プロが語る!資産形成のすゝめ

好調な日本株、過去を振り返って今後の資産形成を考える

提供元:三井住友アセットマネジメント

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好調な日本株

日本株が好調である。日経平均株価は11月7日に22,937円をつけ、1992年1月以来の高値となった。東証株価指数(TOPIX)は11月8日に1,817へ上昇し、1991年11月以来の高値となった。

また、年初来では、日経平均株価、TOPIX共に、20%程度の上昇となっている(11月8日時点)。日本企業の業績が好調であることや、10月の衆議院選挙で連立与党が大勝し、安倍政権が長期化すると共にこれまでの金融財政政策が継続するとの見方が強まったことで、それまで買い控えていた外国人投資家が買いに回ったことが主な要因と見られる。

一方、投資主体別の株式売買動向を見ると、個人投資家は株式を売却しており、依然として慎重な見方が支配的な模様だ。

日本株の上昇の背景

前述の通り、現在の日本株は1991年や92年以来の高値圏にある。裏を返すと、株式市場はそれだけ長い間低迷し、上値を更新出来ていなかったことになる。この間、世界の株式市場は上昇傾向にあった。

例えば、アメリカ株式は、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマン危機等、大きな下落局面があったものの、その都度数年間で上昇トレンドに戻っている。S&P500種指数では、2013年に最高値を更新して以降、上昇を続け、最高値更新を重ねてきた。1996年末と現在を比較すると、TOPIXは約23%しか上昇しておらず、おおむね横ばいであったが、S&P500種指数は約3.5倍となっている。

株式の動向に関し、日本と世界とでは何が異なっていたのか。それは日本以外の国・地域では名目GDPが伸び続けたが、日本の名目GDPは長く停滞を続けたことだ。過去20年、日本の実質GDPは緩やかに成長してきたが、いわゆるデフレ期間が長かったため、物価を加味した名目GDPは殆ど伸びてこなかった。

具体的には、日本の名目GDPは、デフレ期に入る直前の1997年10-12月期に536.6兆円となって以来低迷し、それを上回ったのが2016年の4-6月期である。今年の4-6月期には542.8兆円にまで伸びて、過去最高となった。弊社では今後も日本の名目GDPは伸び、来年の10-12月期には560兆円程度になると見込んでいる。(図表1)

中長期的には株価は企業業績を裏付けとしており、名目GDPが伸びれば企業業績が伸びると期待できる。名目GDPが伸びるとの弊社の見方が正しければ、日本株は今後も上昇傾向をたどると考えることが出来そうだ。

図表1

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今後の資産形成の参考として、過去を振り返る

さて、今後の資産形成について考えたい。上述の通り、弊社は日本株について前向きな見通しだが、この見込みが実現しない可能性もある。そこで、ここでは97年以降のデフレ期を振り返りたい。過去のデフレ期を含めた期間の日本株による資産形成を検証すれば、先々、慎重な見方が実現した際の状況がおおよそイメージできよう。

また、ここでは「積立投資」という資産形成の強力な味方をご紹介したい。「つみたてNISA」が間もなく始まろうとしているため、多くの皆さんもご存知の考え方ではなかろうか。

それでは、1997年から日本株に連動する投資信託に積立投資をしていた場合と、97年に日本株に連動する投資信託に一括投資した場合、そして97年に預金を行った場合の3通りの投資収益を比較する。

なお、投資信託の基準価格は東証株価指数(TOPIX(配当は加味しない))に連動して動くものとし、手数料や税金等は無いものと仮定する。預金金利は、日銀の1年以上2年未満、預入金額3百万円未満の定期預金金利を利用した。こちらも税金はかからないと仮定する。

結果は図表2の通り。積立投資は、毎月1万円を積立ることとした。1997年1月から2017年10月末の250ヶ月(ほぼ21年間)で合計250万円を投資。今年の10月末時点の評価額は約384万円となった。投資収益は約134万円である。

一方、250万円を97年初に一括投資した場合は、10月末で322万円の評価額となり、約72万円の投資収益が得られた。

いずれの場合も、今年の日本株の上昇によってプラスのリターンが得られたが、一括投資の場合は21年間で損失が発生している期間が166カ月(ほぼ14年間)と非常に長く、購入した投資信託を保有し続けるのはかなりの辛抱強さが必要だろう。

なお、97年初に250万円を預金した場合、この10月末で残高は約258万円となり、約8万円の収益が得られる計算となる。積立投資や一括投資と比べてリターンが小さくなったが、反面、損失に陥った月は無く、かつ、一括投資の投資収益を上回った月が175ヶ月と、投資期間の7割にも及んだ。

図表2

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この計算結果からは、以下の示唆が得られそうだ。

① 積立投資は株式などの投資対象資産の価格が持続的に上昇しなくても、比較的良好な投資収益が得られる可能性がある。また、投資対象資産が下落しても損失がある程度抑えられる。投資対象資産が上昇した場合は、比較的高い投資収益を期待する事が出来る。

② 預金は、基本的には投資収益がマイナスにならないため、その他の金融資産の先行きに対して悲観的な場合は、資産の退避場所になりうる。

このように、日本株の投資信託への積立投資は、97年以降のデフレ期において、投資対象資産である株式市場が下落しても一括投資よりも損失が抑えられ、株式市場が上昇すれば比較的早いタイミングで投資収益がプラスとなったことは心強い。今後も、日本の名目GDPの成長に強い確信を持てないとしても、積立投資を上手に活用することにより、投資収益を高めることが期待できそうだ。

用語解説

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