資産形成は20代から?20代から投資を始める3つのメリットも紹介
資産形成を20代から始めると、いくつかのメリットを享受できます。ただし、資産形成で運用を開始する際には、まず商品や制度などについても理解を深めておくことが大切です。
本記事では、運用を検討している20代の方向けに各資産の特徴やオススメの制度を紹介します。
資産形成は将来に向けた資産を作ること
資産形成とは、将来のために所得の一部を積み立てていき、ゼロから資産を作り上げることです。資産形成には、何かあったときに備えて蓄える「貯蓄」と余剰資金でお金を増やすことを目的とした「投資」があります。
なお「資産形成」と混同しやすい用語の「資産運用」は、すでに所持している資産を活用してさらに増やすことです。
まずお金を目的ごとに分類してみる
資産形成を始める前に、まず自分が毎月何にどれくらい支出しているのかチェックした上で、お金を目的ごとに分類してみてください。分類のやりかたは、シンプルに「使うお金」「貯めるお金」「増やすお金」の3種類に分けるだけで構いません。
使うお金は、家賃や食費などの生活に欠かすことのできない支出のことで、貯めるお金は旅行や結婚資金など、すでに目的が決まっているものです。使うお金は普通預金、貯めるお金は定期預金が適しているでしょう。
残りの普段浪費してしまう可能性のあるお金は、増やすお金として投資に回すことが可能です。増やすお金は使い道が決まっていない資金なので、株式や投資信託など中長期での投資に向いています。
資産形成に関する投資手法を理解しておく
資産形成の投資では、購入時より売却時の価格が値上がりしたり値下がりしたりする価格変動リスクが避けられません。しかし、長期投資・積立投資・分散投資などの手法を活用することでリスクを軽減できます。
長期投資とは、価格の上下に一喜一憂して短期売買を繰り返すのではなく、購入した商品を長期間保有する手法です。一時的に価格が下がっても長期的には価格が回復し、平均収益率が安定していく傾向があるため、リスク軽減につながります。
積立投資は、毎月1万円など定額を買い増していく方法です。積立投資をすることで、購入単価を平均化できます。
分散投資は、国や資産などを限定せずに幅広く投資する手法です。例えば、A国経済が停滞しても、B国経済が上向くことがあるため、リスク軽減につながります。
20代から投資を始める3つのメリット
日本証券業協会が2021年6~7月に実施した証券投資に対する意識・必要性に関する調査によると、20代のうち78.2%は「有価証券取引に興味はなく、有価証券を保有するつもりもない」と回答しています。
参考:日本証券業協会「証券投資に関する全国調査 (調査結果概要)2021年12月15日」(PDF)
調査からもわかるように、日本では20代でもまだ投資に前向きの人が少ない状況です。しかし、20代から投資を始めると3つのメリットがあります。
投資期間が長いため複利効果が期待できる
20代のうちから早めに投資を始めると、その分長い期間の投資が可能です。長期間投資をすることで、複利効果が期待できます。
複利とは、投資や貯蓄の利息(利益)を元本に上乗せして再投資することで、さらに利益を膨らませることです。一方、単利では毎回元本に対してのみ利益が発生します。
年率2%で元本100万円を10年運用した場合を考えると、単利は120万円になるのに対し、複利は約122万円です。
経験を積める
社会人になったばかりの20代は、さまざまなことを学べる時期です。例えば、株式投資を始めると保有している企業や業界の動向のニュースをチェックするようになります。
また、20代はまだリスクを取れる年代です。若いうちに、相場の値動きで利益だけでなく損失を出すことも経験しておくことで、その後の投資判断に役立つでしょう。
気軽に投資しやすい
学生時代は時間があっても収入がアルバイトなどに限られるため、投資できる資金は少ないことが一般的です。また、結婚や出産で家族が増えると、独身時代に比べて自由に使えるお金や投資の勉強にかけられる時間が減ります。
その点、社会人になって給料が入るようになった20代であれば、時間と資金に少し余裕がでてくるので、比較的気軽に投資できる点がメリットです。
資産形成で注意すること
資産形成を始めることでいくつかのメリットを享受できる一方で、多くの商品が元本保証ではない点がデメリットです。また、今まで投資経験がない方が資産形成を始める際には、いくつか注意点があります。
「NISAやiDeCoの制度を把握しておく」「リスクや費用がかかる点を理解する」「投資に集中しすぎない」という3つの注意点を確認しましょう。
NISAやiDeCoの制度を把握しておく
NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)など税金に関する優遇制度を理解し、かしこく資産形成を始めましょう。
少額投資非課税制度としてNISA、つみたてNISAの2種類があります。いずれも、投資で得られる分配金や譲渡益が非課税となる制度です。つまり、金融商品を保有している間は、分配金や譲渡益に対して課税されません。
NISAは新規投資額の上限が120万円で非課税期間は最大5年間なのに対して、つみたてNISAは新規投資額の上限が毎年40万円、非課税期間は最大20年間なので、長期投資にはつみたてNISAが向いているでしょう。また、購入可能な商品が、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られている点が初心者には安心です。
iDeCoは、老後資金の用意を目的とした私的年金制度です。掛金や運用益、給付金の受け取りの際に税制上の優遇がありますが、NISAと異なり、基本的に老後までお金の引き出しが自由にできません。引き出し制限がかかっていることで、誘惑に負けずに資産形成ができます。
リスクや費用がかかる点を理解する
資産形成の投資では、株価変動リスクや為替変動リスクのように価値や価格が大きく変動するリスクが存在します。さらに、売りたいときに売却できない流動性リスクも存在することを理解しておきましょう。
また、株式や投資信託などの商品には、購入時・保有時・売却時に手数料がかかることがあります。購入時の価格と売却時の価格に変動がなくても、元本を割る可能性があることに注意してください。
投資に集中しすぎない
本来「使うお金」「貯めるお金」だった資金を投資に回してしまうと、資産形成本来の目的から外れてしまいます。あくまでも、長期的に資産形成するための投資であることを忘れないようにしましょう。
また、価格の上下に一喜一憂して本業に集中できないという状況を避けるため、分散投資や長期投資を心がけることが大切です。
20代からの資産形成で検討する商品
資産形成には、貯蓄目的の預貯金に加え、投資目的の金融商品である株式・債券・投資信託・金・保険・不動産・REIT(不動産投資信託)など、さまざまな商品が候補に挙げられます。その中でも、20代からの資産形成で検討する代表的な商品が、株式・債券・投資信託の3種類です。
3つの商品の特徴や、メリットとデメリットを解説します。
配当金や株主優待が期待できる「株式」
一般的に、株式投資は上場されている株式を売買することです。株式を購入することで、「株主」の権利も得られます。
株式投資のメリットは、株価が上昇した場合に売却すると利益を得られることや配当金や株主優待が受けられる点です。株主総会に参加することで経営にも参加できます。
なお、初心者の株式投資については以下の記事も参考にしてください。
比較的リスクもリターンも低い「債券」
債券は国や地方公共団体、企業が資金調達するために発行する有価証券です。国が発行する債券を国債、地方公共団体が発行するものを地方債、企業が発行するものを社債と呼びます。
特に国債は元本や利息の支払いを国が約束しているため、株式投資や投資信託に比べてリスクが低い点がメリットです。一方、デメリットとしては、金利が低いことや換金したいときにすぐ換金できない点が挙げられます。
初心者が始めやすい「投資信託」
投資信託は、自分で個別の株式や債券を選ぶのではなく、運用の専門家が投資・運用する商品です。近年は、簡単な質問に答えるだけで、その人に合った投資スタイルやリスク水準を判断して運用方法や商品を提案してくれるロボアドバイザーも登場しています。
投資信託のメリットは分散投資される点や少額から始められる点で、デメリットは購入時手数料以外にも信託報酬などが必要な点です。
リスクを理解して資産形成を20代から開始
20代のうちから資産形成を始めることで、経験を積めることや長期投資できるなど、さまざまなメリットが期待できます。ただし、資産形成の投資にはさまざまなリスクが存在するため、元本割れに注意が必要です。
分散投資や長期投資など、リスクを軽減する手法もいくつか存在します。リスクを理解して、20代のうちにかしこく資産形成を始めてみましょう。
ライター:Editor-HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。