マイノリティ出資とは?目的・メリットやマジョリティ出資との違いを解説
マイノリティ出資とは、議決権比率が50%未満となる範囲で対象企業の株式を取得する方法です。新規事業への参入やシナジー効果の創出などを目的として、選択されることがあります。
「マイノリティ出資」と聞くと、「少数の株式を保有するだけで意味があるのだろうか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。企業の成長戦略やM&Aを正しく理解するためにも、マイノリティ出資のメリットやマジョリティ出資との違いを知っておくことが大切です。
本記事では、マイノリティ出資の目的やメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
マイノリティ出資とは
マイノリティ出資とは、対象企業の株式のうち少数の株式を保有することを指します。特に、議決権比率が50%未満となる範囲で株式を取得する方法をマイノリティ出資と呼ぶことが一般的です。
普通決議は、全議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数が賛成した場合に原則として可決されます。そのため、議決権比率の50%未満しか保有しないマイノリティ出資では、対象企業に対して直接的な支配権を持たないことがポイントです。
マイノリティ出資を選択する目的
企業がマイノリティ出資を選択する主な目的は、以下の通りです。
・新規事業へ参入する
・シナジー効果を創出する
それぞれ解説します。
新規事業へ参入する
リスクを抑えつつ新規事業へ参入することが、マイノリティ出資を選択する目的のひとつです。
新規事業を自社単独で立ち上げて、軌道に乗せるためには時間やコストがかかります。そこで、マイノリティ出資をきっかけに対象企業と接点を持つことによりノウハウなどを習得すれば、スムーズに新しい事業へ進出できる可能性があるでしょう。
シナジー効果を創出する
シナジー効果を創出することも、マイノリティ出資を選択する目的として挙げられます。
シナジー効果とは、複数の企業や事業を組み合わせることにより、単独で活動していた以上の相乗効果を生み出すことです。マイノリティ出資で出資先企業のノウハウと自社のノウハウを組み合わせたり、リソースを統合したりすることで、それぞれが単独で活動するよりも大きな効果を生み出せる可能性があります。
そのほか、将来キャピタルゲインを得ることを目的として、成長を期待できるスタートアップにマイノリティ出資することもあるでしょう。
マイノリティ出資とマジョリティ出資の違い
マイノリティ出資とマジョリティ出資の主な違いとして、取得する株式の数が挙げられます。一般的に、マイノリティ出資は議決権比率50%未満の範囲で株式を取得するのに対し、マジョリティ出資は議決権の過半数を取得する点が特徴です。
また、マジョリティ出資の場合は、株主総会の普通決議を単独で可決できます。一方で、マイノリティ出資より多くの株式を必要とする分、コストは高くつくことが一般的です。
マイノリティ出資する側のメリット
マイノリティ出資を選択する側のメリットは、以下の通りです。
・複数の企業に出資してリスク分散を図りやすい
・将来のM&Aにつなげやすい
それぞれ解説します。
複数の企業に出資してリスク分散を図りやすい
マジョリティ出資と比べて、リスク分散を図りやすい点がマイノリティ出資をするメリットです。
マイノリティ出資は、議決権比率50%未満での出資を目指すため、株式の取得費用を抑えられます。そのため、1社だけに出資せず複数の会社に出資してポートフォリオを構築すれば、リスク分散につながるでしょう。
なお、ポートフォリオの構築は個人の投資においても大切な概念です。ポートフォリオについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
将来のM&Aにつなげやすい
将来のM&Aにつなげやすいことも、マイノリティ出資を選択するメリットとして挙げられます。M&A(Mergers and Acquisitions)とは、複数の企業がひとつになること(合併)や、一方が他方を買うこと(買収)です。
M&Aを成功させても、統合作業までうまくいくとは限りません。M&A後に様々なリスクがあることが判明したり、従業員の理解を得られず現場が混乱したりすることがあるためです。
経営権をいきなり取得せずにマイノリティ出資から対象企業と関わりを持っておけば、対象企業のことをより深く理解し、現場の理解も得やすくなる可能性があります。
マイノリティ出資する側のデメリット
マイノリティ出資する側のデメリットは、以下の通りです。
・出資先への影響力が限定される
・必要な情報を入手できないことがある
それぞれ解説します。
出資先への影響力が限定される
マイノリティ出資では、出資先に対する影響力が限定される点がデメリットです。
一般的に、マイノリティ出資では議決権の過半数を保有しないため、株主総会の普通決議を単独で安定的に成立させることはできません。そのため、役員の選任・解任や役員報酬の決定などにおいて、ほかの株主の反対により、出資者の意向を十分に反映できない可能性があります。
必要な情報を入手できないことがある
マイノリティ出資では、経営に関する重要な情報を十分に入手できないことがあります。月次業績や資金繰り、事業計画の変更などの情報が、すべての株主に随時共有されるとは限らないためです。
例えば、将来的なM&Aを見据えて出資した場合でも、情報が不足していれば、出資先の経営状況や潜在的なリスクを適切に把握できない可能性があります。また、新規事業への参入に必要なノウハウの獲得を目的としていても、営業秘密などを理由に期待していた情報が提供されないこともあるでしょう。
マイノリティ出資を受け入れる側のメリット・デメリット
マイノリティ出資を進める際の主なポイントは、以下の通りです。
・目的を明確にしておく
・出資先の情報を分析する
・専門家のアドバイスを受ける
・出資先と良好な関係を築く
それぞれ解説します。
目的を明確にしておく
マイノリティ出資を進める際は、出資の目的をあらかじめ明確にしておくことが大切です。
マイノリティ出資の目的は、新規事業への参入やシナジー効果の創出、株式売却によるキャピタルゲインの獲得のように、企業によって異なります。目的を明確にしておけば、期待した成果が得られているかを評価しやすくなり、投資の継続や追加出資、撤退についても判断しやすくなるでしょう。
出資先の情報を分析する
マイノリティ出資を進める際は、出資先に関する情報を十分に分析することも大切です。
対象企業が抱えるリスクを整理した上で出資の可否を判断すれば、想定外の損失が生じることを避けられる場合があります。財務状況に加え、事業内容・市場環境・競争力・将来性などを多角的に分析し、出資先として適切かを慎重に検討するとよいでしょう。
専門家のアドバイスを受ける
マイノリティ出資を進める際は、専門家のアドバイスを受けることも大切です。
出資にあたっては、対象企業とのトラブルを防ぐため、出資条件や当事者の権利・義務などを定めた出資契約書を締結することがあります。事前に弁護士へ相談し、契約内容を十分に確認することで、自社に不利な条件を見落とすリスクを抑えられるでしょう。
また、出資後に対象企業のM&Aを検討している場合は、法務や財務、税務などの専門家からの助言も必要です。
出資先と良好な関係を築く
マイノリティ出資を進める際は、出資先と良好な関係を築くことも重要です。
出資しただけで、必要なノウハウや経営情報が自動的に共有されるわけではありません。出資先の協力が得られなければ、期待していたシナジーを創出できない上に、将来的なM&Aの検討に必要な情報を入手できない可能性があります。
出資後も定期的に対話の機会を設けてお互いを理解したり、信頼を得たりすることで、連携や情報共有が進み、シナジーの創出や円滑なM&Aにもつながりやすくなるでしょう。
マイノリティ出資は議決権比率が50%未満の出資
マイノリティ出資とは、議決権比率が50%未満の範囲で株式を取得する出資のことです。株主総会の普通決議を単独では可決できない点が、マジョリティ出資と異なります。
マジョリティ出資と比較して株式を取得するのにかかるコストを抑えられる分、複数の企業に出資してリスク分散を図りやすい点がマイノリティ出資のメリットです。一方で、出資先への影響力が限定される点がデメリットとして挙げられます。
今後、仕事の現場やニュースなどで出資の話題が出た際は、議決権比率にも注目してみてはいかがでしょうか。
参考:経済産業省「外国企業と日本企業の協業連携事例集~外国企業との協業により経営力を強化!さらなる企業の成長のヒント~(2024年4月)」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。


