伸び悩む相場局面で役に立つ相場格言
提供元:SMBC日興証券
「名人は相場の怖さを知る」
1月20日に第47代米国大統領に就任したトランプ氏は、就任直後から多くの大統領令に署名するなど、選挙公約で掲げた政策の実現に向けて動き出しています。なかでも投資家が大きな関心を寄せているのは、これまでよりも高い税率の関税を他国に賦課する政策で、世界の金融市場はトランプ大統領の発言(あるいはSNSへの投稿)に一喜一憂する状況が続いています。
本来、関税には、(1)貿易から税収を得る役割(財源機能)や、(2)自国の産業を保護する役割(国内産業保護機能)、(3)不均衡な交易条件を是正する役割(制裁機能)などがあります。しかし、トランプ大統領はこれらに加えて、相手国に要求を受け入れさせる外交手段としても関税を利用しています。過去に、こうした目的で関税賦課を通知するケースは、あまり例をみないこともあり、市場参加者はトランプ大統領の意図や政策動向を測ることができず、不安を感じています。
一般に株式投資家は、先が見通せない状況を避けたがる傾向があります。不測の事態に直面したときに、株価が急落するのもそのためで、投資家は資金を安全資産(現預金や債券など)に避難させて、リスクを回避しようとします。筆者は、トランプ大統領の関税政策に対する先行き不透明感が払拭されるまでは、日本株市場は上値が重い相場展開が続くと予想しています。
では、足元のような状況に直面したとき、投資家はどのように対処すればよいのでしょうか。
一つは、悪影響が及ぶ範囲(業種や銘柄)が、ある程度特定できる場合は、その業種や銘柄への投資を避ける(保有している場合は売却する)、という方法があります。今回の場合、日本から米国に輸出される物品、あるいは中国やメキシコなどにある関連企業から米国に輸出される物品に高税率の関税が賦課されることが悪いシナリオになりますので、自動車や機械など対米輸出数量が多い製品に携わる企業の株式は保有しないという対処法が考えられます。
もう一つは、それらの銘柄を保有しないのではなく、異なる値動きをする傾向がある投資対象にも投資を行い、保有銘柄の分散を図る、という方法があります。確かに、トランプ政権の関税政策という側面からみれば、自動車や機械は避けるべき投資対象かもしれません。しかし、その悪影響が未来永劫続くわけではありませんし、他の要因で株価が上昇する可能性もあります。そうであるならば、一定の悪影響を把握したうえで、分散投資を行ってリスクを軽減することも有効な手段になり得ると思います。
これら二つの対処法のうち、より汎用性が高いのは後者です。前者の方策は、リスクの所在や悪影響が及ぶ範囲がわかっているときには非常に有効ですが、不測の事態には対応できません。一方、後者は、あらかじめ異なる値動きをする傾向がある資産に分散投資しておけば、対策することができます。当社でもお客さまが保有する資産のリスク等を詳細に分析するツールを活用したサービスを提供していますので、そうしたツールを利用することで、より有効な分散投資効果を得ることができます。
相場の格言に「名人は相場の怖さを知る」という言葉があります。これは、株式など価格変動を伴う資産への投資に精通している人(=名人)は、投資した資産が値下がりするリスク(=相場の怖さ)を十分に把握したうえで、適切に投資を行っているものだ、ということを言い表しています。
先が見通せない投資環境にある今だからこそ、分散投資などを通じて不測の事態に備えましょう。
皆さまの投資成果が向上することを祈念いたします。
(SMBC日興証券 Kazu)