2000年以降の金と円: ヘッジの有効性に関する過去データからの洞察
提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
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長期的なリターンのパターン
検証期間全体を通じて、ヘッジなしの金投資の平均月次リターンは1.02%、対するヘッジありのリターンは0.71%となっています。この0.31%ポイントの差は、全体的な円安傾向と、月平均約0.19%のヘッジコストという2つの主要因を反映しています。6
これらのパターンはサブ期間を通じて一貫しています。
• 2000年から2006年にかけて、ヘッジなしの金投資の平均月次リターンは1.20%だった一方、ヘッジありのリターンは0.74%でした。7
• 2007年から2019年までは、米ドル・円レートがおおむね安定的に推移したため、パフォーマンスの差は縮小し、ヘッジなしの平均月次リターンは0.62%、ヘッジありは0.58%となりました。8
• 2020年以降は、着実に円安が進み、円は対米ドルで月平均0.53%下落しています。その結果、ヘッジなしの平均月次リターンは1.74%に上昇した一方、ヘッジありのリターンは1.00%にとどまっています。9
いずれの期間でも、ヘッジなしのパフォーマンスがヘッジありを上回っており、特に著しい円安局面ではそれが顕著になっています。そうした局面では、ヘッジありの投資家はヘッジコストを負担するだけでなく、有利な為替差益を逃すことにもなっています。
日本の投資家はヘッジをすべきか?
過去のデータによれば、長期的なリターンの最大化を重視する投資家にとっては、ヘッジは必ずしも必要ではないことが示唆されています。2000年以降、持続的な円安と、日本の低金利環境によりヘッジコストが概ねマイナス(月平均‐0.19%)だったことを背景に、ヘッジなしの金投資の月次リターンがヘッジありを平均0.31%上回っています。10さらに、金と円はともにセーフヘイブン資産と見なされているため同方向に動くことが多く、これによりヘッジなしの投資家は、ある程度の自然な分散効果が得られ、積極的な為替リスク管理の必要性が低減されます。
ただし、リスク管理(特に急激な円高への備え)を優先する投資家にとってはヘッジが有益であることはわかっています。最も損害が大きいレジームは「金:安(-)と円:高(-)」(レジーム4)であり、その間のヘッジなしの平均月次リターンは4.80%の下落、それに対しヘッジありのポジションでは3.47%の下落となっています。11
今後に向けての重要な考慮事項は、円安が持続するかどうかです。日米の金利差が縮小した場合は円高に転じる可能性があり、日本の投資家にとって金価格上昇による利益が減少、もしくは帳消しにする可能性すらあります。そうしたシナリオでは、ヘッジありの配分がポートフォリオ分散効果としての金の役割を確保するのに役立つでしょう。逆に、円安が持続する場合は、ヘッジなしを維持することで期待リターンが高まる可能性がありますが、ボラティリティも増大すると思われます。
円相場の先行きに確信が持てない投資家にとっては、バランスのとれた配分戦略が賢明な選択かもしれません。円建てのヘッジあり金に50%、円建てのヘッジなし金に50%を配分することで、為替リスクを管理しつつ、円相場の変動による上振れの可能性を確保することができます。この手法は分散効果をもたらし、極端な為替変動の影響を緩和します。
注記
1. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
2. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
3. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
4. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
5. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from October 1, 2008 to October 31, 2008.
6. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
7. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to December 29, 2006.
8. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2007 to December 31, 2019.
9. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2020 to July 31, 2025.
10. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
11. Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
用語集
中央銀行
国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性をもって管理する金融機関
中央銀行金協定
第1次中央銀行金協定(CBGA-1)は、ワシントン金協定とも呼ばれ、1999年9月26日に欧州15カ国の中央銀行と欧州中央銀行(ECB)によって締結されました。各国中銀による協調性を欠いた売却と金の貸出増加が価格下落を招く事態となり、同協定は金市場を安定化させることを目的としていました。同協定では、通貨準備における金の役割が再確認され、公的部門の活動に制限が設けられました。
署名国中央銀行による金の売却の総量は5年間で2,000トン(年間約400トン)を上限とし、金の貸出やデリバティブの利用を増加させないことで合意しました。この措置は不確実性を軽減し、透明性を高め、現代の金市場ダイナミクスにおける転換点となりました。
同協定はその後、2004年、2009年、2014年と3回に渡り延長・更新されました。2019年に、ECBはこの20年続いた協定を延長しないことを発表し、金は依然として重要な準備資産だと指摘しました。ECBと同協定に署名した21カ国の中央銀行は、大規模な金売却の計画はないことを確認し、中央銀行は10年近くにわたり金を買い越していると強調しました。
(提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント)
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