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「人的資本」は競争力の源泉

開示義務の拡充で広がる投資判断の切り口

提供元:ちばぎん証券

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「人的資本」―従業員および従業員が持つ知識や技能、意欲などを企業の資本とみなす考え方。
その価値を最大限に引き出すための投資が「人的資本投資」。

近年、この「人的資本投資」に対する関心が高まっています。

きっかけは、2022年に政府が策定した「人的資本可視化指針」。
企業が企業価値向上につながる質の高い人的資本投資を実践・開示するためのガイドラインです。
2023年には人的資本に関する開示の義務化が決定。人材育成および社内環境整備の方針、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差の指標について有価証券報告書への記載が義務付けられました。

背景には、人的資本を企業の競争力の源泉と捉えるグローバルな流れと、わが国の人的資本投資が諸外国と比べて低水準にとどまっていることへの危機感があります。
たとえば人的資本投資額の対名目 GDP 比率(2021年)。
日本は0.22%で米国(0.91%)、ドイツ(1.12%)、フランス(1.66%)、英国(1.75%)と比べ、かなり低いと言わざるを得ません(内閣官房HP「人的資本可視化指針(改訂版)」より)。

投資家にとっても銘柄選択に際し、人的資本投資に関する情報は重要です。
売上高や利益水準が似通った銘柄同士であっても、人的資本投資に関する情報に注目することで潜在的な成長余力や隠れたリスクが見えてくる可能性があるからです。

こうしたなか、2026年3月期の決算から人的資本に関する開示義務が拡充されます。
これまでの開示が、ともすれば指標のみを重視し数字の羅列のとどまっているとの批判を踏まえ、以下のようなポイントが特に求められることになりました。

(1)企業戦略と関連付けた人材戦略。人材戦略に基づく人的資本投資が企業価値の向上にいかに結び付くのか。
(2)人材戦略を推進するための具体的な目標・指標。従業員数や人件費(賃金に研修費用や福利厚生費などを含む)、離職率、エンゲージメント指数(アンケート調査などを通じて従業員が企業に対して抱く「貢献意欲」「信頼」「愛着」などを定量的に数値化したもの)など。
(3)指標の拡充。新たに従業員の給与等の額および内容の決定に関する方針、平均年間給与の対前年比増減率が開示の対象に。

今年3月、政府は「人的資本可視化指針」の改訂版を策定しました。
そこでは先行事例として10銘柄(味の素、カプコン、中外製薬、デンソー、富士通、九州フィナンシャルグループ、双日、SCSK、SIFT、東京海上ホールディングス)の具体的な開示内容が掲載されています。
参考までにいくつかご紹介しますと、

2802 味の素
・経営戦略~2030年度に食品系事業とバイオ&ファインケミカル事業の事業利益の割合を1:1にする
・人材戦略~バイオ&ファインケミカル事業において外部から獲得するキャリア採用に注力する
・指標および目標~2030年度にキャリア採用で入社した従業員の比率が30%になることを目指す

9697 カプコン
・経営戦略~毎期10%以上の営業増益、年間ソフト販売1億本の達成に向け開発体制を拡充する
・人材戦略~毎年100名程度の新卒採用と、積極的な中途採用を実施。初任給、給与水準の引き上げ、業績連動賞与制度・従業員向け株式報酬制度を導入
・指標および目標~開発職の人員数、年齢分布、新卒採用数、平均年間給与を開示。

2768 双日
・経営戦略~2030年に「企業価値2倍成長」の目標を達成するためグローバルに新規投資を拡大する
・人材戦略~現地人材(ナショナルスタッフ)の活用を重視する
・指標および目標~海外グループ会社の現地人材比率(27年3月期に60%以上など)を人材KPIの1つに据える
(内閣官房HP「人的資本可視化指針」の改訂について、「経営戦略と人材戦略の連動及びそれを踏まえた指標の開示事例」より)

あくまで抜粋ではありますが、企業の経営戦略と関連付けた人的資本投資のイメージが少し見えてきたでしょうか。

昨年7月、日本経済新聞社とJPX総研は、新しい株価指数「JPX日経インデックス人的資本100」の算出を開始しました。
「JPX日経インデックス400」の構成銘柄のなかから、人的資本に関する評価が高い100社を選んで作られた指数です。
公表以来のパフォーマンスは、TOPIX、JPX日経インデックス400を10%程度上回っており、市場の評価が高いことがうかがえます。
今後、26年3月期の有価証券報告書での開示を経て、8月末には構成銘柄の入れ替えが予定されています。
人的資本に関する評価が高い銘柄を絞り込む一助にしてみてはいかがでしょうか。

もちろん人的資本に対する評価だけで最終的な投資判断を下すことはできません。
ただ経済のソフト化(サービス化)、デジタル化が進み、企業にとっての競争力の源泉が工場、機械などの「有形資産」から知識・技術・ブランドといった「無形資産」へシフトするなか、人的資本投資の重要性は一段と高まるものと考えられます。
そこに注目することで、これまで見落としていた新たな投資対象が見つかるかもしれません。

(提供元:ちばぎん証券)

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