景気を見る2つのものさし

日経記事で学ぶ~幸福寿命を延ばす投資術8

提供元:日本経済新聞社

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ややこしい時制、前期比は前年同期比にあらず?

GDPの数字そのものをみていてもじつはあまり意味がありません。景気の良い悪いは変化量で判断しますから、GDPの増減をみるようにしましょう。先ほど例に挙げた日経電子版記事もその変化を詳しく報じていますよ。

経済が難しいと感じる方はこの変化の「時制」を苦手とされるようです。私も新人記者としてデビューした頃、記載内容が示す時期がいつを示すのかわからず往生した記憶があります。余談ですが、GDP記事と決算発表記事では時制ルールが異なっていることも混乱の要因です。

目からウロコ、になるかどうかわかりませんが、この時制をイラストで解きほぐしてみました。GDPは四半期ごとの公表になるので前期とは直前の四半期を示します。たとえば、2025年1-3月期のGDPの速報値を4月に発表した場合、前期とはその一期前の2024年10-12月期を意味します。直前の四半期と比べることで経済活動の最新の変化を読み取るわけです。この変化を4倍にして1年に置き換えたのが年率換算です。米国では決算も四半期単位ですが、日本は1年単位で考える習慣があるのでGDPも年率のほうがイメージしやすいかもしれません。

これに対して前年同期比とは1年前の同じ四半期と比べた増減となります。クイズを1問やってみましょうか?

前年同期比プラス1%、前期比プラス1%という場合、経済はどういう状況に置かれているでしょうか? 前期比1%は年率換算4%で伸びになっていることです。1年前と比べると1%の伸びにとどまるので、足元の四半期の伸び率が4倍高くなっています。つまり、景気は急速に勢いを増して回復しつつある、というふうに読み取ります。

著者/ライター
田中 彰一
日本経済新聞社コンテンツプロデューサー兼日経CNBC解説委員。マーケット・企業取材歴35年と現役最古参。日経電子版の開発、ニュースレター連載、テレビ解説と「創る・書く・話す」の三刀流をこなす。CFP認定者、シニア・プライベートバンカー、宅建士。東証マネ部!の長寿コラム「日経記事でマネートレーニング」はデジタル小冊子に(無料ダウンロード可)
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