自宅や家族を守るための保険は「火災保険」だけじゃない!
意外と見落としがちな「火災保険」にまつわるアレコレ
適切に契約していないと、いざという時に役に立たないこともある「火災保険」。定期的に補償内容を見直したいところだが、ほかにも注意すべきポイントはあるのだろうか。
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損害保険に詳しいファイナンシャルプランナーの清水香さんに、「火災保険」に関する注意点を聞いた。
保険の「更新」は絶対忘れずに!
「何よりも大切なことは、更新手続きを忘れないこと。住宅を購入する際にあわてて加入したまま放置していて、更新を忘れた後に被災したら、目も当てられません」(清水さん・以下同)
「火災保険」の契約年数を覚えていない人は、改めて確認しておいた方がいいだろう。ちなみに、「火災保険」の契約期間は最長で10年。
「かつてはローンに合わせて36年契約などもできたのですが、近年は地球規模の気候変動の影響があり、災害のリスクも高まっているため、最長10年になってしまったのです。ローンが残っているから保険も加入しているはず、と考えてしまうのは早計です」
被災時に保険会社の連絡先や補償内容を確認できるよう、保険証券のコピーを非常持ち出し袋に入れておくと安心だという。ほんの少し手間をかけておくだけで、実際に保険金が必要になった時に、多少は不安を軽減できるだろう。
分譲マンションは「共用部分」の保険加入状況もチェック
「分譲マンションに住んでいる方は、自室と家財の分の保険に加入していれば安心というわけではありません。エントランスやエレベーターなどの共用部分も適切に保険に加入しているか、管理組合に確認しましょう」
マンションに住んでいると、共用部分は管理会社などを通じて自動的に保険に入っていると思いがちだが、安心はできないという。
「分譲マンションの共用部分は、通常『火災保険』には加入していますが、風水災に対する備えは確認が必要。また、『火災保険』に加入していても『地震保険』の加入率は4割程度と、少ないのが現状です。地震被害が生じたとき、共用部分が『地震保険』に入っていなければ、修繕費が不足し、住民の持ち出しになることも考えられます。しかし、家計状況の異なる個々の住民が、修繕や負担の合意に至ることはとても難しい。だからこそ、共用部分の『地震保険』は、修繕費の財源を確保し、住民の合意形成を促す上で、分譲マンションに欠かせないツールなのです」
災害時に必要になるかもしれない「個人賠償責任保険」
もう1つ、「火災保険」とは別に必要な損害保険があるという。
「『火災保険』とともに、どのような人にも必要な保険が『個人賠償責任保険』。日常生活の中で他人に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った際に役立つ保険です。年間数千円で『火災保険』や『自動車保険』につけられるので、入っておきましょう」
「日常生活で他人に損害を与え、損害賠償責任を負う」とは、具体的にどのようなケースが考えられるのだろうか。
「例えば、自転車で事故を起こし、他人を死傷させてしまったり、マンションでお風呂の水を出しっぱなしにして、階下の部屋を水浸しにしてしまったり、過失によって他人や他人のものに損害を与えた場合が挙げられます。台風で自宅の屋根が飛び、隣家を突き破ってしまった場合も、所有者の住宅管理に過失があれば、被害者に対する損害賠償責任が発生することがあります」
かつて、男子小学生が自転車で走行中に、歩行中だった60代女性に正面衝突してしまった事故がある。女性は頭がい骨骨折などの傷害を負い、意識が戻らない状態となり、地方裁判所は男子小学生の母親に9521万円もの損害賠償金の支払いを命じた。この場合も、無制限の「個人賠償責任保険」をかけていれば、損害賠償金をカバーできたことになる。
「『個人賠償責任保険』は、一世帯で1つ加入していれば、家族全員が補償の対象となります。年間数千円で、何千万円という賠償金をカバーでき、風災時のトラブルでも使える可能性があるので、加入しておきましょう」
「火災保険」に「個人賠償責任保険」。いざという時のためのリスクマネジメントとして、きちんと加入しておくことが、家族を守ることにもつながりそうだ。
(有竹亮介/verb)
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清水香
ファイナンシャルプランナー、社会福祉士、自由が丘産能短期大学講師。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわら、ファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPに転身。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。財務省の地震保険制度に関する政府委員を歴任。日本災害復興学会会員。