かぶオプコラム
【1年で学ぶ かぶオプ投資術】第4回:相場が大きく動く瞬間を利益のチャンスに ― イベント前のストラドル戦略
提供元:株式会社シンプレクス・インスティテュート
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【1年で学ぶ かぶオプ投資術】第3回:株だけではもったいない ― いま注目の“かぶオプ”の世界 | 東証マネ部!
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2026年も早くも折り返し地点を過ぎました。この春から初夏にかけての株式市場は、中東情勢の緊迫、停戦への期待、再び高まる警戒感など、一本のニュースで空気が一変する相場が続きました。日経平均株価は5万円台前半から7万2,000円台まで大きく振れ、「昨日までの前提が、今日のニュースで変わる」という相場の怖さと魅力を実感した方も多かったのではないでしょうか。
これほど相場が動けば、大きな利益を得るチャンスも生まれます。しかし、戦争、停戦、海峡封鎖、要人発言といったニュースは、いつ飛び出すかはわかりません。こうした突発的な材料は、事前に投資戦略へ組み入れづらいものです。仮にうまく値動きを捉えて利益が出たとしても、次に同じ戦略をいつ使えるか分からないという問題があります。
そこで注目したいのが、決算発表や経済指標、中央銀行の金融政策決定会合など、発表日時があらかじめ決まっているイベントです。発表内容を正確に予想するのは難しくても、「相場が動くかもしれない日」は事前に知ることができます。こうした場面で有効となるのが「ストラドルの買い」戦略です。
―上か下かではなく、「大きく動くか」に投資する―
ストラドルの買いとは、限月と行使価格が同じコールとプットを、同枚数ずつ買う戦略です。株価が大きく上昇すれば、主にコールの値上がりが利益につながります。反対に、株価が大きく下落すれば、主にプットの値上がりが利益につながります。つまり、ストラドルの買いは、「株価が上がるか、下がるか」ではなく、「大きく動くか」に投資する戦略です。
コールとプットの両方を買うため、最大損失は原則として、最初に支払った両方のオプション代金に限定されます。一方、株価が上下どちらかへ大きく動けば、一方のオプションの値上がりが、もう一方の値下がりを上回る可能性があります。そのため、決算発表など、結果の方向は読みにくいものの、大きな値動きが予想される場面で活用を検討できます。
【図1 ストラドルの買い:ロングストラドルの基本的な損益イメージ】
―マイクロンの決算前にストラドルを買ったら―
具体例として、2026年6月24日に発表された、米国の半導体メモリー大手マイクロン・テクノロジーの決算を見てみましょう。
マイクロンは、米国時間6月24日の夕方、日本時間では25日の早朝に、2026会計年度第3四半期決算を発表しました。マイクロンは米国企業ですが、同社の決算は日本株とも無関係ではありません。決算が市場の期待を上回れば、関連株が上昇する可能性があります。一方、期待に届かなければ、大きく売られる可能性もあります。
発表前に上昇か下落かを決めるのは簡単ではありません。そこで、決算発表前に、AI関連株として売買されやすいソフトバンクグループのコールとプットを買った事例を見てみましょう。
マイクロンの決算発表を控えた6月23日、ソフトバンクグループ株の終値は6,513円でした。この日、2026年7月限・行使価格6,500円のコールは515.5円、同じ行使価格のプットは433円の約定がありました。このコールとプットを同日中にそれぞれ買ったとすると、ストラドルの取得価格は合計948.5円となります。株価6,513円に対して行使価格は6,500円ですから、株価に近い、ほぼATMのストラドルです。
マイクロンが発表した第3四半期の売上高は414.6億ドルとなり、前年同期の93.0億ドルから約4.5倍に増加しました。さらに、次の第4四半期についても、売上高500億ドル前後という強い見通しを示しました。この記録的な決算と業績見通しを受け、6月25日の東京市場ではAI・半導体関連株が大きく買われました。日経平均株価は4.6%上昇し、ソフトバンクグループも約8%上昇しました。
6月25日のソフトバンクグループの終値は7,118円でした。同日の清算値段で、先ほどのストラドルを評価すると、次のようになります。
株価が上昇したためプットは値下がりしましたが、コールの値上がりがプットの値下がりを上回り、ストラドル全体の評価額は増加しました。評価益は
1,109.5 – 948.5 = 161.0円
となります。取得価格に対する評価収益率は約17%です。発表前に上昇か下落かを決めずにポジションを組み、結果として上方向への大きな値動きによって、ストラドル全体の評価益が生まれた計算になります。(ただし、これは6月25日に実際に両方のオプションを売却できたことを示すものではありません。実約定価格で組んだポジションを、取引所が公表する清算値段で評価した試算であり、実際には取引コストがさらにかかる可能性があります。)
―イベントがあれば、いつでも利益になるわけではない―
このように、決算発表のように発表時期があらかじめ決まっているイベントは、ストラドルの活用を検討しやすい場面です。決算発表以外にも、米国雇用統計、消費者物価指数、日銀や米連邦準備制度理事会の会合など、相場が大きく動く可能性のある予定イベントは数多くあります。
しかし、どのようなイベントでも、ストラドルの買いが利益につながるわけではありません。市場参加者の多くが同じ結果を予想している場合、その内容はすでに株価やオプション価格に織り込まれている可能性があります。発表内容が予想どおりで、実際の値動きが市場の想定を下回れば、イベント通過後にコールとプットの両方が値下がりすることもあります。
例えば、2026年6月16日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を1.0%程度へ引き上げることが決定されました。一般に金利上昇は株価の下押し要因になり得ますが、このときの利上げは事前に広く予想されており、大きなサプライズではありませんでした。そのため、政策変更の影響はすでに株価やオプション価格に織り込まれており、発表後の市場反応も限定的でした。
ストラドルで重要なのは、単に「株価が動くか」ではありません。「市場があらかじめ見込んでいた以上に動くか」という点です。
予定されたイベントの強みは、結果を当てやすいことではなく、事前に準備する時間があることです。発表前にはイベントの日程を確認するだけでなく、市場ではどのような結果が予想されているのか、その予想がすでに株価やオプション価格にどの程度織り込まれているのかにも目を向ける必要があります。
戦争や突発的なニュースがいつ起こるかを予測することはできません。一方、決算発表や経済指標、金融政策会合の日程は、あらかじめ確認できます。経済指標カレンダーや決算発表予定を見るときには、数字の良し悪しだけでなく、「市場の予想を超える値動きが起こりそうか」という視点も加えてみてください。相場の方向だけでなく、値動きの大きさに注目することで、かぶオプの新たな活用のチャンスが見えてくるかもしれません。
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