ソフトウェア企業の“ピンチ”であり“チャンス”にもなるタイミング
AIエージェント普及によって「SaaSの死」は本当に起こるのか?
ソフトウェア企業の生き残り策は「料金体系」の変更
すぐにSaaS型ソフトウェアの需要がなくなるということはなさそうだが、AIエージェントの導入によるアカウント数の減少は想定されるため、冒頭にあったように「従来のビジネスモデルでは厳しくなってきている」のは間違いないだろう。
「アカウント数は減る可能性が高いですが、AIエージェントがSaaS型ソフトウェアを用いるようになると、処理されるデータ量は増加すると考えられます。その変化に合わせて、処理したデータ量や件数に応じて料金が変化する従量制に変えることで、ソフトウェア企業も売上を伸ばすことができるでしょう」
実際に、定額課金制から従量制への移行を進めている企業が出てきているという。
「これは生成AIの例ですが、対話型生成AIでは定額課金制でサービスを提供してきたOpenAIやアンソロピックなどでも、使用したトークン数に応じて料金を課金するようになっています。企業におけるソフトウェアなどでは、急速な利用の拡大などにより、データセンターの負荷が大きくなってしまったからです。処理するデータ量は今後も拡大が続くと考えられることから、ソフトウェア企業でも従量制の料金体系に移行するところは出てくるでしょう」
データ量をセーブしつつ、売上にもつながる従量制は企業にとってはプラスに働くが、ユーザー側からすると負担増加の可能性があり、デメリットと受け取られないだろうか。
「ただし、従量制の料金体系だと、『料金が青天井じゃないか』と、警戒されるかもしれませんよね。そうならないため、企業側はあらかじめユーザー1人当たりの使用データ量を導き出し、それをもとにした料金を明示することで、ユーザー側も予算を立てやすくなります。想定していたデータ量をオーバーした際に、追加で料金を徴収するといった形式にすると、ユーザーも納得しやすいでしょう。携帯電話の料金体系のようなイメージですね」
「AIエージェント」「サイバーセキュリティ」の開発もカギ
ソフトウェア企業が生き残っていくためには、料金体系を変化させるだけではなく、SaaS型ソフトウェア以外のシステムやプログラムの開発もカギになってくるとのこと。
「SaaS型ソフトウェアを使う立場になるAIエージェントを、ソフトウェア企業自身が開発・導入するという動きが出てきています。例えば、セールスフォースやサービスナウなどが事例として挙げられます。既に広く展開されているSaaS型ソフトウェアと親和性の高いAIエージェントとなると、ユーザー側としても導入のハードルが下がりますよね。ソフトウェア企業にとってはユーザーとのつながりを保ったまま、売上を伸ばすことができるというわけです」
今後は、サイバーセキュリティの重要性もますます高まっていくと予想される。AIエージェントがあれば、バイブコーディング(AIにプロンプトを与えてソフトを生成させる手法)でセキュリティソフトも自前で作成できるという話があったが、実際はそこまで簡単ではないため、ソフトウェア企業の腕の見せ所だという。
「サイバーセキュリティ企業は単にソフトウェアをつくっているだけではなく、世界中で起きているサイバー攻撃などの情報を収集し、リアルタイムでそこに対応するソフトウェアの開発や修正を行っています。つまり、AIにコーディングさせて、サクッとできるようなものではないというわけです。サイバーセキュリティは、AIエージェントが普及したとしても簡単には置き換えられない分野だと考えられるので、ソフトウェア企業がそこに取り組んで有用なソリューションを提供することができれば、大きなチャンスになるといえるでしょう」
「SaaSの死」といわれているいま、ソフトウェア企業にとってはピンチであるとともに、一歩抜きん出るチャンスと捉えられるかもしれない。今後のソフトウェア企業の動向に注目だ。
(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)
1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。





