税金・社会保険の基礎を理解しよう!103万円の壁も解説

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年々金融リテラシーの重要性が高まっています。皆さん、金融リテラシーを身につけていますか?本連載では、大阪公立大学・北野友士准教授のご著書である「学生に読んでほしい お金の攻略本」の内容を全6回に分けて紹介しながら、皆さんと一緒に金融リテラシーについて学んでいきます。

第5回で紹介するのは、税金や社会保険についてです。社会人として欠かせない知識について、ここでしっかり理解しておきましょう。

(第4回はこちら

年収103万円の壁とは?

年収には、「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」と呼ばれるものがあります。「103万円の壁」が本人や扶養者の所得税の負担、扶養手当の廃止が生じる境目であるのに対し、「106万円の壁」や「130万円の壁」は厚生年金などの社会保険料を負担する必要が生じる境目のことです。

年収103万円の壁を理解するには、まず所得控除の仕組みも把握しておかなければなりません。所得控除の概要を説明してから、103万円の壁と扶養控除の関係についても解説します。

所得控除とは

所得控除とは、収入のうち一定の金額について所得税を免除する制度のことです。基礎控除や扶養控除など、合計15種類の所得控除があります。

基礎控除とは、給与所得者だけでなく、所得を得ているすべての人に年間48万円の所得控除が適用される制度です。そのため、年間48万円までの所得に対しては、基本的に所得税がかかりません。

厳密には所得控除ではありませんが、会社員などには給与所得控除も認められています。給与所得控除とは、正社員やパート・アルバイトのように賃金や給与を受け取っている人に概算で認められている、費用としての控除額のことです。給与が増えれば増えるほど、給与所得控除の額も増えます。

給与所得控除の最低額は55万円のため、基礎控除額48万円と合計すると103万円です。つまり、給与所得者の場合は年収が103万円を超えると、課税所得金額が発生して所得税がかかることになります。

103万円の壁と扶養控除の関係

とくに扶養控除を考える場面において、103万円の壁が重要な意味を持ちます。扶養控除とは、扶養親族がいる場合に、一定の額の所得控除が認められる制度のことです。

例えば、19〜23歳の特定扶養親族(例:大学生)を扶養している保護者は、63万円の扶養控除を適用できます。ただし、扶養控除が認められるためには、その大学生の年収が原則として103万円以下(所得0円)であることが条件です。

万が一、アルバイトなどで大学生の年収が103万円を超えると、大学生自身に所得税がかかるだけでなく、扶養している保護者が納付すべき所得税額も増えることになります。

社会保険の基礎知識

社会保険とは、国民の健康や暮らしを守るために、国が運営する保険制度のことです。ここから、社会保険の種類や社会保険が必要とされる理由について解説します。

社会保険の種類

社会保険とは、一般的に以下5つの保険のことです。

・医療保険(健康保険)
・介護保険
・年金保険
・労災保険(労働災害保険)
・雇用保険

医療保険とは、国民の健康を守るための公的な保険です。医療保険があることで、病気やケガなどで医療機関を受診した際にかかる医療費を一定額の自己負担に抑えられます。

介護保険とは、病気やケガなどで要介護認定を受けた場合に、介護サービスや福祉用具の貸与・住宅回収費用の補助を受けられる公的保険です。年金保険は、老齢になる場合、扶養者である被保険者の死亡で遺族になる場合、病気やケガで一定の障害を持つ場合などに生活保障のための収入(年金)が支給される公的保険を指します。

労災保険とは、勤務中や通勤中の病気やケガで生じる治療費の負担や、求職中の賃金などを補償する公的保険です。雇用保険は、失業中の求職者に対して求職者給付や職業訓練を実施したり、職業訓練給付を行ったりする公的保険を指します。

社会保険が求められる理由

強制保険である社会保険が必要とされるのは、民間の保険会社では公的な保険の運用が困難なためです。民間で公的保険を運用すると、モラルハザードを助長しかねません。

また、社会全体の安定を保つための費用を、社会を構成する全員で負担するためにも、社会保険が必要です。社会保険は、相互扶助の精神により社会全体の安定を保つために必要な仕組みといえます。

公的年金の基礎知識

国民年金などの公的年金は、長生きのリスク、障害を負うリスク、遺族が負うリスクに対応した社会保険のことです。

長生きのリスクに対応した老後にもらえる国民年金のことを、老齢基礎年金と呼びます。老齢基礎年金を受け取るためには、原則として加入義務のある期間のうち、保険料の納付済期間などが10年以上あるなどの条件を満たさなければなりません。

なお、国民年金の加入を前提として、障害を負った場合に給付を受けられる障害基礎年金も存在します。

不動産を相続した場合の選択肢

将来、親族に不幸があって不動産を相続することもあるでしょう。不動産を相続した場合に取りうる選択肢は、主に以下の通りです。

・しばらく放置する
・相続を放棄する
・売却する
・他人に貸し付ける

しかし、「しばらく放置する」は選択してはなりません。なぜなら、相続することで不動産を管理する義務を負ううえに、固定資産税も払い続けなければならないためです。

そこで、「しばらく放置する」以外の選択肢について解説します。

相続を放棄する

相続を放棄した場合、不動産はほかの相続人が相続することになります(ほかに相続人がいない場合は国庫に帰属)。ただし、不動産の最終的な帰属先が決まるまでは、相続を放棄する場合でも不動産を管理する義務を負う点に注意が必要です。

また、相続放棄するには、相続の開始を知った日から3か月以内に申告しなければなりません。期限を過ぎると、原則として放棄はできなくなります。

売却する

売却する場合、不動産業者に相談して買い手を探してもらう(仲介してもらう)ことが一般的です。土地・住宅に価値があれば、比較的スムーズに売却できます。

しかし、不便な場所にある土地や建物を売却する場合は、買い手を見つけるのに時間を要する点に注意が必要です。建物の状況によっては、土地をスムーズに売却するために自費で解体し、更地にすることを決断する場合もあります。

他人に貸し付ける

他人に貸し付ける場合も、相手が見つかるかどうかは立地条件などに左右されます。また、自分が居住しないにもかかわらず固定資産税を払い続けたり、不動産を管理したりしなければならないため、他人に貸し付けることは最も面倒な選択肢と言えるでしょう。

一方で、不動産は商品やサービスのように「生産」できない貴重な資源でもあります。そのため、不動産を有効活用してくれる人に借りてもらえるような力を身につけておくことが大切です。

不動産を有効活用する5つの方法

相続した不動産を他人に貸せば、家賃や地代などの定期収入をもたらします。ただし、そのためには魅力的な不動産にすることを考えなければなりません。

不動産を有効活用するための方法は、主に以下の5つです。

・自己建設方式
・事業受託方式
・定期借地権方式
・等価交換方式
・土地信託方式

それぞれの概要を紹介します。

自己建設方式

自己建設方式とは、自らの土地を活用して、不動産経営の計画から運営管理までを一貫して進める手法です。

自己建設方式は自分でリスクをとる分、時間や手間がかかります。一方で、自分でやりたいようにやれる点、不動産から得られる収益をすべて自分のものにできる点などがメリットです。

なお、不動産経営の一部を不動産管理会社に任せるケースもあります。

事業受託方式

事業受託方式とは、土地所有者がデベロッパー(土地の開発業者)などに建物の建築と運営を委託する手法です。デベロッパーが、事業の企画、資金計画、建物の設計・施行・監理、テナントの募集、建物の管理・運営などを総合的に請け負います。

事業受託方式を選択すれば、建築費用を土地所有者が負担しなければならない点に注意が必要です。

定期借地権方式

定期借地権方式とは、土地所有者がデベロッパーに一定期間にわたって土地を利用する権利(定期借地権)を与え、デベロッパーが建物を建築して運営する手法です。

定期借地権方式では、土地所有者は建設費を負担する必要がありません。その分、収入も借地権の設定による地代に限られます。

なお、定期借地権は10年以上で設定され、借地期間終了後は更地で返還されることが一般的です。

等価交換方式

等価交換方式とは、土地所有者は土地、デベロッパーは建物の建設資金をそれぞれ出資し、共同で不動産事業を営む手法です。

等価交換方式は、デベロッパーが建物の建設費を負担し、自分は賃貸収入を得られる点や、土地の所有権をある程度確保できる点がメリットです。ただし、土地の権利関係が複雑化するというデメリットもあります。

土地信託方式

土地信託方式とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、受託者である信託銀行が資金調達・建築・賃貸事業などを実施する手法です。受益者である土地所有者は、不動産による収益を信託配当として受け取ります。

土地信託方式では、土地を信託した時点で所有権が信託銀行に移転する点に注意が必要です。また、実績配当のため、配当が必ずもらえる保証はありません。

不動産活用を進める際のポイント

不動産活用を進める際は、あらかじめ第三者の不動産鑑定士に依頼して不動産の価値を確認しておくことがポイントです。

一般的に、不動産の有効活用は、自己負担が大きければ大きいほど収益率が高く、デベロッパーに任せて手間がかからない方法ほど収益率が低くなる傾向にあります。ただし、不動産に関する専門知識や経験がない場合は、何らかの形でデベロッパーに頼ることになるでしょう。

適切な不動産価値を知ったうえでデベロッパーと交渉すれば、相手が信頼できるか見極めやすくなります。例えば、自分で把握している不動産価値よりも極端に低い評価を提示してくるデベロッパーは、信頼できない可能性が高いです。

税金や社会保険を意識して生活しよう

今回は、大阪公立大学・北野友士准教授の「学生に読んでほしい お金の攻略本」の第5章、「学生が気をつけたい税金や社会保険の知識」の内容を紹介しました。

年収103万円の壁や所得控除の仕組みを理解しておけば、自分にどれくらいの税金がかかるのかを把握しやすくなります。また、将来のリスクに備えて、社会保険のことも知っておくことが大切です。

この機会に、あらためて自分が支払っている税金や、社会保険の内容について確認してみてはいかがでしょうか。

*本記事は、こちらの第5章をもとに作成しています。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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