人民元安の進行と深センへの注目度の高まり
人民元の対米ドルレートは2008年以来の人民元安水準に
提供元:アイザワ証券
人民元安の進行
中国で対米ドルの人民元安が進行しており、人民元レートは2008年以来の水準まで元安が進行しています。このことだけみれば、2015年8月や2016年1月の人民元安、人民元切り下げが思い出されますが、今回の元安は当時とは性質が異なっていると思います。大きな違いは、前回、前々回の元安進行は元レートの切り下げや中国の経済指標の悪化といった中国側の要因が主な理由であったのに対して、今回の元安は、トランプ氏の当選に起因した世界的な金利上昇やドル高の進行といった米国側の要因が主な理由であることです。実際、足元の中国の景気は年後半辺りから回復基調が鮮明になっているほか、世界の13の主要通貨に対する人民元の動きを表すCFETS人民元指数は直近数カ月ほとんど動いていません。そのような理由で、今回の人民元安は以前ほど人民元ショックのようになっていないと思われます。また、今後は逆に、人民元安が中国企業の輸出を増加させ、中国の景気回復を後押しする、という効果も期待できると思います。
深センに対する注目度の高まり
なお、11月中にも深センー香港相互取引が開始される予定です。昨年開始された上海―香港相互取引に次ぐ新たな注目イベントです。直近、中国本土株市場では、深セン市場の方が、国民からの注目度、株式市場の勢い共に上海を上回っています。その主な理由は、深セン市場が成長力の高いIT関連など比較的若い新興企業の比重が高く、個人投資家好みの銘柄が多いためです。そして、深セン発祥の代表的IT企業として急成長しているのが、IT国内最大手のテンセントです。この企業は、香港市場に既に上場していますが、同社の時価総額は、9月8日に初めて2兆香港ドル(約26兆円)を上回りました。時価総額でみると、日本で国内最大のトヨタ自動車20兆円強、韓国最大のハイテク企業であるサムスン電子232兆ウォン(約21兆円)などを上回り、上場企業の中でアジア最大になったことになります。深センの隆盛を象徴する変化だと思います。このたびの相互取引の開始は、深セン市場ならびにIT企業に対する注目度をさらに高めるきっかけになりそうです。