「自己負担限度額」の引き上げに加え「年間上限」が新設
医療ジャーナリストが解説!「高額療養費制度」の見直しは“社会保険の変化”の第一歩?
2026年8月、「高額療養費制度」が見直され、自己負担限度額の引き上げが実施された。
「高額療養費制度」とは、ひと月の医療費が高額になった場合に、所得に応じて定められた自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度のこと。今回の見直しによって、今後は自己負担額が増えるということだ。
「高額療養費制度」が見直された背景と今後の影響について、“医療の翻訳家”として活動している医療ジャーナリスト・市川衛さんに聞いた。
ポイントは「所得区分の細分化」と「年間上限の新設」
まずは、今回の見直しの概要を押さえておこう。多くの人に影響のある変更点は、自己負担限度額の引き上げだろう。
●自己負担限度額
※1 年金収入約80万円以下など。
さらに、2027年8月からは所得区分が現状よりも細分化され、さらに自己負担限度額が引き上げられる人も出てくる。
●2027年8月以降の自己負担限度額
自己負担限度額が引き上げられた一方で、年間上限が新設された。月々の医療費は自己負担限度額に届かないものの、長期的な療養が必要という人は、医療費負担が減る可能性が出てきたのだ。
●高額療養費の年間上限
※1 年金収入約80万円以下など。
※2 41万円を超えた分は2027年8月以降に償還払い。
自己負担限度額引き上げの背景にある「医療の高度化」「少子化対策」
「今回の見直しに対し、『なぜ、医療費の個人負担を引き上げるのか』といった疑問の声が上がっています。しかし、そもそも『高額療養費制度』は医療保険制度を有している国のなかでも、所得に応じた月ごとの上限を設けるなどの手厚さがあり、海外では『素晴らしい』と評価されている制度だという前提で見ることが大切です。日本に住んでいるだけで、世界最高クラスの保険サービスを受けているといえます」(市川さん・以下同)
世界的に評価されている制度が見直され、自己負担限度額が引き上げられたのは、もともと国にとって負担のかかる制度だから。
「自己負担限度額を超えた分は医療保険なり税収なりで賄うことになるので、かなりコストのかかる制度です。治療の数や金額が増えていくほどコストがかさみ、医療費として投入するお金が増えすぎたため、自己負担限度額が引き上げられたと考えられます」
医療費が増えている理由は「高齢化」にあると思われがちだが、実は別の理由もあるのだという。
「日本の医療費が上がっている理由には、医療技術の高度化が大きくかかわっています。例えば、これまで治療が難しかった難病を治す薬が開発され、その価格が1億円だとします。1億円は高額ですが、その人の命を救えるとしたらすごいことですし、そのまま働いて寿命まで生きるとしたら社会的にも意義のあることですよね。ただ、医療費の面でいうと、これまでかかっていなかった1億円の医療費が発生するため、コストが増します。医療が進歩するほど、医療費は増えるというわけです。数千万円や1億円かかるような技術が開発されているいま、『高額療養費制度』の重要性が増している反面、コストも増えているので、自己負担限度額を引き上げる判断になったのだと考えられます」
さらにもうひとつ、今回の見直しにつながった理由があるとのこと。
「岸田政権時に始まった『異次元の少子化対策』です。このプランの財源は、新たな増税はせず、社会保障の歳出改革などで確保すると決められました。そして、『高額療養費制度』は法律を変えなくても負担上限を変えられる仕組みがあり、財源をひねり出したい国側が十分な議論を深めないままに推し進めようとしたことが混乱の原因だ、と指摘する声もありました」





