景気を見る2つのものさし
日経記事で学ぶ~幸福寿命を延ばす投資術8
提供元:日本経済新聞社
日銀短観、世界の「タンカーン」
景気は文字通り「気」持ちです。GDPは客観的な数値情報でしたが、「気持ち」を測るものさしも重要です。これが日銀短観です。中央銀行である日銀が経営者へアンケートを実施し、景気に関する「経営者心理」を調査しているのです。
正確には全国企業短期経済観測調査といいますが、略してタンカン。世界でも「タンカーン」として知られます。上場・非上場の約1万社に四半期ごとにヒアリングして、景気が良くなったか悪くなったかの印象を聞き取っています。
影響力が大きい大企業、かつ経済動向を敏感に反応する製造業の結果がもっとも注目されます。この数字が良くなると景気が上向いていると感じている経営者が多いことになりますから、今後設備投資や雇用の拡大が見込まれるというふうに読み取るのです。下向きの結果が出ると景気が減速し、投資活動や雇用の抑制につながると解釈していきます。
景気は波、好不調の循環を繰り返す
景気には押しては引く波があります。就職活動を思い出してください。「就職氷河期」、あるいは売り手市場・買い手市場といったことばを聞いたことがありませんか?
企業は景気が悪い局面では雇用を絞るため、求人が減ります。景気拡大局面では営業や生産などを積極化しようとするので人手が足りなくなり、求人需要が増えるわけです。
景気の波を製品サイクルに沿って解説しましょう。景気がよいときは賃金や賞与が上向き、消費・購買活動が拡大します。その結果、モノが売れるようになります。小売店ではこの商機を逃すまいと在庫を増やします。注文が増えて工場の稼働率が上がり、供給が足りなくなります。
経営者はこの状況をみて新たに工場を建設したり、製造ラインを増やしたり、設備増強に動きます。この結果、業績が拡大し、雇用の拡大や賃上げ、賞与の増加などが広がり、さらに個人消費が喚起されるようになります。
その逆が不況で今まで述べたサイクルが逆の回転をします。
最後にもう一度、2大指標をまとめましょう。GDPは経済活動の定量的なものさし、日銀短観は経営者心理を推しはかる定性的なものさしといったところでしょうか。投資やビジネスには「鳥の目」「虫の目」「魚の目」が必要といわれます。景気は言うまでもなく鳥の目です。マクロ経済のジャンルなのでややもすると退屈感もあるのですが、経済の大局を踏まえてこそ中長期投資がうまくいくのです。
これから4年間、トランプ大統領と付き合わないといけません。景気のブレが大きくなるかもしれません。米国のGDP、中国のGDPなどもみておくと「関税」の影響や、経済圏の勢力変化などもいっそう深く読み取れるようになります。
言われてみればたしかに……本コーナーではマネーに関する気づきや新しい常識を解説していきます。拙著(下記リンク)を副教材として併読していただけると高いリテラシーが身につきます。今回のテーマに掲げた金利と投資についてもわかりやすく解説しています。本ブログの参考になる日経電子版記事を紹介しておきます。
【参考記事】
GDP、10〜12月年率2.8%増 24年名目初の600兆円超え(日経電子版 2025年2月17日)
大企業製造業の景況感、4四半期ぶり悪化 3月日銀短観(日経電子版 2025年4月1日)