「投資」や「助成制度」を活用して無理のない準備を

“お金のプロ”夫婦に聞く「教育費の備え方」の話

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“人生の3大支出”のひとつといわれる「教育費」。子ども1人につき、少なくとも1000万円はかかるといわれているが、どのように備えていくといいだろうか。

前回は、教育資金の備え方を解説した1冊『NISA、保険、助成金もスッキリ分かる 子どもにかかるお金大全』の著者である“お金のプロ”夫婦、ファイナンシャルプランナーの寺澤真奈美さんと投資・ビジネス書作家の寺澤伸洋さんに、教育費や生活費との向き合い方について伺った。

今回は、寺澤夫妻が実際に行っている教育費の備え方や子育て世帯なら押さえておきたいポイントを聞く。

教育費上昇に備えて「NISA」を活用

教育費の備え方は「貯金する」「学資保険に入る」など、さまざまな方法が考えられるが、寺澤夫妻が実践しているのは「投資で貯める」。

「小さいお子さんがいる家庭でしたら、まずNISAを始めてほしいと思います。また、お子さんがある程度大きかったとしても、生活費に余裕があればNISAに回すことをおすすめします。なぜ投資をすすめるかというと、教育費は少しずつ上がっているからです。『失われた30年』といわれる90年代から現在までの間に、国立大学の授業料は約33万円から約53万円、私立大学は約57万円から約87万円に上がっています」(真奈美さん)

子どもが大学進学を迎える頃には、さらに授業料が上がっている可能性がある。ほとんど利息がつかない銀行預金で備えていると、対応できないかもしれないのだ。

「最低限の教育費1000万円は、子どもが0歳から18歳になるまでの間、年間約56万円、月々4万7000円ほどを積み立てていけば達成できます。しかし、この金額をNISAで運用すれば、1000万円以上に増える可能性があるので、子どもが『私立大学に行きたい』『留学したい』と話してくれたときに背中を押しやすくなるでしょう」(真奈美さん)

「月5万円を銀行で積立貯金した場合と、年利5%で投資運用した場合を比べると、19年後には554万円もの差が生まれます。成果を得るためには、毎月一定額をコツコツ積立投資し、一時的に価格が下がったとしても買い続けることが大切です。また、NISAは投資で得た利益のすべてが非課税になるという大きなメリットがあります」(伸洋さん)

ちなみに、寺澤夫妻は全世界株式に連動するインデックス型の投資信託を中心に投資を行っているそう。さまざまな株式を組み合わせている投資信託は、個別株とは異なり倒産することがないため、安定した運用を実現しやすい。

「かつては米国のIT企業の個別株に投資し、株価の動きに翻弄されるという投資をしていたこともありますが、家庭がある状況で高いリスクを取るのは危険ですよね。無理せずに生活費のなかで余ったお金をNISAに回し、コツコツと長く運用することが重要だと考えています」(伸洋さん)

「投資に対して不安感がある人は、身の回りで投資をしている人を見つけてみるといいと思います。その人からリアルな話を聞くと、やってみようかなと思えるはずです。私も、15年ほど運用している人から『毎月積み立てた結果、1000万円が3000万円になった』という話を聞き、投資に興味を持ちました。また、長く継続すると値動きが平坦になっていくので、価格が右肩上がりの状態であればプラスに傾きやすいということもわかってきます。まずは経験者に話を聞いてみましょう」(真奈美さん)

自治体が実施している「助成制度」の活用がカギ

教育費を備えるには、日々の生活費の見直しや投資運用に加え、自治体が実施している制度を活用することも重要とのこと。

「子どもに関する補助金や助成金はいろいろあります。例えば、出産した際には『出産・子育て応援交付金』『出産手当金』『出産育児一時金』などを受け取ることができます。小・中学生になると、所得が一定額を下回っている家庭は『就学援助制度』を利用可能です。高校生を対象とした『高等学校等就学支援金』や高校・大学受験のための支援制度もあるので、収入が少ないからといって子どもの教育を諦めることはありません」(真奈美さん)

「東京都では、都内在住の0~18歳の子どもを対象に月額5000円を支給する『018サポート』を実施しています。各自治体で独自の助成制度を実施していることがあるので、住んでいる地域で調べることも大切です。また、ほとんどの制度は役所などで申請しなければ利用することができません。子どもがいる家庭は自動的にサポートを受けられるというわけではないので、自らアクションを起こしましょう」(伸洋さん)

「申請しなければ支給されない」という点で注意が必要なのが「児童手当」だという。

「出生と同時に申請、受給できる子育て支援金『児童手当』は2024年10月から所得制限が撤廃され、支給期間も中学生以下から高校生年代に延長されました。3歳未満は月額1万5000円、3歳以上は月額1万円(第3子以降は一律月額3万円)が支給されます。金額が大きいですし、10月の大幅拡充で活用できる家庭も増えた重要な制度といえます。ただし、申請しなければ支給されないので、忘れずに行いましょう」(真奈美さん)

さまざまな助成制度があるが、「児童手当」のようにその内容は年々変化するという。最新の情報をキャッチすることが重要だ。

「助成制度は、住んでいる地域の役所に行って聞けばすぐに教えてもらえます。制度内容や支給額は年々変わっていくため複雑に感じるかもしれませんが、申請するとしないとで大きな差が出てくるので、まずは聞きに行ってみましょう」(伸洋さん)

「自治体によっては、助成制度をまとめた特設サイトを設けているところもあります。また、意外と見逃せないのが市報です。自治体が実施している制度について、まとめてわかりやすく書いてあるので、知らなかった制度に出会えるはずです。私もつい最近、市報で自転車用ヘルメットの購入費補助金を見つけました。助成制度以外に、自治体が行っている電子決済キャンペーンの情報なども載っているので、日々の節約に役立ちますよ」(真奈美さん)

親子で「教育」について話すことも教育費見直しのきっかけに

ここまで教育費の備え方について聞いてきたが、寺澤夫妻は「『教育費は親が負担するもの』という考えに縛られなくてもいいのではないか」と話す。

「子どもにも教育費や生活費について伝えたうえで、ちょっと協力してもらうのもいいのではないかと思います。例えば、大学の学費は親が出し、遊びに行くお金は子ども自身に支払ってもらうなど、お金の線引きをするのもひとつの方法です。親子で話し合って決めていくことも、大切なステップだと感じます」(伸洋さん)

「お小遣い制度は、そのための準備になるかもしれません。お小遣いのなかでやりくりするようになり、その経験は社会に出て給料を受け取るようになってからも役立ちますよね。実は我が家はお小遣いを渡さず、子どもが欲しいものがあるときにプレゼンしてもらう形にしてきたんですが、お小遣い制度のほうが教育にはよかったのではないかと思い直しています」(真奈美さん)

お金に関することだけでなく、教育そのものについても親子で見直す必要があるとのこと。

「何をゴールにして習いごとや進学をさせたいのか、しっかり考えることも大切です。我が家の次男の話ですが、家族で長崎旅行に行った後、社会科のテストでカステラが有名な場所を答える問題が出て『長崎』と回答できたそうです。塾で地理の勉強をするだけでなく、その場に行って目で見て触れるという体験も重要だと感じました。習いごとをたくさんさせて、親も子どもも疲弊している家庭を見たことがあります。本当にそれが子どもに必要なことなのか、親が願っていることなのか、改めて考えることが子どもの教育、ひいては教育費の見直しにもつながると思います」(真奈美さん)

子どもの将来のために教育費を備えるとともに、子どもに必要なものを見極めることも親の役目といえるだろう。教育や費用について親子で話し合い、ゴールを明確にするところから始めてみよう。

(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)

お話を伺った方
寺澤 伸洋
投資・ビジネス書作家。灘高校、東京大学経済学部卒業後、日系企業やAmazon Japan勤務を経て、2020年から作家、講演家として活動。著書に『ぶっちゃけFIRE』『君たちはFIRE後どう生きるか』など。
お話を伺った方
寺澤 真奈美
ファイナンシャルプランナー。リンクプライズ代表。通信費見直しアドバイザーとして500件以上の見直し実績を持つ。保険や金融商品を販売しないFPとしてマネー相談に対応しており、特に子育て世代からの評価が高い。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
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