法人化すると「社会保険料」の負担を下げられるって本当?

個人事業主よりメリットがある? フリーランスが「マイクロ法人」を設立する理由

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「手間」はかからないが「費用」がかさむ可能性あり

マイクロ法人にメリットがあることはわかったが、法人を立ち上げるにはそれなりの手間がかかるのではないだろうか。

「個人で手続きを行うのは大変ですが、司法書士に依頼すれば、想像しているよりも簡単に設立できるでしょう。社会保険などの手続きも、社会保険労務士などの専門家に依頼する人がほとんどです」

手続き自体に手間はかからないが、専門家に依頼するということは相応の費用が発生することになる。

「登記手続きのための司法書士の費用や社会保険加入の手続きは一度限りのものですが、税理士に月々の税務の管理をお願いするとなると、毎月数万円の支出が発生することになります。法人税の申告は複雑なので、個人事業主の確定申告より税務処理の費用が掛かることもあります。社会保険料を抑えられたとしても、諸々の費用がかさみ、結果的に支出が増えるといったケースもあるので、慎重に検討することをおすすめします」

判断のカギは「制度内容を正確に把握すること」

マイクロ法人を立ち上げて個人事業と両立することで社会保険料が抑えられるのは、労働者にとってはプラスだが、国にとってはマイナスといえるだろう。

「現状の法律では、一定の条件を満たして法人から報酬を受け取る場合は、社会保険への加入が義務付けられているため、社会保険料を抑えることができるようになっています。ただし、国としてはできるだけ多くの人に社会保険料を納めてほしいという思いがあるため、今後監視が強化されたり、法改正が行われたりする可能性がないとはいえません」

「データを用いた管理体制ができるのではないか」と、川部さんは予想する。

「マイナンバーによる所得の一元管理が進むことで、国は個人の収入をより正確に把握できるようになります。そのデータなどをもとに、社会保険料の適正な徴収が強化される可能性は高いのではないかと考えられます。今後どうなるかはわかりませんが、マイクロ法人の設立を考えている人は、意識しておきたい点といえるでしょう」

最後に、会社からの独立やマイクロ法人の設立を検討している人に向けて、お金の専門家の視点からアドバイスをもらった。

「何よりも大切なことは、制度の仕組みを理解することです。どのような制度であっても、損得勘定やメリットだけに注目して取り入れてしまうと、思いがけないリスクやトラブルに見舞われてしまうかもしれません。常に情報収集を怠らず、最新の制度内容を正確に把握し、ときに専門家に相談しながら、自身の収入や働き方、ライフスタイルに合う形で制度を活用していけるといいでしょう」

メリットが多いように見える「マイクロ法人」だが、相応のリスクや費用が発生する可能性が高い。自身で対応できるのか、コストに見合うメリットを得られるのか、慎重に判断して決めていくことが重要だ。

(取材・文/有竹亮介)

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
著者サイト:http://kawabe.jimusho.jp/
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。
用語解説

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