東証ETFのキーパーソンに聞く

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独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントがETFに乗り出した理由・後編

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2009年からETFの運用を行っているシンプレクス・アセット・マネジメント。前編で「ETFビジネスの立ち上げには、なかなか苦労した」と話してくれたのは、ETF部門を統括するディレクター・棟田響さん。

後編となる今回は、日本のETF市場の現在とこれからについて、個人投資家向けの銘柄を多数企画してきた棟田さんならではの視点で語ってもらった。

商品開発の軸の1つは「いち投資家としての目線」


――社内のETFビジネスの立ち上げから現在まで、10年以上ETFに携わっていますが、ターニングポイントになるような商品はありましたか?

「ターニングポイントというと、2012年4月に上場した『TOPIXブル2倍上場投信(1568)』『TOPIXベア上場投信(1569)』ですね。それまで当社のETF全体の純資産残高は100億円くらいでしたが、レバレッジ型・インバース型が世に出るようになって、1年で数百億円、2年で1000億円という水準に上がっていき、ビジネスは軌道に乗りました」

――レバレッジ型・インバース型を上場するに至った経緯とは?

「直接のきっかけは規制緩和ですが、2009年に最初のETF『WTI原油価格連動型上場投信(1671)』を企画している段階から、勝負どころはレバレッジ型とインバース型かなと考えていました。

というのも、当時欧米でレバレッジ型・インバース型のETFが人気だったんですね。さらに、そのETFを扱っている運用会社がブラックロックやステート・ストリート・グローバルのような大手ではなく、比較的小さな会社だったので、国内では当社がそのポジションに入れるのではないかと考えました」

――早い段階から構想があったのですね。

「はい。ETFを初めて上場してから3年くらいが経ち、規制緩和されてから、ようやく出せましたね。それ以来、重点的にレバレッジ型・インバース型の新しいものを出してきて、ありがたいことに安定して人気があります。今は相場が急ピッチで上昇していることもあり、逆張りの目的でベア2倍のETFを活用される方も多いように感じています」

――日経平均もTOPIXもJPX日経400も「ブル2倍」「ベア」「ベア2倍」が用意されていて、多様性に富んでいる印象がありますよね。

「もちろん投資家の皆さんのニーズを読んでいる部分もありますが、自分自身がこういうETFがあったらトレードしたいなと感じるものを積み重ねてきました。最初の原油もそうですし、JASDAQやマザーズのETFも、自分が投資してみたかったんです。

個人の目線で見てトレードしたいと思う銘柄って、私だけでなく、同じように使いたい人がいるのではと思うんですよね。逆に、自分ならこの銘柄は買わないだろうと思うものは、たとえ上場しても買っていただけない。だから、自分が買いたいかどうかという感覚は重視しています」

個人投資家にETFを知ってもらうための工夫


――シンプレクス・アセット・マネジメントではETFの認知を広めるためのサイト「シンプレクスのETF」なども展開していますが、どのような意図で生まれたものなのでしょうか?

「ずっと人気が出そうなETFを模索してきましたが、2016年くらいにひと通りのETFを出してしまった感覚がありました。そのため、新商品という起爆剤を出す以外に、継続的に当社の既存ETFを利用してもらえるように、マーケティング活動をしていかないといけないと考えたのです。

とはいっても、既存のメディアに入り込むのは至難の業だったので、自社のウェブサイトを充実させて、流入を図ろうと。わかりやすい文章でETFを解説するサイトを作れば、見てもらえるチャンスがあると考えて、サイトを立ち上げました」

――「東証マネ部!」でも掲載させていただいている「マンガでわかるETF」は親しみやすい内容で、私も勉強させていただきました。

「ありがとうございます。実は、あの原稿はすべて僕が考えました。絵はプロの方にお願いしましたが、最後まで読んでもらえるように、説明だけでなくネタも織り込みながら、試行錯誤しましたね」

――有名なアニメやゲームのパロディも満載で、楽しく読ませていただきました。サイトもETFの商品も主に個人投資家をターゲットにされているかと思いますが、現在の日本の個人投資家の傾向はどのように捉えていますか?

「個人投資家でETFを売買している方は、株式投資のトレーディングツールの1つとして柔軟に使っている印象がありますし、我々もそこを意識して商品を出しています。

長期の資産形成手段としても有効でありながら、 “日中いつでも売買できる”という部分はETFの特筆すべき優位性で、投資家の方もそこに魅力を感じていると思うので、その優位性を生かした商品は特に支持されやすいと感じています。例えば、日本の株式市場が開いている時間帯に値動きする日本株やアジア株など。我々も、重点的に力を入れている部分ですね」

分散投資ができるETFは初心者にもわかりやすい商品


――ここ数年で、国内のETFの残高が上がり、注目度を高めている印象がありますが、棟田さんはどのように感じていますか?

「10年前と比べて、知名度はものすごく上がったと思います。当社がETFを始めた頃は、日経新聞でもETFに関する記事が週1回掲載されるかされないかというレベルでしたが、今は掲載されない日はないですから。

ただ、今後も継続的に残高が増えていくかというと、相場の影響にもよるかと思います。アベノミクスによって株式投資をする人が増えたことで、ETF人口も増えましたが、株式市場が低迷したら減るのではないでしょうか。アメリカのようにずっと右肩上がりなら、ETFを活用する人はますます増えていくでしょうね」

――指数を追うETFは、景気の影響をダイレクトに受けますからね。

「そうなんですよね。だからといって、ただ成り行きを見ているだけではダメなので、今後は初心に返って、新しい商品を出していきたいと思っています。日本の市場で個人が買うことを前提とすると、やはり日本に関連したアセットクラスになるかなと考えています」

――個人投資家目線で生み出される新商品、楽しみですね。最後になりますが、棟田さんの考えるETFの魅力を教えてください。

「ETFは最初から分散されていて、個別の銘柄を選ぶ必要のない商品なので、初めて投資をする方にもわかりやすいところが魅力だと思います。個別株を探して日々モニターするのは大変ですが、ETFなら指数は毎日ニュースでチェックできますし、なんとなく動向が見えますからね。

まずはETFを入り口にしてもらって、投資にハマったら個別株にチャレンジしてもいいですし、ハマるほどでなければETFだけ投資したり、投資信託を試したりするのもいいと思います」

個人投資家に向けて、ETFを発信しているシンプレクス・アセット・マネジメント。今後も、いち投資家目線で開発された商品で、僕らの投資心をくすぐってくれることだろう。
(有竹亮介/verb)

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