ゴールド月次モニター 2026年1月

提供元:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント

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金は積み上がったマネー・マーケット・ファンド(MMF)からシェアを奪えるのか?

• 1980年から2001年にかけて、投資家が短期的な投資先を低利回りの銀行預金から高利回りのMMFへとシフトさせるなか、MMF残高の対GDP比率は2%から21%へと大幅に上昇しました7。この間、金は保有資産として一般的に選好されていませんでした。しかし2000年以降の20年間に、構造的な短期金利の低下でMMFの「リターンの優位性」が低下したため、金はコモディティのスーパーサイクル、そして世界金融危機後の期間に下値を切り上げました。概して言うと、MMFの対GDP比率は低下基調をたどり、2010年代終盤には15%まで低下しました8

• パンデミック後の短期利回りの上昇でMMFの魅力が再び高まったことから、資金が流入し、MMF残高は過去のサイクルの高水準近くまで増加しました。現在の水準(24%)は、2000年代初頭のピーク(21%)を上回っており、MMF残高の対GDP比率は世界金融危機(26%)や2020年のパンデミック(25%)の際につけた高水準に匹敵します9。歴史的に見て、MMF残高がピークをつけた後、短期利回りは低下し、金融政策は緩和されており(現在のFRBの政策経路)、金のように利回りを生まない資産を保有する機会コストは低下してきました10 。

• 短期利回りの低下に伴い、MMFの税引き後の実質インカムが減少するため金のメリットは高まります。MMF残高のGDP比率が24%から2000年代の10年間の平均である19%近くに戻った場合どうなるでしょうか?この期間は現在との比較に特に適しています。というのは、FRBは2000年代半ばに政策金利を5.25%と、現在のサイクルのピーク(5.50%近傍)に概ね匹敵する水準まで引き上げているからです11。過去のサイクルでは、同様の金融政策の移行時には、実質利回りが低下し金融緩和が拡大するなか、投資家が過剰流動性を価値保存手段と見なされる資産に再配分するため、金に対する関心が再燃しました。

不確実性が高まるなか、金は上昇した株式バリュエーションのヘッジ手段として有望

• 米国株式と金がいずれも2026年の幕開けから史上最高値を試す展開にあるため、金はテールリスクに対するヘッジやマクロ・ポートフォリオ・オーバーレイの観点から引き続き恩恵を受けるとみられます。S&P500指数が2025年3月/4月の水準でこう着する場合、当社は金価格が1オンス4,000~4,500ドルに達する可能性に警戒感を強めるでしょう。しかしベンチマークの米国株価指数が7,000台に迫り、VIX指数が過去12カ月間の最低水準を試す展開にあるため12、金は潜在的なボラティリティ上昇やリスクオフ・ショックへの備えとなる可能性があります。

• 実際、S&P500指数/金価格比率の1.6倍以下への低下は(パンデミック前の20年平均は約2.1~2.2倍)13、金価格を下支えする構造的要因に加えて、投資家が依然として金を妥当な流動性ヘッジまたはドローダウン・ヘッジ手段とみなしている可能性を示唆しています。これは米国の「政策サプライズ・リスク」によって、さらに増幅されている可能性があります。

• トランプ2.0の「不確実性プレミアム」は、資産市場のボラティリティに常に反映されるとは限らないですが、金の資産配分を構造的に押し上げる要因です。米国経済政策不確実性指数は、第二次トランプ政権下で平均400ポイント弱であるのに対し、オバマ政権(2009~2016年)では118、バイデン政権(2021~2024年)では132、第一次トランプ政権(2017~2020年)では139でした。トランプ2.0で地政学または政策レジーム (たとえば通商政策、防衛/外交政策、FRBの独立性など)が大きく転換する可能性には明らかに現実味があります。こうした状況で最も確からしい確率分布の幅が大きく広がるにつれ、金を世界的な不確実性に対するヘッジ手段と見なす傾向は強まるでしょう。

中央銀行の金購入は価格弾力性の低い現物需要を下支え

• 中央銀行の金需要は 2022 年のピークから鈍化したものの、金需要全体に占める割合は過去 10 年間で構造的に拡大しています。中央銀行による購入の割合は2025年に低下したものの、過去50年間の水準を依然として大幅に上回っており、公的部門の外貨準備管理が持続的にシフトしていることを裏付けています14

• 中央銀行の根強い需要は金市場の安定化要因となっています。価格感応度が高い、あるいは循環的な需要源と異なり、中央銀行の購入は政策主導で長期間にわたり、短期的な価格変動に影響されにくいため、市場のストレス局面やETF経由での投資家の売却局面で下方ボラティリティを抑えるのに役立ちます。このダイナミクスは、中央銀行が実質的に金の需給均衡価格を徐々に押し上げ、金価格を1オンス4,000~5,000ドルで下支えする役目を果たしていることを示唆しています。

重要な点は、需要全体に占める中央銀行の割合が低下したにもかかわらず、中央銀行のドル建て購入額が増加し続けていることです15。こうしたかい離は、現在の金価格上昇と中央銀行 による純購入の持続を反映しており、価格水準が徐々に上昇するなか公的部門の需要が供給を吸収しているとの見方を裏付けています。購入は、価格サイクルを通じて、ドル金額ベースで購入規模を拡大しながら行われているため、中央銀行は事実上、下値の切り上げに寄与していると言えます。

• 以上の点を踏まえると、中央銀行の参加とドル建て購入金額の増加は、金の金融資産および準備資産としての役割を支える長期的で「粘着性のある」需要源を示しています。この枠組みでは、金価格は短期的な投機フローより戦略的なバランスシート政策に支えられ、市場サイクルを通じた底堅さの向上に寄与しています。

金ETFへの資金流入は2025年に過去最高を記録(米ドルベース)、サイクルは2026年も持続する見通し

• 現物を裏付けとする世界の金ETFは2025年12月に7カ月連続の資金流入となり、金の保有額は96億ドル(金72.2トン相当)増加しました。2025年の流入額は米ドル建て名目ベースで過去最高(868億ドル)を記録しました16 (既に9月に2020年につけた495億ドルを突破)17

• 歴史的に見て、季節要因は11月/12月に金ETFのフローに最もネガティブな影響を及ぼします(図表6を参照)。しかし 2025年はこのトレンドに反し、最後の2カ月間で148億ドル(同111トン)の資金が流入しました。12月の流入額は米ドル名目ベースで96億ドルと、月次ベースでは2025年で3番目、そして過去6番目の高水準となりました18

• 2026年の金市場展望で指摘したように、今回のETF金保有量増加サイクルは約86週間で、その間に金保有量は936トン増加しており、持続期間は過去のETF強気サイクルの約39%/34%に、金保有増加量は約51%/40%に相当します19。過去の平均ペースである約8.75トン/週に基づくと、2026年のランレートごとの流入量は25%、50%、75%、そして 100%に対し、約114トン、約228トン、約455トンとなり、年末の保有量は約4,118~4,459トンとなる見通しです20

ランレートが100%のシナリオでも、今サイクルの流入量は2008~2012年の合計を約432トン、2016~2020年の合計を 950トン、それぞれ下回ります。そのため、当社は今回の保有量増加サイクルは複数年に及ぶ公算が大きいとみています21

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