株式公開買付(TOB)とは?目的や方法をわかりやすく解説

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株式公開買付(TOB)とは、買付価格・買付期間・買付予定数などをあらかじめ公表した上で、対象企業の株主に株式の売却を募って主に株式市場外で買い付ける手続きのことです。経営権の取得や株主総会における議決権確保などを目的に、実施されることがあります。

株式投資やM&Aについて学んだり、関連するニュースに注目したりしていると、「TOB」について目にする機会があるでしょう。TOBは企業買収の代表的な手法のひとつで、株主の判断にも関わる制度のため、基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。

本記事では、TOBの目的や方法、株主にとってのメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

株式公開買付(TOB)とは

株式公開買付とは、買付価格や買付期間、買付予定数などをあらかじめ公表し、対象企業の株主に株式の売却を呼びかけて株式市場外などで買い付ける手続きです。英語の「Takeover Bid」を略して「TOB」と呼ばれます。

TOB制度の主な目的は、買付けに関する情報を事前に開示するとともに株主に公平な売却機会を提供することで、企業の支配権に影響を及ぼす取引の透明性・公正性を確保することです。

なお、2026年5月1日に施行された改正金融商品取引法により、議決権所有割合の基準が従来の3分の1超から30%超へ引き下げられました(30%ルール)。また、原則として適用対象外だった市場内取引(立会内)も、30%ルールの対象に加わっています。

そのため、買付け後の株券等所有割合が30%を超える一定の買付け等については、原則として市場内・市場外を問わず、TOBの方法によらなければなりません。

TOBの目的

対象企業の経営権を取得することが、TOBを実施する代表的な目的のひとつです。

株主が会社に対して行使できる権利や影響力は、保有する議決権の割合によって異なります。例えば、議決権の過半数を保有すれば、原則として株主総会の普通決議を単独で成立させられるため、実質的に対象企業の経営を支配可能です。

このような経営権の取得を目的とした株式の買付けでは、買付け後の株券等所有割合が30%を超えることが一般的なため、30%ルールに基づいて原則としてTOBを実施しなければなりません。

また、株主総会で一定の影響力を確保することや、資本・業務提携を強化することを目的としてTOBを実施する場合もあります。

買収手段としてTOBを選択するメリット・デメリット

ここから、買収手段としてTOBを選択するメリットとデメリットについて、詳しく解説します。

メリット

買付けに必要な資金を見積もりやすいことが、買収手段としてTOBを選択するメリットです。TOBではあらかじめ設定した価格で株券等を買い付けるため、市場価格の変動による影響を受けにくく、必要な資金をある程度事前に把握できます。

また、TOBでは買付予定数に下限を設定できる点もメリットです。応募株数が下限に達しなかった場合に買付けを行わない条件を設けることで、大きな資金を支出したのに一部の株式だけの取得にとどまり経営権を握れないというリスクを抑えられます。

デメリット

買付けに一定のコストがかかる点が、買収手段としてTOBを選択するデメリットです。より確実に買収を成功させるためには、高値を提示して株主の関心を集めなければなりません。

また、TOBには対象企業との合意に基づいて進める友好的TOBと、対象企業の同意を得ずに実施する敵対的TOB(敵対的買収)があります。敵対的TOBを実施する場合は、コストや手間をかけたのにもかかわらず、対象企業に防衛策をとられて買収に失敗することがある点にも注意が必要です。

 

TOBが発表された場合の株主の選択肢

保有株式を対象とするTOBが発表された場合、株主はTOBに応募して提示された公開買付価格で売却できます。また、対象株式が市場で取引されている間は、TOBに応募せず、通常どおり証券会社を通じての売却も可能です。

このほか、株式を売却せずにそのまま保有する選択肢もあります。ただし、TOB成立後に上場廃止となる場合もあるため、その後の方針を確認しておかなければなりません。

株主にとってのTOBのメリット・デメリット

ここから、株主がTOBに応募するメリットとデメリットについて解説します。

メリット

市場価格よりも高い価格で株式を売却できる可能性があることが、TOBに応募するメリットです。TOBでは、既存株主からの応募を促すため、市場価格にプレミアムを上乗せした公開買付価格が設定されることがあります。

また、あらかじめ提示された価格を確認した上で、売却するかどうかを判断できる点もメリットです。市場で売却する場合は取引のタイミングによって価格が変動するため、売り時の判断に迷うことがあります。

デメリット

必ず株式を売却できるとは限らない点は、株主がTOBに応募するデメリットです。応募株数が買付予定数の下限に達しなければTOBが成立せず、上限を超えた場合は一部しか買い取られないことがあります。

また、公開買付価格が市場価格を上回るとは限らない点にも注意が必要です。買い手が、特定の売り手から一定量を買付けることを目的として、市場の価格より低い価格を提示するディスカウントTOBを実施することがあります。

TOBの一般的な流れ

TOBを実施するまでの一般的な流れは、以下の通りです。

1. 買い手が公開買付開始公告を実施する
2. 買い手が公開買付届出書を提出する
3. 対象企業が意見表明報告書を提出する
4. 株主がTOBに応募するか判断する
5. 買い手が買付結果を公表する

ここから、各手順について詳しく解説します。

1. 買い手が公開買付開始公告を実施する

買い手はTOBの実施を決定すると、公開買付開始公告を行います。公開買付開始公告とは、株主や投資家へ必要な情報を提供し、取引の透明性を確保するための手続きです。

公開買付開始公告には、主に以下の内容を記載します。

・TOBの目的
・買付価格
・買付期間
・買付予定数
・買付条件

株主や投資家は公告を通じてTOBの実施を正式に把握し、提示された条件を確認します。

2. 買い手が公開買付届出書を提出する

公開買付開始公告を行った当日、買い手は管轄の財務局に公開買付届出書を提出します。書類に記載されるのは、目的・公開買付価格・買付予定数・公開買付期間・買付条件など、株主の判断材料となるTOBの詳しい情報です。

提出手続きには、原則としてEDINETを利用します。提出された公開買付届出書は公衆縦覧に供されるため、株主や投資家も内容を閲覧可能です。

3. 対象企業が意見表明報告書を提出する

公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内に、対象企業は意見表明報告書を提出しなければなりません。TOBへの賛否や理由、買い手に確認したい質問事項など、対象企業としての見解を詳しく記載します。

なお、意見表明報告書に質問が含まれている場合に、買い手は回答内容をまとめて5営業日以内に対質問回答報告書を提出しなければなりません。

4. 株主がTOBに

株主は、TOBの内容を踏まえて応募するか判断します。買い手に作成が義務付けられている公開買付説明書も、株主にとっての判断材料のひとつです。

TOBへの応募を決めた株主は、指定された証券会社に口座を開設して所定の手続きを進めることで保有銘柄を売却できます。ただし、TOBが不成立になる可能性に注意が必要です。

5. 買い手が買付結果を公表する

募集期間を終えた買い手は、集まった応募を集計してTOBの成否や取得する株式数を明らかにします。また、応募株数・買付株数・決済方法などを記載した公開買付報告書を財務局へ提出しなければなりません。

買付予定数の下限を定めているケースでは、応募株数がその水準を満たすと買付けが成立し、事前に示された決済開始日から売却代金が支払われます。下限に達しなかった場合は設定した条件が適用されるため、応募を受けた株式の取得は行われません。

TOBとMBO・LBO・IPOの違い

TOBと関連して使われる用語に、MBOやLBO、IPOがあります。

MBOとは、対象企業の経営陣が自社の株式を取得して経営権を得る手法です。一方、LBOとは、対象企業の資産や将来生み出すキャッシュフローを裏付けとして資金を調達し、買収を行う手法を指します。

MBOは「誰が買収するか」、LBOは「買収資金をどのように調達するか」に着目した用語です。これに対してTOBは株式の取得方法のことで、MBOやLBOを伴う買収で利用されることもあります。

IPOとは、未上場企業が証券取引所に株式を上場し、株式を公開することです。TOBが主に上場会社の株式取得に用いられるのに対し、IPOは未上場企業が新たに株式を公開する手続きである点が異なります。

なお、MBOの詳しい内容について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

マネジメント・バイアウト(MBO)とは?仕組みやメリット・デメリットを解説

株式公開買付(TOB)は条件を公表して株式を買い付ける手法

株式公開買付(TOB)とは、買付価格や買付期間、買付予定数などをあらかじめ公表し、対象企業の株主に株式の売却を呼びかけて株式市場外などで買い付ける手続きです。

保有する株式がTOBの対象となった場合、市場価格よりも高い価格で株式を売却できる可能性があることが株主にとってのメリットとして挙げられます。ただし、応募株数が買付予定数の下限に達しなければTOBが不成立となるため、必ず売却できるとは限りません。

また、公開買付価格が市場価格を下回るケースがあることも考慮し、慎重にTOBに参加すべきか、市場で売却するか、継続して保有するかを判断するとよいでしょう。

参考:日本取引所グループ「用語集 公開買付け(TOB)(こうかいかいつけ)」
参考:金融庁「令和6年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」
参考:財務省関東財務局「電子開示システム届出書及び変更届出書の提出・郵送先」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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