“分散”のために投資している銘柄とは

オルカンやS&P500からウランまで、経済アナリスト・馬渕磨理子氏と考える「ETF活用術」

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アメリカ大統領選前に盛り上がったウランETF

岡崎 プロの投資家の間で取引が増えているのは、外国債券(外債)のETFです。特にアメリカは金利が高く、また、今後もし金利が下がってもその時は債券価格が上がってくるので、金利と債券価格の両面で利益を狙っているようです。そのほか、2024年はインドと半導体に関連したETFが人気でしたね。

馬渕 ウランをテーマにしたETFもあるんですね。アメリカ大統領選の時期にはかなり注目されていましたし、取引も多かったのではないでしょうか。

岡崎 このETFはすでに海外で上場されていたものですが、まさしく大統領選を考慮して日本でも上場いただきました。良いマーケットを作るには、そこを訪れる投資家の方を増やすだけでなく、魅力的な商品を揃えることも大切です。ウランのETFもその一例で、これからも社会の情勢や投資家の方の思考に合わせて、人々が求める商品を増やしていきたいと考えています。

馬渕 さまざまな種類のETFが揃っているので、初心者の方はS&P500やオルカンといった基本の銘柄に投資して、慣れてきたら中級としてテーマ型のETFに移行するのも良いですね。特定のテーマや業界に注目しているけれど、そこから個別株に絞り込むのはまだ難しいという方にもちょうど良いと思います。

イノベーションによって「暗号資産のETF」は生まれるか

馬渕 今日どうしても聞きたかったことがあるのですが、日本では今後、暗号資産のETFは出てくるのでしょうか。アメリカではすでに上場されていますよね。

岡崎 とても重要な質問ですね。まさに今、そういった議論が盛んに行われているところです。

実は日本の場合、ETFや投信で投資対象にできる資産は法律で定められていて、それらは「特定資産」といわれます。現状では、この中に暗号資産は含まれていないためETFにはできないのですが、今後入ってくる可能性は否定できないでしょう。

馬渕 ETFの投資対象にできる資産の範囲が法で定められているんですね。

岡崎 そうなんです。株式や金、債券は特定資産に含まれている一方で、たとえばコメは価格変動が激しく、ETFにできないかという話もよく出るのですが、現状、特定資産に入っていません。

馬渕 その境界線はどこにあるのでしょう?

岡崎 いくつかあるのですが、ひとつの視点として、ETFを発行する時、投資対象の資産――仮に金なら、実際のETF取引額に相当する現物の金を“裏付け”として信託銀行が購入・保管しています。もしも金のETFを所有している方が、それらを現物の金に換えたい場合、手数料はかかりますが、交換を可能にしている商品もあります。信託銀行がきちんと保管出来ているからこそ、裏付けであるETFを発行出来ます。

その観点で見た時、コメは腐食のリスクなどがあり、保管のハードルが高い。こうしたことも特定資産に含められない背景にあるのです。

暗号資産も同様で、ETFの裏付けとして保管している資産が流出するのではないか、という懸念があります。このリスクをどうカバーできるかが重要になってきますね。

馬渕 そういうことなのですね。

岡崎 ただしここは、技術的なイノベーションや新しい仕組みで突破できる可能性が十分にあるのではないでしょうか。実は金を特定資産に含む際も、さまざまな工夫によって安全性があると認められた経緯があります。

暗号資産もそういったことを積み重ねていけば、ETFとして上場される日が来るかも知れません。

馬渕 この10年ほどで、暗号資産は投資や資産形成においてひとつのポジションを確立したと思いますし、もしそのETFが誕生すれば、より流通が加速する可能性もありそうです。

岡崎 暗号資産を直接購入するのはハードルが高く、まずはETFで気軽に取引したいという人もいるはずです。特定資産に含めるかという議論は今後も活発になるでしょう。もちろん私たちとしても、どのような形があり得るか検討していきたいと思っています。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2025年2月現在の情報です

著者/ライター
有井 太郎
ビジネストレンドや経済・金融系の記事を中心に、さまざまな媒体に寄稿している。企業のオウンドメディアやブランディング記事も多い。読者の抱える疑問に手が届く、地に足のついた記事を目指す。
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