毎月の給与額が多い人ほどメリットが大きいらしい

大企業が導入し始めている「賞与の給与化」で社会保険料の負担が減るって本当?

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給与UPに伴う「お金の使いすぎ」に注意

「賞与の給与化」によって社会保険料が抑えられるケースに該当した場合は、そもそもの収入が多くない場合、大きな変化は期待できない。また、社会保険料が下がると、健康保険の給付や年金額が下がるという注意点があることも覚えておきたい。ただし、別のメリットがあるという。

「単純に毎月の収入が増えるのは、大きなメリットといえます。家計が安定しやすくなり、生活に余裕が生まれるでしょう。そもそも賞与は支給が確約されているものではありませんが、給与に繰り入れられることで、確実に手元に入ってくるという点もメリットといえます。転職や退職のタイミングによっては賞与を受け取れないケースがありますが、『賞与の給与化』が行われると、所属している間は分割で賞与を受け取っていることになります」

一方で、「毎月の給与が増えるからこその注意点もある」と、川部さんは話す。

「給与が増えると、油断してお金を使いすぎてしまうことがあります。また、生活水準は月々の収入と比例しやすいので、それまでよりも生活水準が上がり、支出が増える可能性があります。いままで賞与をローンの返済や貯蓄、運用などに回してきた人は、給与のなかから分けていくことになるため、これまで以上に家計管理を徹底する必要が出てくるでしょう」

安定した業績が期待できる会社で進むであろう「賞与の給与化」

大企業を中心に導入が始まっている「賞与の給与化」。今後、さらに導入する会社は増えていくのだろうか。

「冒頭でお話ししたように、『賞与の給与化』を行うと毎月の給与額の見え方が変わるので、『賞与の給与化』を実施した会社に人材が集まりやすくなります。そのため、ほかの会社も同様の動きを見せる可能性が高く、全体的に毎月の給与が上がる傾向が出てくると考えられます。求職者だけでなく、従業員にとっても大きな変化といえるでしょう」

ただし、すべての会社が「賞与の給与化」に対応できるかというと、そうともいえないようだ。

「先述したように、賞与は従業員に必ず支給しなければいけないものではありません。コロナ禍で賞与がカットされた会社が多くあったように、業績などによって増減するものです。その賞与を給与に組み込むということは、再びコロナ禍のようなことが起こったとしても給与を支払い続ける余力が必要になります。また、一度上げた給与を減額するのは従業員にとっての不利益となるため、従業員の同意がなければ行えません。業績が下がったからといって、会社側の一存で給与を下げるということはできないのです。これらの理由から、業績が安定的に推移する見込みのある会社でないと『賞与の給与化』には踏み出せないといえます。すべての会社で一斉に進むとは考えにくいでしょう」

会社にとっても従業員にとっても一長一短といえる「賞与の給与化」。就職・転職を行う際は、給与だけでなく賞与の有無なども確認したほうがよさそうだ。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
著者サイト:http://kawabe.jimusho.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
用語解説

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