世界共通語「ESG/SDGs」

インベスコの徹底解説:ESG投資

(1)ESG投資とは

提供元:インベスコ・アセットマネジメント

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「ESG」や「ESG投資」という言葉を耳にする機会が増えていると思います。また、類似した言葉として「責任投資」や「社会的責任投資(またはその英語略称であるSRI)」もありますが、基本的には同じ意味です。ESGとは、

Environment(環境)
Social(社会)
Governance(ガバナンス)

の頭文字になります。「投資の意思決定において、金融的要素に加え、環境や社会やガバナンス(企業統治)要素を考慮すること」がESG投資の定義になります。ちなみに、「ESG」という言葉は、2005年に当時の国連のアナン事務総長が提唱しました。

1 日本サステナブル投資フォーラム

近年、機関投資家はますますESG投資を取り入れていますが、今後さらに大きな流れになり、将来的には資産運用におけるメインストリーム(主流)になると言われています。ESGの考え方は決して新しいものではなく、ESGという言葉が登場する前から、宗教的・倫理的価値観を重視した投資が一定規模で行われていました。また、かつての南アフリカにおけるアパルトヘイト制度に投資家が反対運動を起こし、その結果として企業が南アから撤退するということもありました。これらは広い意味で現在のESG投資につながるものだと言われています。

これらのかつての倫理的投資と比べると、現在広がっているESG投資は、ESG要素が「企業価値」に影響を与えることを考慮するという「投資手法」としての意味合いが格段に高まっています。

ESG投資台頭のきっかけ

既述したようにESG投資という言葉が登場したのは2005年ですが、それが広く機関投資家の関心を集めたのは2008年の国際金融危機(いわゆるリーマン・ショック)でした。金融危機の原因に関する調査が行われ、そこで指摘されたのが「短期主義(ショート・ターミズム)」の問題でした。短期主義とは、企業経営者や投資家が短い時間軸での利益を重視していたことを指します。

例えば、経営者が次の四半期決算の利益を重視するあまり、将来的に重要な事業に投資をしないようなことも指摘されていました。あるいは、資産運用業界におけるファンドマネージャーの報酬は単年でのパフォーマンスで決まっていたなど、長期的な成果を生み出しにくい状態にあったことが指摘されました。短期主義に染まっていたため、次の四半期利益を最大化するために大幅な借入れを行うなどして利益の極大化に走ったことが、世界的金融危機の一因となったと整理されたのです。

より身近な短期主義を紹介しましょう。例えば、ブラック企業という言葉は現在では定着した感もありますが、ブラック企業も一つの短期主義で、人材を使い捨てすると目先は人件費を抑えられて、人材育成などにかける負担もないので、収益性の高い経営をすることができそうです。しかし、いったん「あの会社はブラックだ」という評判が立てば、従業員を集めることさえままならず、たちまち経営が行き詰まります。このように目先の利益を追うことは必ずしも長期的に良い経営につながるわけではありません。

本来、資産運用の中心は長期であることは論を待ちません。年金基金などの機関投資家は言うに及ばず、個人投資家も定年後の資金のために資産運用するなどという長期的な目的を持ちます。長期投資にとって、短期主義は相反するものです。長期投資家は、数年間だけ業績が良い企業を求めているのではなく、長期的に価値が増加し続ける企業を求めているのです。このような背景から、世界中で長期投資の重要性が再認識され、そのために短期主義の反対と言えるESG投資の重要性が認識されました。なぜなら、企業の長期的パフォーマンスのためには環境や社会への影響を考慮することが重要になるからです。

日本では、世界最大級の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年にESG指数を使用して本格的なESG投資を開始しています。

環境・社会問題の大きさとSNS

短期主義への反省に加え、さらにESG投資を推進する力となっているのが気候変動に代表される環境問題です。これもESG投資が提唱される2005年以前から認識されていましたが、最近では世界的にも非常に大きな問題として認識されるようになっています。自由な経済活動によって様々な環境問題や社会問題が発生して大きくなっており、このままでは社会全体の持続性が失われるという危機感が広がっているのです。

この動きを加速しているのがソーシャル・メディア(SNS)の発達です。かつては、企業が不祥事を起こしても一部の地域でしか取り上げられなかったものが、現在ではSNSであっという間に世界中に拡散します。このような状況では企業は物事を隠すことはできず、悪い事態を放置するとたちまち消費者から非難を受け、評判を落とし、ブランド価値を損なうことになります。このように、企業は儲かれば良いという時代は過ぎ去りました。

私たちの身の周りで「フェア・トレード」や「エシカル消費」という言葉や商品が増えているのも、こうした動きに消費者が敏感になっているからであり、消費者の動きに敏感な企業もそれを認識せざるを得なくなっているわけです。つまり、消費者や企業社会が環境問題や社会問題に高い関心を持ち、それを意識しているわけですから、投資の世界だけが「ESGを考慮しない」ということはもはやあり得ないわけです。今後、ESG投資が主流になっていくと言われる最も大きな背景には、既に私たちの社会がそのようなものに変わってきていることがあるのです。

株主至上主義からマルチステークホルダー主義へ

実は、長年「株主至上主義」をうたってきた米国企業でも、それは変わり始めています。

日本の経団連に類する組織である米国ビジネスラウンドテーブルという団体が、2019年8月の声明において、米国企業の目的は、「顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、株主」にコミットすることであると打ち出しました。なぜこれが画期的だったかと言うと、実はこの団体こそが1997年以降、米国企業の目的は株主利益を最大化すること、つまり「株主至上主義」をうたっていたからです。

米国では格差問題が深刻になっており、この格差を放っておくと資本市場や民主主義への信頼を損ない、極端で排他的な意見が広がり、最終的には企業経営にも甚大な影響を及ぼすことへの懸念から、米国でも株主だけが儲かることへの批判が強まりました。そのため、米国でも株主以外のステークホルダー(利害関係者)を重視した経営に移り始めています。

(提供元:インベスコ・アセットマネジメント)

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