ゴールド月次モニター 2025年10月
提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
- TAGS.
金ETF投資が再び活性化、さらなる拡大の余地も
• 2025年の金ETFへの資金流入は2000年以来の高水準となっており、2025年9月の月間流入額は米ドル建て名目額ベースで過去最高を記録しました 10。しかし、トン数ベースの総保有量は依然としてパンデミック時のピークを下回っています。これにより、たとえ金ETFの買いがコンセンサストレードだとしても、金の保有が過剰ではないことが示唆されます。
• 個人投資家の金ETF保有の大部分は課税口座にあり、今年の並外れた価格上昇を受けて第4四半期には一部ポートフォリオのリバランスが発生する可能性があります。歴史的に、11月/12月は季節要因も金ETFの資金フローにネガティブに働く傾向にあります 11。
• しかし、長期保有者には含み益が蓄積されており、株価が最高値水準にあることや、今年は債券もプラスのパフォーマンスを上げていることから、節税目的の売り需要は少ないとみられるため、過度な利益確定や解約が起こることはなさそうだと当社はみています。
図表3︓中国の通貨以外の用途の輸入量

「無相関」な現物金需要が固有の下支え要因に
• 新興国の中央銀行は引き続き金準備を積み増しています。購入量は2022~24年のピークからやや減少傾向にありますが(当社の予想通り)、それでも歴史的にみて高い水準を維持しています 12。中央銀行による金購入は、地経学的・戦略的性質が強く、その他の金消費(宝飾品など)に比べて価格弾力性が低い傾向にあります。これは、金価格をより高い水準で下支えし、ダウンサイド・ボラティリティを抑制する構造的要因となります。
• 中国の通貨以外の用途の金輸入から推測される中国のリテール金需要は、今夏に予想を上回る伸びを見せました。 今年7~8月の取引量は105トンを超え、前年同期の66トンを大きく上回りました 13。いまだ続く米中貿易摩擦の影響、人民元安ヘッジ、不動産市場回復の心許なさが金消費を支えている可能性があります。さらに、アジア太平洋地域各国の政策措置は、同地域の金需要のトレンドをさらに支える可能性があります。
図表4︓金換算でみた S&P 500 指数

記録的な株高と低ボラティリティにもかかわらず金価格が上昇
• 夏の間、テック株が反発を続けるなか、金価格は1オンス約3,250~3,350ドルのレンジ内にとどまり、S&P500指数は金換算ベースで緩やかに上昇しました 14。しかし、S&P500/金価格比率は9月に急低下し、3月以降、パンデミック前の平均値を下回る水準で推移しています 15。これは、金価格を支える長期的な要因が存在し、不確実性プレミアム(恐らくは米国の貿易、財政赤字、外交政策、インフレをめぐる不確実性に関連している)が織り込まれている可能性が高いことを示唆しています。
• 確かに、過去の市場パターンにのっとると、クロスアセット・ボラティリティが急低下するなかで米国株式市場が4月半 ばの調整局面から8~9月に新たな強気相場に移行する過程では、金市場の調整が伴ったはずです。しかし、同期間を通じて金価格は底堅さを示し、その後、第3四半期末にかけて最高値を更新する上昇を見せました 16。
• 米国株が過去最高水準にあるなかで金が最高値を更新していることは、他の条件が全て同じであれば、次のリスクオフ局面やボラティリティショック時において金保有の魅力を高める可能性があります。
注記
1 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
2 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
3 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
4 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
5 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
6 Source: Automatic Data Processing, Bureau of Labor Statistics, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
7 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
8 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
9 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
10 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
11 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
12 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
13 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
14 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
15 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
16 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
用語集
中央銀行
国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関
COMEX
コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場
金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
LBMA午後金価格(米ドル/オンス)
LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。
実質金利
インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。
解放の日
広範にわたる関税措置の実施について、米貿易政策の転換点という位置づけを象徴するために用いられた言葉。米国の産業を海外の製造業への依存から「解放」し、貿易不均衡を解消するという考えを反映しています。
脱ドル化
国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨を活用しようとする動きがあります。
関税
外国から輸入される財とサービスに国が課す税金で、通常、財政収入を拡大するため、あるいは国内産業を海外との競争から守るための手段として用いられます。
(提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント)
関連リンク


