「投資のヒント」
不安定な外部要因が続く中での資産形成(2026.7) ~経済環境は改善傾向に~
提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント
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6月下旬、日経平均株価は過去最高値となる72,366円で取引を終えました。3月末にトランプ米大統領がイランに対する軍事作戦の終了見通しを示唆してから、株価の上昇が続きました。6月中旬には、米国・イランの双方が戦闘終結に関する覚書に合意したことで、日経平均株価はその後最高値を付けました。
この間、株式市場をリードしたのは、AI(人工知能)・半導体関連銘柄でした。米国で普及が始まったAIは、短期間のうちに世界中に広がる動きとなりました。AIは、文章、音声、画像、動画など、多様なデータ形式を扱い、人間の能力をはるかに超える速度で膨大なデータを処理します。ゆえに、大量のデータの保存、活用を行うにあたり、膨大な量の半導体や、これらを扱うデータセンター、通信に使う電線、電力などの設備といったインフラが必要になります。株式市場では、これらに対する需要増加を織り込む形となりました。
一方、こうした動きに対して警戒も出ています。日経平均株価は6月末までのところで、年初来約4割の上昇となっているなか、AI関連銘柄の割高感を指摘する向きも出てきています。中東では停戦合意後も、一部では戦闘が続いており、株式市場での不安材料はなかなか消えそうにありません。
◆長期・分散・積立のメリットを活かした資産形成
不安定な外部要因を背景に株価は大きく上下する場面が増えてきています。しかしその一方、日本の2025年度名目GDP(国内総生産)は約670兆円となり5年連続で過去最高を更新、全体としての経済は着実に改善傾向にあるとみられます。長期の資産形成を行う素地は整っているといえそうです。
◆GPIFの基本ポートフォリオ
約294兆円(2026年3月末時点)の資産を運用し、「世界最大の機関投資家」と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、政府の財政検証を受けて、2020年3月31日に「基本ポートフォリオ」を見直しました。国内債券比率を35%から25%に引き下げ、その分、外国債券比率を引き上げました。発足当初の基本ポートフォリオと比べると、国内債券を大幅に減らし、国内外株式・債券を25%ずつとしたことになります。ポートフォリオの見直しは、将来においてどのような運用効果を期待したものなのでしょうか。
◆GPIFが海外資産の比率を引き上げた理由
GPIFは将来の年金給付金に備え、「安定運用」を行うことが最大の使命です。現在の組織となった2006年度の国内債券比率は67%で、国内株式や短期資産と合わせると資金の8割強を国内資産に投じていました。しかし、日本では長らく低金利環境が続き、従来のポートフォリオでは、年金財政上必要な運用利回りである「賃金上昇率+1.7%」を達成することが難しい状況でした。そのため、経済状況に合わせてポートフォリオを変更したと考えられます。GPIFは見直しについて、「年金財政上必要な利回りを満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定した結果」であるとしています。
なお、GPIFは2025年3月31日に、「第5期中期計画」を発表しました。この中で、2025年度からの5年間の基本ポートフォリオについて、国内外の株式、債券の比率を25%ずつにするとしました。金利上昇で債券から得られる利払い収益が増えていることや、株式で高い利益を得る必要性などを総合的に判断したとしています。また、運用目標は「賃金上昇率+1.9%」に引き上げられています。
◆長期・分散・積立投資の効果(日経平均株価)
先行き不透明な状況での長期・分散投資について、日経平均株価の過去30年間を例に見てみましょう。
日経平均株価は、1990年代は下落傾向で、2002年には10,000円を割り込みました。その後、一旦持ち直すものの、2008年のリーマンショック後には一時7,000円近辺まで下落しました。2012年のアベノミクスを境に株式市場は上昇に転じ、2015年には20,000円を回復しました。2023年以降は日本のデフレ脱却期待などを背景に株価の上昇が続き、2024年3月には40,000円を上回りました。2025年後半は高市首相の積極財政が好感され50,000円を上回り、2026年2月に総選挙で与党が圧勝すると株価はさらに上昇へと向かいました。2026年6月末時点では、70,062円となっています。
1996年6月から毎月5万円ずつ日経平均株価に連動する金融商品を買い続けた場合、30年間の合計投資金額(元本)は1,800万円になります。
株価が下落した際にも買い続けるため、その局面ではより安い単価で購入している(=多くの口数が買える)ことになります。結果として2026年6月末時点の価値は、約8,232万円になり、投資金額を約6,432万円上回る(元本の約4.6倍)計算となります。(年間収益率は約8.5%※複利計算)
あくまで過去の事例ではありますが、1990年代以降低迷していた日経平均株価であっても、長期に時間を分散した投資を行うことで、投資金額を大きく上回る資産形成をすることができています。
◆長期・分散・積立投資の効果(NYダウ)
長期・分散投資について、NYダウを例に見てみましょう。
NYダウは、1990年代は概ね上昇傾向となり、1999年には10,000ドルを超えました。2007年に一時13,000ドルを上回るものの、2008年のリーマンショック後は大幅下落となり、2009年には7,000ドルを下回る安値をつけました。その後はIT関連銘柄の台頭により上昇し、高値を切り上げました。2020年にはコロナショックで急落したものの、短期間で上昇に転じました。2025年に入ってからはトランプ関税への懸念などから一時下落しましたが、その後は持ち直し、2026年2月には、50,000ドルを上回りました。2026年6月末は52,319ドルとなっています。
1996年6月から毎月5万円ずつNYダウに連動する金融商品を買い続けた場合、30年間の合計投資金額(元本)は1,800万円になります。
株価が下落した際にも買い続けるため、その局面ではより安い単価で購入している(=多くの口数が買える)ことになります。結果として2026年6月末時点の価値は、約1億406万円になり、投資金額を約8,606万円上回る(元本の約5.8倍)計算となります。(年間収益率は約9.6%※複利計算)
概ね上昇を続けたNYダウへの投資を継続した場合は、投資金額を大きく上回る資産形成ができたことになります。
◆長期・分散・積立投資の効果(資産分散)
長期・分散投資について、世界の株式と債券に分散投資した場合を例に見てみましょう。
1994年から2000年にかけて世界株式は概ね上昇傾向となり、「分散投資評価額」も増加が続きました。2000年以降は、先進国の経済成長率が鈍化した一方、グローバル化の進展で新興国の成長率が急ピッチで加速し、世界株式を支えました。世界債券は先進国の長期金利低下が続いたことで、堅調に推移しました。その後、米国、中国など先進国、新興国ともに株価が上昇していましたが、2008年のリーマンショックで世界株式は急落しました。しかし、世界債券が下支えとなり、評価額の下落は抑えられました。2010年以降は、先進国、新興国ともに経済が回復し、評価額は上昇傾向となっています。
1996年6月から毎月5万円を2.5万円ずつ世界の株式と債券に連動する金融商品を買い続けた場合、30年間の合計投資金額(元本)は1,800万円になります。
資産価格が下落した際にも買い続けるため、その局面ではより安い単価で購入している(=多くの口数が買える)ことになります。結果として2026年6月末時点の価値は、約8,403万円になり、投資金額を約6,603万円(元本の約4.7倍)上回る計算となります。(年間収益率は約8.6%※複利計算)
このように、世界の株式、債券に分散投資することで、経済成長による株式上昇での収益を享受でき、一方で景気後退時には、債券保有効果によって大幅な下落を回避できることがわかります。
資産価格は、短期的には上昇・下落を繰り返すことがあります。だからこそ、長い視点に立った資産形成が重要となります。
チーフストラテジスト 上野 裕之
(提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント)
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