東証ETFのキーパーソンに聞く

世界最大級の資産運用会社・ブラックロックが見据える“ETFの未来”・前編

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ETFシェア世界No.1の「iシェアーズETF」シリーズを展開するブラックロック。全世界で900本以上、日本でも100本以上のETFを提供し、そのうちの22本は東京証券取引所に上場されており、国内でも存在感を確かなものにしている。

現在、日本におけるETFの展開を統括しているのが、ブラックロック・ジャパンETF事業部門 ETF事業部長の越前谷道平さん。長らく証券会社に勤め、さまざまな運用商品に触れてきた越前谷さんに、これまでの歩みとETFの魅力を聞いた。

「iシェアーズ ETF」は企業の成長を支えるエンジン

――世界No.1シェアとなっている「iシェアーズETF」シリーズですが、ブラックロックでETFを扱い始めたのはいつからなのでしょう?

「ブラックロックとETFの関わりは、リーマンショックの後。2009年の、バークレイズ・グローバル・インベスターズとの経営統合によって、『iシェアーズETF』ビジネスを獲得したことが始まりです。それ以来、ETFはブラックロックの成長を支えるエンジンの1つとなっています」

――もっと古くから、ETFを運用しているのかと思っていました。

「ここ10年くらいですからね。ブラックロックが創業した1988年頃が、まさにETF黎明期の起点となる時期だったといえるでしょう。1990年にカナダで上場された『TIPS35(Toronto 35 Index Participation Units 35)』が、初めてのETFといわれていますから」

――ETF黎明期に創業し、その後、グローバルな資産運用会社として成長してきたブラックロックがETFを運用し始めるのは、自然な流れだったのかもしれませんね。ところで、越前谷さんがETFに携わるようになったのはいつ頃からですか?

「私はもともと米系証券会社に勤務し、米国株式のセールスを担当していて、2004年頃からETFも取り扱っていました。その頃から日本の金融機関がETF活用を拡大していく様子を、目の当たりにしましたね。

ブラックロックに入社したのは2018年です。リーマンショック後の金融危機の最中、ブラックロックCEOのラリー・フィンクが金融メルトダウンを防ごうと世界を鼓舞する姿を見て、飾らない率直な人柄に感銘を受けたんです。私もいつか、彼の経営する会社で働きたいなと。その願いが叶って入社してからは、ETF事業部に所属し、『iシェアーズETF』シリーズの販売、取引に関するインフラの構築、新商品の開発など、ETFに関わる部分を統括しています」

“分散投資”を行うには絶好の投資ビークル

――ブラックロックが誇る「iシェアーズETF」シリーズの魅力は、どのような部分でしょう?

「グローバルでの銘柄展開は900本を超えるラインナップ(日本で個人投資家が取引可能な銘柄数は118本、うち東証上場銘柄数は22本)となっており、幅広い分野に投資できるプロダクトだと考えています。シリーズのなかには、米国社債や米国リートなど、なかなかアクセスしにくい原資産を内包する銘柄も数多く展開しているので、個人投資家であっても運用のプロ同様に、流動性や透明性をもってグローバルな分散投資が行えます」

――米国社債を含め、海外の株式や債券の値動きに連動するETFが豊富な「iシェアーズETF」ですが、日本人投資家が海外に投資するメリットはどこにあるでしょうか?

「分散投資のメリットにつながる部分だと思います。“失われた20年”という言葉があるように、日本は1990年代初頭のバブル崩壊以降、20年以上経済の停滞が続きましたが、その間、世界の資本市場は活況を呈してきました。世界規模の経済拡大の恩恵を受けるためには、日本国内だけでなく、世界の株式や債券など、グローバルな投資を視野に入れることが必要でしょう。

その点、例えば『iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ティッカーシンボル:ACWI)』は47カ国以上の国の指数が組み込まれているので、たった1つの銘柄で分散投資が実現でき、世界経済の恩恵を受けることができます。同様に、2000を超える数の社債で構成されたETFなども展開しています。『iシェアーズETF』シリーズは、分散投資を希望する投資家にとって、絶好の投資ビークルといえるのではないでしょうか」

2020年に高まった「債券ETF」のニーズ

――多様なラインナップが揃う「iシェアーズETF」シリーズですが、越前谷さんにとって思い入れの強い銘柄を選んでいただくとしたら?

「東証に上場している債券ETFですね。直近の2020年の経験になるのですが、東証上場の債券ETFを国内最多の9本まで拡大し、債券ETFで構成可能な主要なラインナップをほぼ取り揃えました。これまで国内に顕在化していなかった市場を開拓していく作業でしたので、未知の部分が多いことを覚悟して取り組みましたね。実際ハードな仕事でしたが、投資家の皆さんに手頃な手数料水準で高い流動性・透明性を提供できるツールを作り上げたいという一心で臨んだので、思い入れが強いのです」

――9つの銘柄が揃ったのは2020年10月でしたが、投資家からの反響はいかがでしょう?

「好意的なご意見をお寄せいただいています。債券ETFの残高は2019年12月末時点での494億円から、9本に増えた2020年12月末時点には845億円と、1.7倍以上に増加しました。こうした数字からも手ごたえを感じています。現在は、機関投資家や公共法人の積極的な活用が増えている印象ですが、個人投資家の皆さんの活用も徐々に増えてきていると思います。

ピンポイントの話ではありますが、『iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(1482)』は機関投資家が頻繁に取引してくれていることで、流動性の高さというETFの魅力が、債券ETFでも発揮され始めています。将来の日本のETF市場に、良い意味で影響を与える可能性があると感じているところです」

――日本の市場において、債券ETFの存在感が大きくなっていくということですか?

「そう考えています。新型コロナウイルスの影響で経済に打撃を受けた2020年は、債券ETFの大きなターニングポイント(転換点)になったと捉えています。これまで債券そのものは安定性はあるものの、流動性や透明性が低いという課題がありました。一方、債券ETFは売買の即時性や価格の透明性が提供されるため、経済が不安定だった2020年、世界的に活用が広がっていったのです。

その流れを受けて、私たちも債券ETFの上場を進めたという経緯があります。債券市場のマーケットの一端をETFが担い始めていると認識していますし、2021年は、日本において、債券ETFの活用が拡大する起点の年にしていきたいと、ETF事業部全体で気合が入っています」

幅広い銘柄を揃えながら、現在のニーズに即した新しい銘柄も惜しまずに展開する「iシェアーズ ETF」。その中核を担う越前谷さんに、後編では日本のETF市場の今後について伺う。

(有竹亮介/verb)

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