東証ETFのキーパーソンに聞く

世界最大級の資産運用会社・ブラックロックが見据える“ETFの未来”・後編

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ブラックロックが展開しているETFシェア世界No.1の「iシェアーズETF」シリーズ。その事業を統括しているのが、ETF事業部門 ETF事業部長の越前谷道平さん。

前編では、「iシェアーズETF」の魅力と現在進行中の展開を聞いた。後編は、ブラックロック入社前からETFに携わってきた越前谷さんに、これからの日本におけるETFの役割について、抱いている構想や期待を伺う。

「ETF=ポートフォリオを構築するツール」という時代

――越前谷さんは2004年頃からETFにかかわりがあったとのことですが、当時のイメージはいかがでした?

「15年ほど前のETFは、流動性の高いインデックスのなかでも、コアなインデックスにアクセスできるツールという認識でした。当時、ETFが連動する指数はS&P500、ナスダック、NYダウが中心で、世界のETF残高の8割程度をこれらの銘柄が占めていましたから。日本の投資家も、NY上場の米国籍ETFを活用していましたね」

――当時と比べると、現在はETFが連動する指数も銘柄数も格段に増えましたが、その変化はどう捉えていますか?

「かつてはETF単品に投資するケースが一般的でしたが、東証上場ETFをはじめ、アジアを拠点とするETFがじわじわと育ち、認知度が広まったことで、ポートフォリオを構築するビルディングブロックの1つとしてごく当たり前に活用する時代が来ていますよね。15年前とは、まったく形を変えて進化していることを実感します。そして、まだまだETF市場が大きくなる余地はあると思うのです。東証上場ETFを育てていくことが、我々の使命だとも感じています」

ETFトレンドキーワードは「債券」と「ESG」

――前編で、「世界経済における債券ETFのニーズの高まりを受けて、東証上場の債券ETFを充実化させた」と伺いましたが、まさに直近のETFの変化といえるところですよね。

「そうですね。2020年3月、株価の下落やクレジットスプレッドの拡大で市場が凍結してしまったなかでも、債券ETFは売買の即時性や価格の透明性が提供できたのです。それ以来、世界的に債券ETF活用の波が起こっています。ETF市場における大きなトレンドといえるでしょう。

また、市場を完璧に読むことは誰にもできないからこそ、安定性の面から全天候型プロダクトといえる債券ETFは、ポートフォリオのビルディングブロックとして重要になると考えています」

――不安定な状況が続く今、安定感がありながら流動性・透明性が保たれている債券ETFは強い味方になりそうですね。

「日本でもそうなっていくと思います。もう1つ、ESG投資(環境・社会・ガバナンスに対して積極的な取り組みを行う企業への投資)の流れも明確に見えます。インデックス運用にESGの要素を盛り込むことが、技術的に可能になってきたからです。透明性の高いインデックス投資を通じてESG投資も行うことができるという手法も、世界的にニーズが高まっているといえます」

ETFも「人が人を呼ぶプラットフォーム」の1つ

――ETFの変化やトレンドの話を伺ってきましたが、そもそも日本の個人投資家のETF活用はどのようなフェーズにあると考えていますか?

「現在の日本のETF残高は50兆円以上で、そのうちの8割以上が中央銀行、残り2割のうちの90%が機関投資家といわれています。つまり、個人投資家のETF残高は1兆円前後で推移しているので、まだまだポテンシャルは高い状態です。

これまでは分散投資を行うツールとして投資信託が取り上げられることがほとんどでしたが、近年アメリカではより透明性の高いETFが存在感を増してしてきている事実があります。日本でも簡単に同じようなことが起こるとは思いませんが、インデックス投資のうねりが始まっていて、金融商品のポートフォリオや価格の透明性を求める声も高まっているので、その地盤に支えられてETFが伸びていく可能性はあると考えています」

――ブラックロックでは日経225やS&P500など、代表的な指数に連動するETFと同時に、ロボティクス関連産業に投資する「iシェアーズ オートメーション&ロボット ETF」などのテーマ型も揃えていますが、これは投資信託からのリプレイスを意識したものですか?

「『iシェアーズ ETF』は、ポートフォリオのコアとして使っていただける銘柄を展開するという基本スタンスがあります。そこに加えて、ロボティクス関連産業など、世界のトレンドを捉える指数をETFとして上場させ、ポートフォリオのサテライト機能として活用できる銘柄も展開しようという側面もあります。

リプレイスを積極的に狙っているわけではありませんが、少なくとも私たちはポートフォリオのコアとしてもサテライトとしても選択できる銘柄を展開していきたいという思いで、事業を進めています」

――銘柄数の多さや多様性は、より多くの投資家に寄り添うことにもつながりますよね。最後になりますが、これからの日本でのETF市場が、どのように展開していくことを期待していますか?

「透明性の高い分散ポートフォリオ、インデックス活用のニーズは世界的に根強く、決して逆戻りすることのないトレンドです。日本でも更なるETF市場拡大のタイミングはいずれ訪れるでしょう。トレンドを捉える際には“If/When/How”で考えていくといわれますが、ETF活用に関しては“If=するかしないか”の時期はとうに越えていて、“When=いつ”“How=どのように”実現するかを考える時期に来ていると思います。

私たちは資産運用会社として、個人投資家の間でもグローバルな分散投資やインデックス活用が広がっていることを受けて、ETFの成長を加速度的に実現させ、日本のETF市場にも貢献していきたいという思いを強くしています。

別の産業の例ですが、AmazonやiPhone、Uber、Googleといった革新的なプラットフォームは、参加者が増えるにつれて利便性が向上し、ますます人が集まるという好循環が働き、成長してきました。私たちはETFも同様のプラットフォームと捉えていて、活用する投資家が増えれば増えるほど、ETFのもたらす価値は向上していくと思っています。日本でも拡大しない理由はないと考えているので、投資家の皆さんと一緒に盛り上げていきたいですね」

投資家のニーズや世界的なトレンドを受け止めながら、流動性・透明性の高いETFを展開しているブラックロック。今後も投資における力強いツールを提供し、日本のETF市場を活性化させてくれることだろう。

(有竹亮介/verb)

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