自分のお金は自分で守る!リスクへの対処法を解説

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年々金融リテラシーの重要性が高まっています。皆さん、金融リテラシーを身につけていますか?本連載では、大阪公立大学・北野友士准教授のご著書である「学生に読んでほしい お金の攻略本」の内容を全6回に分けて紹介しながら、皆さんと一緒に金融リテラシーについて学んでいきます。

第4回で紹介するのは、お金にまつわる「リスク」についてです。リスクの考え方や対処法などを理解し、自分のお金をしっかり守りましょう。

(第3回はこちら

リスクの考え方

「怖い」「危険」などのイメージがある、以下の項目からリスクについて考えてみましょう。

1.保有している株式の価値が下落するおそれ
2.家が火事で焼失するおそれ
3.サッカーをプレーしていてケガをするおそれ
4.宇宙人が攻めてきて地球を滅ぼすおそれ

いずれも起きてほしくない事象である点は共通していますが、ファイナンス分野における「リスク」と呼べるのは1〜3です。4を「リスク」と呼べないのは、宇宙人が攻めてきて地球が滅ぼされた記録は今までになく、確率を求めようがないためです。

一般的に、「宇宙人が攻めてきて地球を滅ぼすおそれ」のように発生する確率すら求められない事象「不確実性」と、確率を求められる「リスク」は区別されます。ここから、リスクの概要や確率・損失との関係、具体的な対処法について紹介します。

リスクとは

リスクとは、危険の発生する確率がある程度わかるもののことです。

例えば、「保有している株式の価値が下落する確率」は、過去の相場などを参考にしてある程度計算できます。また、「家が火事で焼失する確率」は住宅の個数に対する火災の発生件数など、「サッカーをプレーしていてケガをする確率」はサッカーをプレーした経験のある人に対するアンケート調査などで計算できるでしょう。

ある程度確率がわかっていれば、分散投資をする(保有している株式の価値が下落する可能性に対応)などの対策で、ある程度危険に備えられます。それに対し、「宇宙人が攻めてくること」は、どのような確率で何が起こるかがまったくわからないため、備えることが困難です。

リスクと確率・損失の関係

リスクに対処する際は、発生する「確率」と発生した際の「損失」に基づいて考えることが基本です。その際、リスクマップを作成すると、より理解しやすくなります。

リスクマップとは、横軸に発生する「確率」をとり、縦軸に発生した場合の損失をとります。作成する際は、以下のように4つの象限に分けるとよいでしょう。

1.「確率」高・「損失」大(図の右上)
2.「確率」高・「損失」小(図の右下)
3.「確率」低・「損失」大(図の左上)
4.「確率」低・「損失」小(図の左下)

1の具体例は、「麻薬に手を出して薬物中毒になるリスク」「危険な場所へ行って命を落とすリスク」などです。また、2の具体例として「学生時代にアルバイトのし過ぎで単位を落とすリスク」が挙げられます。

3の具体例は、「自転車で他人を死傷させるリスク」などです。4の具体例には、「歩行中に膝をすりむくリスク」などが挙げられます。

リスクへの4つの対処法

発生する「確率」や「発生」した場合の損失に応じて、リスクへの対処法を考えます。対処法は、主に以下の4つです。

1.回避(「確率」高・「損失」大)
2.予防(「確率」高・「損失」小)
3.移転(「確率」低・「損失」大)
4.保有(「確率」低・「損失」小)

「危険な場所に行って命を落とすリスク」のように、「確率」高・「損失」大のリスクに対しては、実行すると取り返しがつかなくなる行為は避ける(回避)べきです。

それに対し、「確率」高・「損失」小のリスクについては、発生する「確率」そのものを下げる「予防」をとります。例えば、「学生時代にアルバイトのし過ぎで単位を落とすリスク」に対しては、授業と両立できる範囲でのアルバイトにとどめるとよいでしょう。

「確率」低・「損失」大のリスクに対しては、損失を肩代わりしてもらう「移転」をとります。自転車損害賠償責任保険への加入は、自転車で他人を死傷させてしまい、支払いを命じられた損害賠償額を肩代わりしてもらう対処法の具体例です。

「確率」低・「損失」小のリスクに対しては、リスクそのものを受け入れる「保有」をとります。例えば、歩いているときに膝をすりむくことは頻繁に起こりえません。万が一ケガをしたとしても、特別な事情がない限りは患部の消毒・絆創膏の貼り付けなどで対応できるでしょう。

理解しておきたい保険の仕組み

我々の生活には、発生確率は低くても起きると支障をきたすリスクが常に付きまといます。保険とは、このようなリスクに備え、みんなで少しずつお金(保険料)を出し合ってプールし、不幸にもリスクに見舞われた人に対して保険金を渡す仕組みのものです。保険加入者から集めた保険料は保険会社が管理・運用し、保険金の支払いに備えています。

ここから、自動車保険や火災保険の仕組みについて、確認していきましょう。

自動車保険の仕組み

自動車保険には、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と任意保険があります。

自賠責保険とは、事故を起こした際に死傷させた相手に対する損害賠償をするため、自動車などに乗る人が強制的に加入しなければならない保険のことです。自賠責保険の限度額は、相手を死亡させた場合で最大3,000万円、高度障害などを負わせた場合に最大4,000万円、障害を負わせた場合に最大120万円とされています。

しかし、実際に1億円を超えるような対人賠償額が発生することがあるでしょう。また、自賠責保険では、他人の器物を損壊した際の損害賠償や、事故で自社が故障した際の修理費用には対応していません。そこで、自賠責保険でカバーされていない部分に対応するため、任意保険への加入が必要です。

車を運転する際は、必ず安全運転を心がけること、自動車保険の契約内容を確認することを意識しましょう。

火災保険の仕組み

一般的に、賃貸契約を結ぶにあたってほぼ強制的に火災保険に加入しなければなりません(*)。火災保険とは、火災に限らず水漏れや物体の衝突など、住宅にまつわるさまざまなリスクをカバーした保険です。

保険によって、盗難などによる被害も補償対象に含まれることもあります。加入時には、自動車保険と同様に、必ず契約内容を確認しましょう。

*持ち家の場合は原則として必須ではありませんが、住宅ローンを契約する際に加入を求められることがあります。また、リスクを考慮して加入を検討することが一般的です。

賃貸契約における重要事項説明書のポイント

賃貸契約を締結する際は、重要事項説明書をしっかり確認しなければなりません。主なポイントは、以下の通りです。

・禁止事項・設備・管理委託先を確認する
・更新料・退去予告・特約を確認する

これらを確認することで、さまざまな賃貸トラブルをある程度予防できるでしょう。それぞれ解説します。

禁止事項・設備・管理委託先を確認する

日常生活を送るうえで、重要事項説明書の「禁止事項」「設備」「管理委託先」を確認することが大切です。

「禁止事項」には日常生活に基づいたこと(ペット飼育や楽器の使用など)、「設備」には借りる部屋やマンションの共有部の整備状況が書かれています。ただし、「設備」については文書で確認するだけでなく、事前に物件を見せてもらうこと(内見)が大切です。

「管理委託先」には、管理会社の名前や電話番号が書かれています。雨漏りや隣人問題など、入居中にトラブルが生じた際にどこに連絡すればよいかわからない場合は、重要事項説明書の「管理委託先」をチェックしましょう。

更新料・退去予告・特約を確認する

「更新料」「退去予告」「特約」は、賃貸契約の更新時や退去時に重要な項目です。

多くの賃貸物件で、2年の更新期間が設けられています。「更新料」(更新手数料)が重要事項説明書に記載されている場合、更新時に家賃とは別に所定の金額を支払わなければなりません。

「退去予告」は、退去する際に、その旨を契約解除のどれくらい前に連絡しなければならないかを定めた項目です。引越しのタイミングと合わせるために、あらかじめ確認しておかなければなりません。

「特約」には、原状回復に関連することが記載されていることがあります。原状回復義務とは、借主が通常ではない使用方法によって生じさせた傷などを修復することです。

本来、賃借人は通常の使用で生じた損耗や経年変化について、回復する義務を負いません。しかし、「特約」に記載されていれば、通常の利用方法による損傷でも費用を請求される可能性があるため、注意が必要です。

あやしい儲け話に注意

自分の大切なお金を守るために、あやしい儲け話にはくれぐれも注意しなければなりません。ただし、普通に生活していても、悪質な業者が願望や欲望を見透かして金銭を騙し取ったり、法外な契約を結ばせたりしようと近づいてくることがあるでしょう。

ここから、あやしい儲け話の見分け方や、万が一あやしい業者と契約してしまった場合の対応を紹介します。

あやしい儲け話の見分け方

あやしい儲け話の見分け方、対処法は主に以下の通りです。

・「絶対儲かる」を信じない
・リスクを説明しない相手とは取引しない
・自分が仕組みを理解できないものに手を出さない
・自分では内容がよくわからないけれど興味が持てる内容であれば、信頼できる第三者の専門家に相談する
・どうしてもやってみたいのであれば、借金をせず、損してもダメージにならない範囲でやる

悪質な業者との取引や不利な条件での契約に気づいたら、必ず「回避」を選択しましょう。

あやしい業者と契約してしまった場合は?

どれだけ気をつけていても、言葉巧みに近づいてきた悪質な業者と何かの拍子で契約してしまうことがあります。万が一あやしい業者と契約してしまった場合は、クーリングオフ制度を利用しましょう。

クーリングオフとは、一旦契約したものの冷静に考えて契約を思い直した場合に、一定期間内であれば消費者側から契約の取り消しを求められる制度です。通常は8日以内がクーリングオフ期間ですが、連鎖販売(いわゆるマルチ商法)などは20日とより長めに設定されています。

クーリングオフの期間をすでに過ぎている場合は、消費者契約法に基づく契約の取り消しを検討してください。消費者契約法に基づく契約の取り消しは、業者側が情報量や交渉力の格差を利用し、消費者に不利益を与えた際に適用されます。

契約する際はリスクを十分に検討しよう

今回は、大阪公立大学・北野友士准教授の「学生に読んでほしい お金の攻略本」の第4章、「もう大学生ー自分のお金は自分で守るー」の内容を紹介しました。

自分の大切なお金を守るためには、リスクを理解することが重要です。リスクへの対処法は、確率や損失の程度によっても異なります。

例えば、交通事故のように確率が低く、損失が大きいリスクに対する基本的な対処法は、保険契約のように損失を肩代わりしてもらう「移転」です。ただし、保険の契約をする際は、どこまでのリスクをカバーしているのか、契約内容をしっかりと確認しましょう。

また、確率が高く損失が大きいリスクについての対処法は、「回避」です。とくに、根拠のないあやしい儲け話が来たら、必ず回避することが大切です。

*本記事は、こちらの第4章をもとに作成しています。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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