ビッグマック指数とは?最新の日本の順位や世界各国の数値を紹介
ビッグマック指数とは、各国のビッグマック価格を米国と比較することにより、実際の為替レートが割安か割高かを示した指標です。2024年7月のデータからは、日本の「円」が割安に評価されていることがわかります。
本記事で、日本と世界各国のビッグマック指数を比較してみましょう。
ビッグマック指数(The Big Mac index)とは
ビッグマック指数(The Big Mac index:BMI)とは、世界中に店舗を構えるレストランチェーンのマクドナルド・コーポレーションの商品のひとつである、「ビッグマック」の価格を各国で比較した指数です。主に、為替レートなどの水準を推計するための指標として用いられます。
ビッグマック指数を発表しているのは、英国の経済誌「エコノミスト(The Economist)」です。毎年、1月と7月に数値を発表しています。
ビッグマック指数の特徴は、米国のビッグマック価格(米ドル基準)(※)を他国の価格と比較することによって、為替水準が割安か割高かを数値で示している点です。単に、ビッグマックの価格を各国で比較した数値ではない点に注意しましょう。
ここから、ビッグマック指数の計算例や、ビッグマック指数をチェックすることでわかることを確認していきましょう。
※The Econoistのサイトでは、米ドル以外の通貨を基準にした数値も確認可能(例:Japanese yen)
ビッグマック指数の計算例
ビッグマック指数を計算するための手順は、以下の通りです。
1.対象国のビッグマック価格(対象国通貨基準)を米国のビッグマック価格(米ドル基準)で割る
2.実際の為替レートを確認する(1ドルがいくらか)
3.(1の結果 − 2の値)を2の値で割る
1〜3の手順を踏むことで、対象国のビッグマック指数を求められます。ここで、日本のビッグマック価格550円、米国のビッグマック価格8ドルと仮定して、ビッグマック指数を計算してみましょう。
まず、日本のビッグマック価格を米国のビッグマック価格で割ります(550 ÷ 8 = 68.75)。続いて、現在の為替レートを確認しましょう(今回は「1ドル = 150円」と仮定)。
上記の結果から、今回のビッグマック指数はおよそ「−54.1%{(68.75 − 150)÷ 150}」です。つまり、今回のケースでは、「1ドル = 150円」の為替レートだと円が米ドルよりも54.1%過小評価されていることを示しています。
なお、米ドルが基準通貨(BASE CURRENCY)のため、米国のビッグマック指数は基本的に「0」です。
ビッグマック指数でわかること
ビッグマック指数をチェックすれば、各国の為替相場の適正水準や、現状のレートが過大評価されているか(過小評価されているか)がわかります。
ビッグマック指数は、自由競争において同じ商品・サービスはどの国でも同じ価格で販売されるという原則(一物一価の法則)に基づく指標です。そこで、各国のビッグマックの価格比を根拠に為替水準の適正値を割り出し、実際の為替レートと比較しています。
なお、ビッグマック指数のサイトにはその国の通貨やドルベースでのビッグマック価格も記載されているため、各国の購買力や物価水準もある程度確認できるでしょう。
ビッグマック指数と為替レートの関係
ビッグマック指数は、特に為替レートとの関係が深い指標です。為替レートの概要を説明した上で、為替レートの理解にビッグマック指数が役立つ理由を説明します。
為替レートとは
為替レートとは、外国為替市場で異なる通貨を交換する際に用いられる比率のことです。円とドルの為替レートでは、「1ドル = 〇〇円」のように表記されます。
仮に「1ドル = 150円」の為替レートが「1ドル = 160円」に変動すると、円の価値が安くなるため円安と表現されます。それに対し、為替レートが「1ドル = 140円」に変動すれば、円の価値が高くなるため円高と呼びます。
為替レートの理解にビッグマック指数が役立つ理由
為替レートの理解に役立つ理論の一つに絶対的購買力平価があり、ビッグマック指数はこの説の代表例としてよく用いられます。
為替レートの主な決定理論として、金利平価説と購買力平価説があります。金利平価説は二国間の金利差が短期の為替レートに影響を与えるという考え方であるのに対し、購買力平価説は二国間の購買力が長期の為替レートに影響を与えるという考え方です。
購買力平価説のうちの絶対的購買力平価説では、為替レートにより異なる国でも同じ商品の価値は等しくなると考えます。そして、ビッグマックは世界中で販売されているため、絶対的購買力平価説の算定に使われやすいのです。
為替レートや金利平価説・購買力平価説についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
日本のビッグマック指数は?
2024年7月の発表において、日本のビッグマック指数は−43.9%でした。つまり、日本の円は実際の為替レート(1ドル = 150.46円)に対して43.9%分過小評価されていることを意味します。
また、2023年7月の発表でも、日本のビッグマック指数は-43.2%でした。−40%台が続いていることを考慮すると、日本円の割安が続いているといえるでしょう。
なお、2024年7月において米国のビッグマック価格が5.69ドルである一方で、日本のビッグマック価格は480円(3.19ドル)でした。
【2024年7月最新】日本と世界のビッグマック指数を比較
2024年7月のデータで、日本のビッグマック指数は44位でした。実際のレートより割高と判断されている上位10カ国(地域)は、以下の通りです。
また、ビッグマック指数で、日本(円)よりも割安と判断されているのは以下の国々(地域)です。
なお、上記のデータは数値を調整していないRaw indexに基づくものです。各国のGDPを考慮したデータ(GDP-adjusted)では、順位に変動があります。
2014年における世界各国のビッグマック指数は?
10年前(2024年7月基準)のデータも確認してみましょう。2014年7月における、世界各国のビッグマック指数上位10カ国(地域)は以下の通りです。
ノルウェーやスイスのように、2024年も2014年も上位に入っている国がある一方で、ベネズエラのように2024年では「割安」と判断されている国が、2014年のビッグマック指数で上位に入っているケースもあります。このことから、為替水準は年月を経て大きく変動する可能性があることがわかるでしょう。
米国の2014年7月における順位は16位(2024年7月時点で7位)です。また、日本は2014年7月時点で23位(2024年7月時点で44位)でした。
なお、2014年7月にビッグマック指数を発表した段階での日本のビッグマック価格は370円とのことです。
ビッグマック指数で分析することの問題点
ビッグマック指数で各国の為替レートの適正水準や物価水準などを判断することには、いくつか問題点もあります。
まず、国によって市場環境が異なるため、ビッグマックの価格だけで各国の為替レートの適正水準を判断することは困難です。また、そもそもビッグマック自体も、使われている材料やカロリーなど国によって違いがあります。
そのため、ビッグマック指数だけで現在の為替相場がどうなのかを判断するのではなく、あくまで参考材料として活用するとよいでしょう。
日本や米国の物価がわかる指標
ビッグマック指数以外にも、物価に関連する指標はいくつか存在します。
日本の消費者物価指数(CPI)とは、消費者が日常的に購入する商品・サービスの価格がどれくらい変動したかを示す数値です。CPIの動向をチェックすることで、インフレの状態にあるのか、デフレの状態にあるのかなどを把握できるでしょう。
また、米国にも同様にCPIが存在します。CPIの概要や日米での違いなどについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
消費者物価指数で物価変動を確認!算出方法やアメリカとの違いも解説
ビッグマック指数は為替レートの水準推計に役立つ
ビッグマック指数とは、経済誌「エコノミスト」が各国のビッグマックの価格を比較することにより作成した指標です。ビッグマック指数をチェックすることで、為替レートの水準推計に役立つことがあります。
しかし、各国の市場環境が異なることや、各国の「ビッグマック」が完全に同じ商品なわけではないことなどを考慮すると、ビッグマック指数だけで適正な為替水準を判断することは不十分です。あくまで判断材料のひとつとして、ビッグマック指数を活用するとよいでしょう。
参考:The Economist「Our Big Mac index shows how burger prices differ across borders」
ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。