少しでも税金を安くするには?

今から知っておくべき「相続税対策」のイロイロ

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もっとも簡単でノーリスク。今すぐできる節税対策とは?

大切な両親や配偶者が亡くなったとき、私たちに降りかかってくる「相続税」。これまでの記事では、相続税の基本的な仕組みや、相続税の対象となる財産について解説してきた。

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さて、こうなると知りたいのが「相続税の節税方法」。そこで、相続税を専門とする税理士・岡野雄志氏の話をもとに、相続税の節税対策を紹介していこう。

相続税を減らすには、生前になるべく故人の財産を少なくすることが重要。その意味で、もっとも簡単に、しかもノーリスクでできる方法が「生前贈与」だ。

「早い段階から、金融財産を子や孫に贈与していきましょう。贈与税は年間110万円まで非課税ですので、その範囲内で渡していけば手軽でデメリットもありません」(岡野氏)

なお、相続開始前3年以内に行われた法定相続人への贈与は“無かったこと”とみなされるため、その分が相続税の課税対象となってしまう。つまり、亡くなる3年以上前の贈与でなければ、節税効果はない。「ただ、仮に課税対象となっても財産以上の相続税になるわけではありません。損にはならないので、気づいたうちから積極的に生前贈与を始めるべきです」と岡野氏。

さらに、孫は法定相続人にならないので、亡くなる前3年以内の贈与でも相続税の課税対象にはならない。110万円以内で積極的に行うと良い。

「生命保険に入るのも有効です。月々の保険料を支払うことで財産を減らせますし、受取人を相続人にすれば死亡時に財産を相続することとほぼ変わりません」

前回の記事で紹介したように、ある人が亡くなり、その生命保険金を相続人が受け取る場合、保険金は亡くなった人の相続財産に含まれる。ただ、生命保険金と死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税なので、現金のまま相続するより節税効果が見込まれるのだ。

そのほか、前々回の記事で紹介した「小規模宅地等の特例」の条件に当てはまるように準備するといった方法もある。

ところで節税対策といえば、よく挙がるのが「不動産の購入」だ。これについて岡野氏に聞くと「場合によっては有効だが、注意が必要」とのこと。

「現金などの金融財産に比べて、不動産は相続税上の評価額が低くなるため、確かに節税効果はあります。特に賃貸経営は昔から相続税対策として利用されてきました。ただ、人口や世帯数が減少している今、空室リスクや借り手が見つからないケースを考えるとメリットは決して大きくありません。デメリットもあることを踏まえて判断すべきです」

そのほかの節税対策として、「墓地や墓石、仏壇や仏具には相続税がかかりません」と岡野氏。家にない場合は、こういったものを生前に購入しておくと節税効果になるようだ。

財産の分け方にもコツがある。「二次相続」に注意を

相続税の対策として「節税」がピックアップされやすいが、相続税を納めるための「資金確保」や、相続人同士でどのように「財産を分けるか」という点でも工夫が必要になるようだ。

「まず相続税を納めるための『資金確保』では、先ほどの生命保険の加入が有効です。故人の銀行口座は凍結されてしまい、解除には手続きが必要となります。対して生命保険金は、亡くなってから一番速やかに動かせるお金と言えるでしょう。相続人が容易に受け取れるので納税資金の確保につながります」(岡野氏)

一方、注意しなければならないのは「財産をどう分けるか」だ。相続税は「配偶者の税額の軽減」という控除制度があり、故人の配偶者の相続税は「1億6000万円」または「法定相続分(配偶者は1/2)」のどちらか高い方まで税金が控除される。

つまり、配偶者にたくさんの財産を相続させれば、かなりの節税が期待できる。だが、ここで注意が必要だ。

「確かに配偶者が多くの財産を相続すれば、そのときの相続税は大幅に減額できます。しかし、問題はその後。多額の財産を受け継いだ配偶者が亡くなったとき、それを相続する子どもたちの相続税は膨れ上がります。その時の相続だけでなく『二次相続』まで考えることが重要です」(岡野氏)

たとえば夫が亡くなり、妻と2人の子が相続人になった場合。妻に財産のほとんどを相続させれば、その時は相続税の相当分が税金から控除される。しかし、問題はその妻が亡くなったときだ。

夫から受け継いだ多額の財産に加え、妻自身の財産も子2人が相続することとなる。もちろん、ここでは配偶者控除の恩恵はないので、結果的に子が多額の相続税を支払わなければならない。だからこそ、配偶者控除があるとしても、常にバランスよく相続することが重要だ。

「目安としては、配偶者の相続は全体の5割までに抑えるべきでしょう。また、相続する財産についても、配偶者には現金などの金融資産を中心にし、生活費として使ってもらうようにします。一方、賃貸アパートなどの資産を増やす可能性のあるものは子どもが相続すると良いです」

これらの話からも、相続の仕方ひとつで税額が大きく増減することが分かる。改めて、相続税の知識をきちんとつけなければ“痛い目”に遭いそうだ。

実際、相続税にまつわるトラブルの事例もよく聞かれる。次回以降は、そういったトラブルのケースを紹介しながら、相続のための知識を身につけていこう。

(取材・文/有井太郎)

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