素人でもできるプロ的銘柄探し

プロ的銘柄探し⑤

経営資源「ヒト」に着目した新しいテーマ投資「健康経営企業」

提供元:One Tap BUY

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Coworking center. Business people working and talking in office

著者:三好 美佐子(One Tap BUY)

前回の記事でご紹介した、経営資源としての「ヒト・モノ・カネ」。カネもモノもヒトが使うものだとすれば、もっとも重要な経営資源「ヒト」に着目したテーマで投資を考えます。

業績が好調な時はもとより、不調な時も自らを変化させることで壁を乗り越え、環境を追い風に変えることができる企業が理想、その理想に近づくためには、明るく健康な社員が高いモチベーションで働くことが必要―

そんな理想像は分かっていても、全社員の健康をサポートする福利厚生にはそれなりのコストがかかります。また、「社員の身体のことはそれぞれが自分で気を付ければいい」そんな発想に立っていると、制度としてあることが必須でないようにも思えます。

しかし、健康に関心があるヒトは自ら気を付けたり、放っておいても対応するので最初から問題はないのですが、「健康に特段に興味はない」「興味があっても忙しくて対処できない」… そういった人達の健康はどうなりますか?往々にして、働き盛り世代が多くこれに当てはまるので、企業としては、知らないうちに労働力の低下に結びついているかもしれません。

PRESIDENT Online(2017年11月21日付)でDeNAの平井さんが「7割の人が腰痛や肩こりなどで生産性が低下していた」とし、「社員の持つ本来の力を発揮できる組織に…」と述べていらっしゃいます。

組織として力を発揮するためには全員が健康でなければならならず、そこにこそ「制度として構築する意味」があると思われます。

それでは、コストを割いて社員の健康を維持しようとしている企業は、想定通り業績に反映しているのでしょうか。

2016年8月に行われた「ニッセイ景況アンケート調査(大企業(従業員1000名超)のデータ)」によれば、

◎健康増進に対する考え方として関心が上昇した企業=健康経営企業とすると、
・売上実績が増収した割合として、「健康経営企業」61%、それ以外51%
・経常損益が増加した割合として、「健康経営企業」57%、それ以外49%

◎健康増進に関して実施している取組みが3個以上=健康経営企業とすると、
・売上実績が増収した割合として、「健康経営企業」59%、それ以外55%
・経常損益が増加した割合として、「健康経営企業」59%、それ以外45%

このように、「健康経営企業」の業績の方が優位な結果となったとしています。
詳しくは、こちら

次に、投資家にとって肝心な株価パフォーマンスはどうでしょうか。

経済産業省が2015年4月に発表した資料(「健康経営銘柄」について)によると、「健康経営」に優れる企業(経産省評価上位20%)の平均株価はTOPIX(東証株価指数=東証の全銘柄平均)を上回り、特に「健康経営銘柄」として選定された企業はさらにそれを上回っているとのことです。

詳しくは、こちらのレポートをご覧ください。

さて、「健康経営企業」は業績的にも株価的にも優位性がありそうだ・・・と分かったところで、肝心な銘柄探しです。

こういった調査は、企業内部のことですので、さすがに個人投資家では調べられません。そこで、公的機関が出しているレポートを探してみる方法があります。

経済産業省と東京証券取引所が共同で行っている企画で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定しています。

経済産業省が実施した「健康経営度調査」の回答結果をもとに、(1)経営理念・方針、(2)組織・体制、(3)制度・施策実行、(4)評価・改善、(5)法令遵守・リスクマネジメントの5項目でスコアリングして企業を選出しているものです。2018年は26社が挙がっています。調査対象も広く、公平性も保たれているので、投資の参考としてこういったものを活用していくのがよいかと思います。

最新版をのぞいてみましょう。誰でも知っているような優良大企業が並んでいます。

調査対象も広く、客観性もあるので、投資の参考としてお勧めできます。過去3年間のROE(自己資本利益率)がマイナスの企業は排除し、高い企業は加点するなど業績の定量的な要素も判断基準に入っています。まさに、「定性分析」「定量分析」を併用したボトムアップ方式での銘柄選定結果です。

3年連続で選ばれている企業をピックアップして、個別に株価を検証してみましょう。

●花王
トイレタリーで国内首位として、One Tap BUYでも取り扱っている企業です。

経営理念のなかに「社員の健康は… 会社にとっても財産であり発展の源泉である」ことを明記したうえで、専門部署を作り、専門家と連携して活動しています。健康ポイントなどのプログラムやウォーキングイベントなどを開催したり、健康状態の改善している部署を表象したり…

楽しいイベントで盛り上がる社員さんたちが想像でき、また、会社が社員の健康を考えていることがよく伝わってきます。会社が社員を想い、だからこそ、そんな会社に愛社精神を持ちやすいでしょうし、頑張ろうという気にもなりそうですね。

さて、株価です。

今から約5年前の2013年1月4日を100として、花王の株価とTOPIXを比較してみました。上がる時はしっかり上がる、かなり好パフォーマンスでした。

※ご注意: 過去の実績から作成したものであり、将来の成果を予測・保証するものではありません。
※データ:bloombergからのデータをもとに作成。

●TOTO
衛生陶器シェアトップクラス、おトイレの定番TOTOです。

企業理念に「いきいきとした職場」の実現を謳い、就業規則にも保健指導に従った健康増進などの自己保健義務を明記しています。また、昼休みに運動ができる環境を整えたり、睡眠DVDを配布したりと、実質的、実践的な施策を行っています。経営トップと健康に関する議論もしばしば行われるようです。

花王同様に、今から約5年前の2013年1月4日を100として、TOTO株価とTOPIXを比較してみました。こちらもかなり好パフォーマンスです。

2017年10月30日に、2018年3月期の会社計画を上方修正することを発表、新中期計画を発表すると、株価が大きく上昇しています。発表の内容は、2022年度に営業利益目標を800億円とし、特に海外部門やセラミックなどの新領域事業に60~70%の伸びを見込みます。

株価に少しハネすぎ感はありますが、市場がそこまで反応するほどのインパクトのある経営計画を立てられること、視点をワイドに新しい事業に大きな伸びを見込むのも、社員の健康あってこそといったところでしょうか。

※ご注意: 過去の実績から作成したものであり、将来の成果を予測・保証するものではありません。
※データ:bloombergからのデータをもとに作成。

(次回に続く)

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