日本唯一の振替機関
購入した株式はどこで管理されている? 知らないうちに誰もがお世話になっている「ほふり」の役割
遺族の証券口座が分からない時は、ほふりに連絡を
ほふりには、私たちの“困りごと”を直接助けてくれる機能もある。その1つが「開示請求」だ。
たとえば家族が亡くなった時、「生前に株を持っていたらしいが、どこの証券会社に口座を開設していたのか分からない」と困るケースは少なくない。そんな時、ほふりに開示請求を行うと、故人の口座が開設されている証券会社を確認することができる。先述したように、上場会社(発行会社)が株主名簿を作るために、ほふりにおいて個人と証券口座の記録を登録している。その情報をもとに開示を行うのだ。
「私たちがお伝えできるのは、『その方がどの証券会社に口座を開設しているか』の情報のみですが、それでも、証券会社が判明すれば、そちらに問い合わせることで手続きなどを進められます」(小泉さん)
開示請求の方法や費用については、ほふりのホームページに詳しく記載されている。必要な人はそれを見るとよいだろう。なお近年は、開示請求の問い合わせ件数が増加傾向にあるとのこと。オンラインの証券口座が増えたため、故人が生前どの証券口座を使っていたのか、遺族が把握できないケースが増えているのかもしれない。
これからも続ける、「市場を止めない」努力
より円滑な取引を実現するため、ほふりではさまざまな改善を行っている。たとえば株式市場では、売買が成立(約定)してから実際に株式が受け渡されるまでに一定の期間が設けられている。現在、日本では約定から2営業日後に受け渡しが行われる仕組みだが、この期間は市場全体で効率化を進める中で、少しずつ短縮されてきた。
「ほふりだけの取り組みではありませんが、市場参加者の皆さまと連携しながら、マーケット全体で期間の短縮を進めてきました」(小泉さん)
一方で、こうした効率化以上に重要なのが「市場を止めない」ことだ。株式市場は、一日たりとも止めることができない社会インフラ。自然災害やシステム障害などの事態が起きても、市場を止めず、投資家が安心して取引できる環境を維持しなければならない。
ほふりでも、そのための仕組みの構築に注力し続けている。
「日本は災害の多い国です。だからこそ、どんな状況でも止めない体制を作ることが重要だと考えています。実際に、当社でもシステムのバックアップ拠点を設け、メイン拠点で有事が起きた場合も、サブ拠点で運用を継続できる体制を敷いています」(小泉さん)
証券市場のインフラを支える、ほふり。その存在を知る人は、決して多くないかもしれない。しかし、ほふりの名前を知らないのは「何も問題が起きていないからでもあり、それは私たちにとって望ましい状況ともいえます」と、齊藤さんは明るい表情で伝える。これからもほふりは、市場の裏側で、静かに、しかし重要な役割を全うしていく。
※記事の内容は2026年7月現在の情報です
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)




