新興国投資へのいざない
新興国投資は儲かるのか?
提供元:アイザワ証券
刺激的なタイトルですが、前回までの3記事では「新興国投資へのいざない」「新興国投資のリスクについて」「新興国企業のセクターについての考察」と、新興国投資にご関心のある投資家の皆様に投資リスクや業種選びの難しさなどを、先立ってお伝えする事を重視してまいりました。今回はこれまでの記事を踏まえ本質に迫りたいと思います。ずばり新興国への株式投資は儲かるのか?というテーマです。
新興国への株式投資は儲かるのか?
先に結論を申し上げると、「長期・分散・複利(再投資)」「損切りは早く、利は伸ばす」という運用方針を継続することで、リスクに見合った投資成果(リターン)は十分に期待できます。
下のグラフは新興国であるベトナム株式市場に2012年から投資したある個人投資家さんのポートフォリオの資産推移です。
この方は2012年から14年にかけて累計約500万円(約16.2億VND:ベトナムドン)の投資資金を、複数回に分けてベトナム株式に投資し、現在も運用を継続されています。
グラフからは始めた直後は2012年10月頃には約1億VND(約36万円)相当のベトナム株式の保有に過ぎませんが、14年末まで累計500万円まで追加資金を投入し、15年以降は配当の再投資のみでベトナム株式を買い増しし続けた結果、2025年6月には時価約35.5億VND(約2,000万円)の資産を運用されています。全体としては10年超かけて資産額は約3倍以上となった格好です。この方の例の特徴は「長期・分散・複利(再投資)」「損切りは早く、利は伸ばす」という運用方針を続けた点にあります。
詳細を述べますと2012年10月から50万円ずつ2014年末までにタイミングを分散して累計約500万円を投じ、それ以降は受け取った配当金を再投資し続けたこと、約30銘柄に分散投資したことがリスク分散につながった点が挙げられます。
というのも25年6月末の段階では27銘柄を保有しているものの3分の1はマイナス(買った価格よりも安い状態)で、一番ひどいものは4分の1以下になったものの、3分の2はプラスで、特に大幅に利益が膨らんだ銘柄は約17倍となっており、3分の1以上が2倍以上になったそうです。コツとして「損切りは早く、利は伸ばせ」という投資格言に沿って、大幅に利益が出ている銘柄を売却せずに、損している銘柄を売却する方針を続けたことから、上昇する銘柄だけを当て続けることは困難だが、資産が増えるように管理する事が出来たそうです。
また2025年7月現在フロンティア市場に位置付けられる新興国のベトナム株式は、株価の急変動に驚いて情報を探したものの、報道やインターネットの情報は限定的で、日本から短期間の投資を行うには全く向かないものの、長期に渡り速いスピードで経済成長している国である事は変わらない為、銘柄を売却する事は稀で保有を継続した例が多いとのことでした。
成長産業(グロース)の占める割合が先進国と比べて高い新興国投資は、成長産業を見極める能力が無くても経済(GDP)と株式市場の時価総額の成長の速さの恩恵を受けるメリットがある反面、(先進国と同様に)「長期・分散・複利(再投資)」「損切りは早く、利は伸ばす」という投資規律が重要ともいえそうです。
(アイザワ証券)
CIIA®(国際公認投資アナリスト)、CFP、1級FP技能士
ベトナムをはじめとするアジア新興国市場の分析を担当。豊富な現地調査経験に基づいた独自の視点から、投資家の皆さまにアジア株を解説、紹介しています。
現在、都内でテレビ放送されている株式情報番組『ストックボイス 東京マーケットワイド』に毎週火曜日13:30よりレギュラー出演中。