金融×AIの可能性を探る
なぜAIにとって金融は「得意領域」なのか 業界で進む技術活用、見えてきた「無人銀行」の未来
ここ数年の世界的なトレンドといえば、「AIの進化」を抜きに語ることはできないだろう。さまざまな領域でAIの活用が進んでおり、その波は銀行、証券、保険といった金融業界にも押し寄せている。
AIは金融業界でどのように使われ、どうサービスを変えていくのか。そこで話を聞いたのが、AIをはじめとする金融機関のイノベーション支援を数多く手掛けるNTTデータ 金融イノベーション本部 ビジネスデザイン室 ビジネスイノベーション統括部長の山本英生氏だ。市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。金融×AI編の1回目は、金融業界におけるAI活用の実態や可能性に迫った。
「データ」で成り立つビジネスが、相性の良さを生む
金融業界は、AIのメリットを享受しやすいーー。
山本氏は、AIと金融業界の“相性”を尋ねられて、このように答える。製造業や小売業、自治体など、幅広い分野でAIが活用されているが、その中でも、金融業界はAIとの親和性が高いという。
「なぜなら、金融で扱っているもののほとんどはデジタルデータ化されているためです。AIは、情報やデータをもとに判断や分析を行うのが得意です。その点で、この業界にはAIが材料にするデータが膨大にあります。また、金融は製造業などと異なり、実物を加工したり運んだりする仕事ではありません。基本的にはデータと情報でビジネスが成り立っています。その環境はAIの活用に適しており、メリットを享受しやすいのです」
こうした背景もあり、AIへ積極的に投資する金融機関は増えている。「特にメガバンクは、相当な金額を投資しています」と山本氏。これは日本だけでなく、海外の大手金融機関も同じだという。
実際に金融機関では、どのような業務でAIが使われているのだろうか。山本氏によれば、現時点でもっとも活用が進んでいるのは社内業務だという。
「たとえば、社員が自社の規定やルールを調べたり、過去の社内資料を検索したりという場面で活用されているケースが多いですね。チャット形式の生成AIを使い、必要な資料や情報を問い合わせるとAIが探してくる形です」
さらに高度なAI活用の事例も出ている。その1つが、株式会社ジャルカード(JALカード)による「AIバーチャル顧客」の取り組みだ。
同社には、約350万人の会員の属性やカード利用履歴など、膨大なデータが蓄積されている。これらを活用し、自社のビジネスを一層成長できないか。そこで活用したのがAIだったという。NTTデータでは、一連のプロジェクトを支援した。
このプロジェクトではまず、会員の属性・購買データをもとに、利用傾向の近い顧客を20のペルソナ(架空の顧客像)に分類。それぞれのペルソナについて、「こんな価値観を持つ人ならどう考えるか」をAIで再現した仮想顧客「AIバーチャル顧客」を作成した。
次に、このAIバーチャル顧客同士でグループディスカッションを実施。「どのような商品なら興味を持つか」「どんなダイレクトメール(DM)なら反応するか」といった意見を聞いていったという。それぞれのAIが発するコメントを見ながら、JALカードのマーケティング戦略に有効なアイデアを抽出していった。
従来は担当者がデータ分析しながら考えていた施策を、今はデータを読み込んだAIが壁打ち相手となって一緒に検討する。そんなマーケティングの形が始まっている。




