている時間だったこともあり、かなりの勢いで相場が動きました。そのようなときに、ETFを活用して利益を狙うということもできます」
――リアルタイムで売買できるETFだからこそ、投資手法の幅も広げられるということですよね。
「そうですね。あと、将来への期待も込めて、ETFは面白い商品が出てくる可能性が高いという魅力もあると伝えたいです。アクティブETFをはじめ、投資家の皆様の選択の幅を広げるような商品が出てくると感じています。アクティブETFが上場された際に、業界の人の予想を上回る反響があったように、面白くて画期的なものは投資家からの注目を集めますし、ETFはそういうものになり得ると思います」
――実際にいままでになかった観点のETFも出ていますし、今後も楽しみですね。最後になりますが、個人投資家に届けたいメッセージは?
「日本株に目を向けてみましょう、と伝えたいです。オール・カントリー(全世界株式)やS&P500への投資を否定するところはありませんが、もし別の投資にも興味が湧いたら、日本株もチェックしてほしいと思います。日本株に投資することで、社名を見たときにイメージが湧くようになり、日々の生活の変化を実感しやすくなるという利点と面白さがあります。
個別株や日経225に連動する公募投資信託の情報を見る方法もいいですが、ETFであれば組み入れ銘柄がすべて公開されています。どのような会社が組み入れられているかチェックし、国内の会社を知るところから始めるのもいいでしょう。ぜひ、自分が住んでいる国にも目を向けてみてください」
ETFの認知度が上がっているいま、三井住友トラスト・アセットマネジメントが上場するETFのようなこれまでになかった「面白いETF」が出てくると、さらに注目を集めるだろう。今後のアクティブETFからも目が離せない。
(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)